1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

【特集】「私たちは、同じ人間なのだから」 原爆の憎しみを乗り越えて伝えるメッセージ

広島テレビ ニュース / 2024年6月27日 7時0分

広島テレビ放送

原爆投下から79年。生後8か月で被爆し、家族の体験を語り継ぐ女性がいます。『憎むべきは戦争を起こす心の悪。』原爆を落としたアメリカ兵との出会いで憎しみを乗り越えた被爆者が訴えるメッセージです。

あの日起こった出来事と、投下後の家族の体験談

被爆者の近藤紘子さんは、英語で講演を行う

講演会で英語で語りかける被爆者の近藤紘子(こんどう・こうこ)さん、79歳です。話すのは79年前、広島で起きた出来事。そして、その後の家族の物語です。

■近藤紘子さん

「とにかくもう戦争は、駄目。同じ人間なのに…私からすれば、そういう気持ちがすごく大きいですね。」

あの日、建物は崩れ落ち、町は焼け野原に…

1945年8月6日。爆撃機B29「エノラ・ゲイ」。広島の上空から、人類初の原子爆弾を投下します。当時、生後8か月の乳児だった近藤さんは、爆心地から1.1キロにある広島流川教会の施設で母親に抱かれたまま、家の下敷きになりました。

■近藤紘子さん

「母は天井からいろんなものが落ちてきたから、頭を打ってるから、ちょっと意識がもうろうとしてる。」

当たり一面が壊滅的な被害を受ける中、近藤さん母子は、奇跡的に一命をとりとめます。

近藤さんの父・谷本清さんは、被爆者の救済に半生を捧げた

近藤さんの父親は、広島流川教会で牧師をしていた谷本清さんです。

■谷本清さん

「私どもは戦争したんだから町が焼かれるのは仕方ない。けれども子供が親を失ったと言うことに対しては全アメリカ人は責任を感じなきゃならない。」

被爆の惨状と平和の尊さをアメリカで訴え、原爆孤児の支援など、被爆者の救済に半生をささげました。

原爆で負った火傷を見た近藤さんは…

教会には、多くの原爆孤児たちが集まりました。近藤さんはそこで、火傷の跡を目の当たりにします。

■近藤紘子さん

「お姉さんの中にもうまぶたが額にひっついたままとか、唇はこう顎にひっついたまま。たった一つの爆弾が広島に落ちて、こういう体になったという話をお互いにしてるのを聞いて、「わかった。悪いのは、あの原爆落とした飛行機に乗ってた人たち。あの人たちさえ落とさなければ。」絶対見つけ出して、パンチするか、噛み付くかて蹴飛ばすか、絶対して敵を討つ。」

原爆を落としたエノラ・ゲイの乗組員と対面するが…

原爆を落としたアメリカ兵に対して憎しみを募らせた近藤さん。原爆投下から10年後。あるきっかけで思いが大きく変わります。被爆者の救済活動の一環で、アメリカの番組に出演した父親。同行した近藤さんが対面したのは、エノラ・ゲイの副操縦士ロバート・ルイスです。

■近藤紘子さん

「ずっと思ってた敵をやっつけようと思った1人が目の前にいる!だからそのおじさんをずっと睨みつけていた。」

しかし、目にしたのは、思いもよらぬ姿でした。

■ロバート・ルイス氏

「神様、私たちはなんてことをしたんだ。そう思い、すぐに飛行日誌に書き込んだ。」

ルイスが口にした言葉に、衝撃を受けます。

■近藤紘子さん

「それを言ったあと、彼の目から涙がこぼれ落ちるのをしかと見た。私が憎むべきは飛行機に乗っていた人、キャプテン・ルイスではない。私が憎むべきは戦争を起こす人間の心の中の悪。それは今でも、彼に本当に感謝してる。私を変えてくれた。」

苦悩の言葉を口にしたアメリカ兵。あの日、きのこ雲の上で何が起きていたのか…

79年前。エノラ・ゲイの搭乗員は、失敗の許されない任務を果たすため、10か月間にわたる厳しい訓練を積んでいました。失敗した時は命を絶つ…機長のポール・ティベッツは、搭乗員、全員分の青酸カリと拳銃を持ち込んでいました。エノラ・ゲイは、原子爆弾を搭載し、未明に太平洋のテニアン島を飛び立ちます。そして…

■ポール・ティベッツ氏

「爆弾が機体から離れると、私たちは手動操縦を引き継ぎ、爆発と自分たちの距離をできるだけ離そうと、非常に急な旋回をした。爆発が飛行機を直撃したのを感じた後、それが震動波だった。眼下には沸き立つような塵と瓦礫の雲、そしてその上に巨大なキノコがあったからだ。その下には、広島市の廃墟が隠されていた。」

副操縦士のロバート・ルイス。機内に持ち込んだ飛行日誌には「最初の原爆は大成功」「戦争は終わった」と、記していました。

エノラ・ゲイ機長 ポール・ティベッツ氏

機長のティベッツは戦後、広島の被爆者に語った言葉があります。

■ポール・ティベッツ氏

「戦争が起こって同じ命令が下ったら、私は同じことをするだろう。だから、戦争は絶対起こしてはいけないんだ。」

憎んだ乗組員との出会いが、自分を変えた

近藤さんの講演に真剣に耳を傾ける学生たち

近藤さんは、大学進学とともにアメリカで生活。日本に戻った後、40年にわたり証言活動を続けています。決まって伝えるのは、ロバート・ルイスとの出会いです。

■近藤紘子さん(講演会)

「私はじっと彼を見つめていた。何が起きたと思う?彼の目から涙がこぼれ落ちるのを見た。とてもショックを受けました。彼は悪い人、私は良い人だと思っていた。それなのに、彼の目から涙がこぼれ落ちた。その瞬間、私はこの人を憎んではいけない。憎むべきは戦争そのものなんだと分かった。私たちは決して過ちを繰り返してはいけない。そう、人間として私たちは戦争をした。人を殺してはいけない。私たちは同じ人間なのだから。」

近藤さんの講演を聞いた学生たちは…

■アメリカの留学生

「聞きながら、本当に感動しました。本当にすべて教えてくださりありがとうございました。」

■中国の留学生

「私は今まで、広島で何が起きたのかを知りませんでした。私はたくさんの人にこの話を伝えます。特に中国の人にこの話を知ってもらいたいです。」

■デンマークの留学生

「近藤さんからは信じられないほどの情熱を感じた。私たちができることは何かあると思う。先進国による大規模な戦争が二度と起きないように。」 

慰霊碑に祈りを捧げる近藤さん

■近藤紘子さん

「『安らかにお眠りください。過ちは繰り返しませぬから。』もうそれはしっかりと毎回ここへ来るたびに、あれを読んで自分自身に言い聞かせてる。だって二度とあってはいけないことだもん。」

近藤さんは訴え続けます。「過ちは繰り返してはいけない。私たちは、同じ人間なのだから」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください