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大宮が親会社レッドブル社から「やめてくれ」というクラブ哲学 クラブハウスではエナジードリンク飲み放題…原社長インタビュー

スポーツ報知 / 2025年2月13日 7時0分

昨年11月6日、レッドブルのミンツラフCEO(中)、マリオ・ゴメスTD(左)とともに会見した大宮・原社長(当時フットボール本部長)

 今季J2に昇格した大宮の原博実社長(66)が、このほどスポーツ報知のインタビュー取材に応じた。大手飲料メーカー・レッドブルが昨年10月に買収して、J初の外国資本となった同クラブ。チーム名やロゴの変更だけではなく、エナジードリンクを世界的に展開するレッドブル社からは「疲れて、もう走れないはやめてくれ」とクラブ哲学も伝えられているという。15日に山形との開幕戦を迎える大宮の改革元年の変化を聞いた。(取材・構成=浅岡 諒祐)

 「レッドブル社が大宮を買収」―。この衝撃のニュースから約半年。かつてJ1で戦っていたクラブがJ3降格を経てV字回復を狙う。Jリーグによると、21年度の大宮の人件費は10億円を超えていたが、翌22年度にはJ2中位ほどの6億円弱に縮小された。原社長はまず、J1昇格にふさわしい予算規模の確保へと動き出した。

 「予算規模はJ3に落ちたりして、ここ何年かずいぶん縮小されていました。そこで、過去5年のJ1昇格クラブの中からベスト5くらいの人件費をデータで出して、J1昇格にはこのくらいのサポートが必要だという話をしました」

 レッドブルグループはライプチヒ(ドイツ)やザルツブルク(オーストリア)など世界各地にクラブ拠点を置く。今オフ、選手は瞬発力(10、20、30、40メートル走)、跳躍力、持久力(5分間走)などを測定。各国リーグで得た選手データはグループ内で共有され、そのこだわりは細部にわたる。それは大宮にも還元され、育成に生かされる。

 「シーズン最初にいろいろと測定をしましたが、同じ器具とやり方で測っていて、同じデータと評価でやることを徹底していますね。測定のやり方もあるので、そのスペシャリストがいる。パソコンも処理能力が速いものを準備しろと伝えられ、(分析を担う)アナリストも1人雇いました。測定は育成年代もやるので、世界基準にこの選手は足りているかどうか、分かりやすくなったんじゃないですか」

 練習で使うエアロバイクなどの道具も、レッドブルグループ全体で使用する物に統一した。今オフには長沢徹監督(56)らと同グループのライプチヒなどを視察し、ドイツ・ミュンヘンにある同社のサッカーグループのオフィスも訪問。現地で見た施設の充実度に目を丸くしたといい、将来的な未来予想図に胸を躍らせた。

 「(レッドブルグループは)若い子、練習場、寮にはしっかり投資すると言っていたのですがケタ違いにすごすぎて。J1のトップでもこんな施設ないよっていうのばっかり。驚いたのは、建設チームのスペシャリストたちがクラブハウスなどを見に来た時に『これをこう変えたらいいな』というのを細かく見ていたんですよ。施設のこだわりや造り方のレベルが違いすぎて言葉にならない。うちの施設もそうなってくれたらいいなと思います」

 同グループは世界的な栄養飲料の販売を主軸とするため、サッカーの哲学にも積極性や活力を求めている。

 「エナジードリンクの会社だから『疲れてもう走れないはやめてくれ』と言われました。『ガンガン動いて、どんどんエネルギーが湧き出るようなサッカーをやって』と。アグレッシブに前から球を奪い、奪ったらすぐゴールを目指すというのがレッドブル全体のビジョンとしてあります」

 初年度から多くの側面で“翼をさずかった”大宮。9季ぶりのJ1復帰へエネルギッシュに羽ばたく。

◆クロップ氏 開幕戦来る 〇…大宮の開幕戦にはドイツ出身の世界的名将ユルゲン・クロップ氏(57)が来場を予定している。過去にドルトムント(ドイツ)やリバプール(イングランド)を率い、リーグや欧州CLなど数々のタイトルを獲得した同氏は今年1月、レッドブル社のグローバルサッカー部門責任者に就任。原社長も「サッカー界では誰もが知っている人。日本のサッカーに対してどう思うのか楽しみ」と心待ちにしている。

 ◆取材後記 “レッドブル流”のこだわりはピッチ外でも光る。原社長によると、昨年までは選手のオフィシャル写真撮影は1日ほどで終わらせていたというが、今年は約1週間かけて実施。機材の準備にお金をかけ、なおかつ選手を魅力的に映すための指導なども行った。「この気合の入れようは選手たちも期待を感じているんじゃないですか」と感嘆する。

 ブランドへのこだわりも深く、給水ボトルなど至るところに同社のマークが入る。クラブハウスにはレッドブルが常備されており、いつでも飲み放題だ。一方で「アルディージャ」という名前、クラブカラーのオレンジの存続など「予想以上に我々のことをリスペクトしてくれている」と伝統への尊重も忘れない。「多分、今までのオープニングではない」と原社長が胸を張る開幕戦が迫る。ここまでのつかみは完璧。あとは結果だけ。プレーも演出でも、あっと驚くような前例のない開幕戦を期待したい。

 ◆原 博実(はら・ひろみ)1958年10月19日、栃木・那須塩原市(旧・黒磯市)生まれ。66歳。矢板東高―早大を経て、81年に三菱重工(現浦和)へ。FWとして国際Aマッチ75試合で歴代4位の37得点。92年の現役引退後は浦和、FC東京を指揮。2004年にFC東京をナビスコ杯優勝に導いた。09年に日本協会に移り、技術委員長、専務理事を歴任。16年からJリーグ副理事長、22年に大宮のフットボール本部長、25年に代表取締役社長に就任した。

 ◆レッドブル社 東アジアの機能性飲料にインスピレーションを受けたオーストリア人のディートリヒ・マテシッツ氏(故人)が1984年に設立。87年にエナジードリンク・レッドブルを発売。現在、世界NO1シェアを誇り、2024年は126億7000万本を販売。グループ売上高は112億2700万ユーロ(約1兆7900億円)。キャッチコピーは「翼をさずける」。

 ◆レッドブル社とスポーツ サッカーでは実質的に4クラブ(ドイツ1部ライプチヒ、米MSLニューヨーク・レッドブルズ、オーストリア1部ザルツブルク、ブラジル1部レッドブル・ブラガンチーノ)を運営。他競技ではF1のレッドブル・レーシングが22、23年に2年連続でコンストラクターズ(チーム)タイトル獲得。スケートボードやスキージャンプ、サーフィンなど個人競技選手のサポートも積極的に行う。

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