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“笑い”で語り継ぐ「北方領土」 道産子芸人の挑戦 元島民の思いをどう伝える?【戦後80年記憶をつなぐ】

HTB北海道ニュース / 2025年1月21日 19時47分

(c)HTB

HTBでは、今年1年を通して「戦後80年・記憶をつなぐ」と題して、戦争を経験した人たちの証言や、その記憶を語り継ぐ企画をシリーズでお伝えします。第1回目は、北方領土の問題を漫才で伝えようとする道産子芸人に密着しました。

阿部浩貴さん:「いや、むずいっすね。今も続いている問題というテーマも、今までとはちょっと違う難しい問題ですね」。

阿部浩貴さん(47)と竹森巧さん(46)。北海道出身のお笑いコンビ「アップダウン」。特攻隊や原爆など、戦争の歴史を笑いを通して伝え続けています。今、手掛けているテーマは「北方領土」。

きっかけは、元島民らでつくる団体「千島連盟」からのオファーでした。

千島連盟・森弘樹専務理事:「相手を引きつけるというか、まずそこですよね。そこが我々素人の一番弱いところかなと」。

アップダウン・竹森巧さん:「一番何を伝えたいのかとうところが重要で、そこが漫才の最後の締めになるので」。

北海道で生まれ育ったものの、これまで北方領土の問題に真正面から向き合ったことがなかった2人。手探りからのスタートです。

アップダウン・阿部浩貴さん:「作品の輪郭も、まだできていない。まさに『ゼロイチ』からの作業だよね」。

ネタ作りの一歩は取材から。この日、2人が話を聞いたのは、歯舞群島志発島出身の中村勝さん(86)と、択捉島出身の天野留美子さん(83)です。

歯舞群島志発島出身・中村勝さん(86):「私の祖父母のところでは、(旧ソ連兵に)立派な柱時計を持っていかれた。貴重品みたいな物は、全部持っていったそうです」。

故郷を奪われ、戦禍を逃れた壮絶な体験。一方で、こんなエピソードも。

択捉島出身・天野留美子さん(83):「マダムが呼ぶんですよ。いい匂いがするので渡り廊下を見ると、ロシア語で呼ぶんですよ。『おいで』って。白いパンをくださるんですよ。一緒に遊んでた記憶があります」。

竹森さん:「じゃあロシア人の子どもたちとも交流があったんですか?」。

天野さん:「ありました。親から聞いても、いいロシア人の方たちに出会ったと」。

北方領土では、占領から3年ほど、日本と旧ソ連の人たちが共に住む「混住」の時代が続きました。悲劇だけではない「日常」も、そこにはあったのです。

阿部さん:「いい思い出があったりというのは、すごく大事な思い出なので、帰れないというのは寂しいもんですよね」。

日ロ関係の悪化を受け、ビザなし訪問は中断。北方領土の返還交渉は、止まったままです。

去年11月、千島連盟のセミナーに招かれた2人。返還運動のバトンを、次の世代にどうつないでいくのか。元島民2世・3世およそ40人が集まりました。事前のアンケートでは、北方領土を漫才のネタにすることについて懸念する声も寄せられていました。

アップダウン・阿部浩貴さん:「見てもらわないことには、分かってもらえないかなという気がするんですよね」。

アップダウン・竹森巧さん:「『いい』と言ってくれる人は『いい』と言ってくれるし、その裾野を広げられる一助になれたら」。

「笑い」で、何を伝えられるのか?披露したのは、長崎の原爆がテーマの漫才です。

阿部さん:「辺り一面空襲警報が鳴り響くわけですよ」。

竹森さん:「ああ~」。

阿部さん:「このように空襲警報が…」。

竹森さん:「あ~、そうなんだ」。

阿部さん:「しゃべってたんだ」。

「つかみ」で笑いを取ると、後半、雰囲気が一変。被爆者の手記を元にした芝居で、観客を引きつけます。

竹森さん:「ぴかっという青白い光がして、瞬きをした瞬間、その光は爆風となって悟少年を襲いました。気が付くと、家の下敷きになっていました」。

40分に及ぶ熱演。2人の思いは伝わったのでしょうか?その夜、開かれた懇親会では…。

元島民2世の女性(73):「漫才で元島民の笑えるところなんてないんじゃないかって、楽しい話なんてあるわけないんじゃないかと思ったけれど、私たちが(語り部で)100人に言う話とアップダウンさんがやる話と全く受け取り方が違う。だからすごく感動した」。

アップダウン・阿部浩貴さん:「僕らは伝えやすい形で伝えることはできるんですけれど、『本当のところ』は伝えられないので、そういうところは皆さんやれるところだと思うから、そこの橋渡しですよね」。

2月7日の北方領土の日を前にお披露目すべく、ネタ作りを進める2人。当時、現地で盛んだった捕鯨にまつわるエピソードを盛り込むことに。

阿部さん:「汽笛が1回鳴ったら、釣れなかったっていう合図。3回鳴ったら、釣れたっていう合図なんだ」。

竹森さん:「ぼ~」。

阿部さん:「あ、汽笛が鳴りましたよ」。

竹森さん:「ぼ~っとしている場合じゃないぞ」。

阿部さん:「あ、しゃべってたんですね」。

何気ない日常の様子を、笑いに変えていきます。2人が悩んでいたのは、最後に伝えるメッセージです。

竹森さん:「日本人全員にとって関係のある問題なんだということを、強く意識すること。一人一人が発信することによって、世の中を変えることができる時代になってきたってことじゃない?」

阿部さん:「なんかそっちじゃない気がする。それだとやっぱり『北方領土返還の思いを発信しましょう』になっちゃう気がする。自分事として考える。元島民の方からすると『無関心になられるのが一番つらい』ってことだから、しっかり関心を持って、自分はそれでどう考えるべきか、意見を持ちましょうってことだよね」。

どう伝えたら、北方領土問題を「自分事」として捉えてもらえるのか?2人は模索し続けています。

アップダウン・阿部浩貴さん:「自分で話を聞いたり、自分で調べたりということが大事かなと思うから、その第一歩になれれば」。

アップダウン・竹森巧さん:「やっぱり、日常的に伝えるということをしていかないといけないと思っているので、やれることをやるというところですよね」。

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