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難題のオファーに戸惑いながら…北方領土問題を“笑い”に変えて語り継ぐ 北海道出身芸人の挑戦

HTB北海道ニュース / 2024年8月27日 17時47分

(c)HTB

ソ連が北方四島に侵攻してから、8月28日で79年です。元島民の高齢化が進み、北方領土問題への関心が薄れているといわれる中、北海道出身の芸人が「笑いで語り継ぐ」という挑戦を始めました。

《アップダウン》

札幌市出身の阿部浩貴さんと道南の森町出身・竹森巧さん。芸歴28年のお笑いコンビ「アップダウン」は歴史をテーマにした漫才や芝居も手掛けています。きっかけは2012年。当時、芸人として目標を失っていた竹森さんが鹿児島県にある特攻隊の資料館を訪れ、「日本の重い歴史を伝えたい」と決意。アイヌ民族、特攻隊と、さまざまなテーマに挑むなか、長崎の被爆2世から原爆体験を伝承する漫才を依頼されました。笑いだけではなく、被爆体験をつづった手記に描かれたシーンの熱演も交え、1ステージ30分ほどの漫才を制作しました。

■~原爆体験伝承漫才のライブ映像~

悲惨な体験を「漫才」で伝えていいのだろうか。2人は葛藤し、完成した台本を何度も書き直しました。そのステージは被爆者らにも受け入れられ、今では長崎総科大附属高校など平和学習として取り入れる学校もでてきました。。

高校生)「平和学習と聞いたら堅いイメージがあるんですけれど、とてもわかりやすかった」

高校生)「記憶に残るし体験できないことだと思うので、良いと思いました」

《難題のオファーに困惑も》

アップダウンの漫才に惹かれた女性が札幌にいます。北方領土返還運動や語り部の育成を担う千島歯舞諸島居住者連盟で働く森田多江子さんです。去年11月、公演を見た後のアンケートに、「原爆体験伝承漫才がアリなら北方領土漫才もアリなのではないか」と思いをしたためました。

森田さんの想いを知ったアップダウンが、自分たちがパーソナリティを務めるラジオ番組にゲストとして招きました。

森田さん)「若い世代がなかなか関心を持ってくれないというのがちょっと我々の悩ましいところで、原爆の漫才を見たときに、北方領土そのものを伝えてもらえないかなと…」

阿部さん)「北方領土漫才?…」

竹森さん)「またすごい難題がふりかかってきましたけれども…」

《とりあえず資料集めから》

普段、漫才を作る時は資料集めから始めます。この日2人は札幌の千島連盟事務所へ向かいました。

阿部さん)「まだ北方領土、本当に一般常識くらいしか知らないので、実際にどういったことを思っているのかをお聞きしようかと思って」

竹森さん)「本当にまだ作れるかどうかさえ分からない…またその北方領土ですからねぇ。どうなりますかね」

森田さんが2人に差し出したのは島の暮らしを記録した写真集です。

阿部さん)「あーすごい、運動会!」「クジラの上に乗ってる」

竹森さん)「これから食べようと思っているものの上に乗ってる」

阿部さん)「こういうの見るとやっぱり当たり前ですけど、日本人が生活していたんだなと思いますよね。でも正直まだわからないです。まだもっと深く知らないと輪郭が見えてこない部分があるんですけれど。長崎原爆は漫才という形でやりましたけれど、表現の仕方をどうするのかもまだ決めていない」

竹森さん)「まだ漫才にするかどうかも分からないと言ってましたけれど…漫才です」

《国後島を望む町で聞いた壮絶な体験とは》

資料集めの次は直接、取材に出向きます。訪れたのは国後島をすぐ目の前に望む道東の羅臼町。引き揚げてきた元島民も多く住んでいます。相方の阿部さんは別の仕事で訪れることができなかったため、竹森さんが一人で聞き取ります。

国後島出身・飯塚幹雄さん)「急に大きなソ連の軍艦が入ってきたのさ。何もわからないから『お、軍艦来たな』って小さいながらにね。区長の人たち慌てて来てさ、『女、子どもは隠れろ!』って。俺もおふくろにつかまったままで、それくらいしか記憶ない。おっかなくて。拳銃持って入ってきたんだ」

竹森さん)「もしかしたら殺されるかもしれないですしその恐怖は相当ですよね」

初めて直接聞いた、当時の壮絶な経験。竹森さんは元島民から聞いた話も元にして漫才を作ることを決意しました。

竹森さん)「いや…やっぱりその実際の話を聞くだけで、『腑に落ち方』が全然違いますよね。そういう経験がないので、ちょっと壮絶でしたね」

飯塚さん)自分の住んでいる島をアピールするようなものだ。それを笑いにしてもらえればなお良いと思う」

《漫才作りがスタート!》

歌手としても活動する竹森さんはこの日、ライブを開催。元島民や後継者だけではなく、北方領土にゆかりのない人も大勢集まりました。

竹森さん)「北方領土の漫才を作ることになりました~!羅臼の皆さん、ぜひとも今日を境に私たちのことを知っていただいて、応援ご協力をお願いできないでしょうか」

ついに動き出した、前代未聞のチャレンジ。今年11月ごろの完成を目指しています。

羅臼町民(色丹島出身)「みんなに漫才は力を与えてくれる、楽しませてくれる私は大変うれしいです」

羅臼町民)「すごくありがたいことだと思います。忘れられていきそうな感じなので」

竹森さん)「これはもうがっちり作るぞと気持ちが引き締まりました。もちろんメッセージをちゃんと届けるというのが前提で、そこに本当に面白いなと思えるような漫才を作りたいなと思っています」

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