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【新証言】沈没事故当日の桂田社長の行動 運航会社で何が起きていたか… 会社関係者が告白

HTB北海道ニュース / 2024年6月3日 12時7分

(c)HTB

世界遺産・知床の雄大な景色を海の上から間近に見ることができる小型観光船。

かつて4社が運航していましたが、今シーズンは、まだ1社しか運航できていません。

他の3社のうち1社は、2024年3月に廃業しました。

20年続いた「ドルフィン」です。

■小型観光船業者ドルフィン元船長・鎌田日出明さん

「突然だったからびっくりしたのと、やっぱりここまで追い込まれたのかなと、事故でお客さん帰ってこなかったから」「お客さんの喜ぶ声を聞くことができなくなっちゃったし、それはちょっと悔しいな」

斜里町ウトロはあの日以来、客足を取り戻せていません。

■HTB依田英将アナウンサー

「観光船KAZUI(カズワン)が海面に引き揚げられようとしています。いま操舵室の部分が海面から顔を出しました」

2022年4月、知床沖で観光船KAZUIが沈没した事故。

乗客乗員26人のうち、20人が死亡。

いまも6人が行方不明のままです。

「KAZUI」の豊田徳幸船長。

船長になって1年のシーズン最初の出航で、沈没事故は起きました。

悪天候で強風・波浪注意報も出ている中、海に出てしまった豊田船長のKAZUI。

鎌田さんは事故の前から豊田船長だけでなく、運航会社・知床遊覧船の桂田精一社長にも安全面のアドバイスをしようとしていました。

■小型観光船業者ドルフィン元船長・鎌田日出明さん

「桂田社長にも(豊田船長の操縦が)危ないときは、電話したんだけど、その時は何か忙しかったのか電話を切られちゃったんだよね。聞き入れてもらえなかったんだよね。」「桂田社長が豊田船長やほかの人にたちにも、こういう風に言われているから『もう少し気をつけれよ』ってことを言ってもらえたらまだ結果はどうなっていたかな」

アドバイスは届かず、悲劇は起きてしまいました。

■知床遊覧船の関係者

「ライフジャケット着させろと騒いでいて、前の方から傾いてエンジンが止まったのはそのあとかな」

知床遊覧船の関係者の男性。事故直後の出来事についてカメラの前で証言しました。

発生時、男性は知床遊覧船の事務所にいました。

KAZUIが沈みかかっているという連絡を受け、すぐに事務所を飛び出し、船を出そうとしましたが…。

■知床遊覧船の関係者

「船まで行ってるの。迎えにいくぞって。でも出られる状態ではなかった。これは無理だわ、と」

(記者Q「もし事故現場が港の近くだったら出た?」)

「出てないわ。出られる状態ではなかった」

それから、およそ5時間後。

桂田社長が、事務所を訪れました。

■知床遊覧船の関係者

「午後6時半ぐらい、薄暗いときにきた。なんも言わない。入口の玄関のところに立ってた」

男性は、桂田社長らとともに救助の一報を待ち続けました。

しかし、その日は、誰も救助されませんでした。

あの日、海保のヘリが撮影した現場の海です。

最も近くにいたヘリは発生当時、別の業務にあたっていて、到着した時には通報から3時間以上が経っていました。

これは、高度な海難救助にあたる「機動救難士」などが1時間以内に出動できるエリアの地図です。当時、知床半島を含む道東は救助の「空白地帯」でした。

なぜ、観光船が運航する海に「空白地帯」が残されていたのか。

当時の海保トップが証言したのは、「体制の限界」です。

■海上保安庁・奥島高弘前長官

「常にベストを尽くしていかないといけませんが、日本国中全ての海域でベストな状態に作るっていうのは、現実問題として不可能」

「今回事故が起こったんでまずは手当しなきゃいけないっていうところで。順番にやっていくと、ただ必ずやる。やり切るっていうことが大事なんだと思うんですね」

その後、海保は釧路基地のヘリを1機増やすなど体制を強化。

知床の海で、救助の「空白地帯」は解消されました。

事故を受けて見直されたものは、他にもあります。

それは「船の検査」。

国の運輸安全委員会は、船の甲板と内部をつなぐ「ハッチ」の不具合が沈没事故につながったと結論付けました。

船は、「ハッチ」のフタが固定されていない状態で出航し、激しい揺れでフタが開き、内部に海水が流れ込み、沈没したとされています。

事故3日前の検査で、ハッチの不具合は見過ごされていました。

検査を行ったのは、国の代行機関JCI=日本小型船舶検査機構。

2023年1月、国から指示を受けて検査の項目を増やしました。

たとえば、5トン以上の船については船底の状態を確認するため、陸に揚げての「上架検査」が義務化されました。

いまのJCIの検査を、事業者は、どう感じているのでしょうか。

HTBは全国の旅客船業者497社を対象にアンケート調査を実施。

173社から回答を得ました。

調査で明らかになったのは、「検査の負担増加により、経営が圧迫されている」ことです。

JCIの検査の平均時間は厳格化される前の51分から、厳格化された後では185分と、3.6倍に増加していました。

こうした検査への不満についても、多くの回答がありました。

■西日本の事業者

「検査が通るのに時間も日にちもかかり、営業に差支えが出ています」

■島根県事業者

「法律の改正が早急すぎると思う。中小企業が耐えられるような時間の余裕が欲しい」

アンケートで明らかになった、重い検査負担。

JCIを所管する、国土交通省はー

■斉藤鉄夫国交大臣

「例えば上架検査については定期検査などの受検時以外にも、事業者の都合に合わせて実施可能とするなどの弾力的な運用を行うことで、事業者の負担軽減に配慮させていただいております」

乗客の家族29人は、運航会社「知床遊覧船」と桂田社長の責任を問う裁判を、7月に札幌地裁へ起こすことにしています。

■知床観光船事件被害者弁護団山田廣弁護士

「桂田代表の法的な責任を明らかにする、謝罪させる。それと全損害を賠償させる。この事件のあまりにも悲惨な状況を社会に訴えて、風化を防ぐ」

乗客と乗員の家族の戦いは、これから始まります。

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