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【記者が解説】24年前に発生した殺人事件の裁判員裁判 DNA鑑定の評価は? 広島地裁

広島テレビ ニュース / 2025年1月30日 19時48分

広島テレビ放送

24年前、福山市内の住宅で当時35歳だった主婦が刺殺された事件の裁判員裁判が始まりました。被告の弁護側は「無罪」を主張しました。

「記憶にないから分かりません」

車いすに乗って法廷に入ってきた被告の男。検察が起訴状を読み上げると、はっきりとした口調で語りました。弁護側は「男性は被害者を殺害していない」と、無罪を主張しました。

■大江芳樹記者リポート

「事件は24年前、福山市の閑静な住宅街で起きました。現場となった自宅は現在は取り壊され、更地となっています」

事件が起きたのは2001年2月(6日)。福山市明王台の自宅の階段で30代の主婦が腹部を果物ナイフで刺され、死んでいるのが見つかりました。警察は殺人事件として捜査本部を設置。のべ18万人を動員しましたが、捜査は難航しました。

事態が動いたのは、発生から20年後…。

■広島県警 上新宏一 刑事部長(当時)

「本日午後5時30分、被疑者を殺人罪で当署で通常逮捕しました」

「殺人」などの疑いで逮捕・起訴された、福山市西新涯町の竹森幸三被告。捜査関係者によると、現場の遺留品と被告のDNA型が一致したことから逮捕に至りました。

一方、弁護側は自白の強要が不適切であるなどとして無罪を主張し、争う姿勢を見せました。

事件から24年。ようやく裁判が始まることに現場近くの住民は…

■付近住民

Q裁判がようやく始まるが?

「びっくりした、遅かったですよね。女房とあれどうなった?と話をした」

■付近住民

「迷宮入りだけは寂しい気がするはな」

30日から始まった裁判のなかで、事件の真相はどこまで明らかになるのでしょうか。

【スタジオ】

■森拓磨キャスター

ここからは警察担当の久保田記者に解説してもらいます。注目の裁判ですが、今回どこが争点となるのでしょうか。

■広島テレビ県警担当 久保田栄作 記者

今回の争点は1つで、「犯人性」です。本当に犯人は竹森被告かどうかということになります。竹森被告は、逮捕された当初から警察の調べに対して「記憶にない」と容疑を否認していました。しかし、その後の取り調べのなかで犯行を認める供述もしていました。ただ、弁護側は「自白調書」の作成が不適切だったと訴え、裁判所は2024年10月、検察が提出していた被告の自白調書に対し「被告人が取調官による不当な働きかけの影響で自白等がなされたものと言わざるを得ない」などとして、証拠として認めない決定を下しました。これに対して、広島地検は「自白調書が却下され残念」としながらも「犯人性は明白だという見立ては変わらない」とコメントしています。

■井上沙恵キャスター

自白調書が採用されないとなると、今回の裁判は何が判断材料になるのでしょうか?

■広島テレビ県警担当 久保田栄作 記者

重要な証拠となるのが「DNA鑑定の結果」です。証拠品となっている現場に残されていた靴下の血痕をもとに、これまでに4回DNA鑑定が行われました。1回目と2回目はDNA型は被告のものと「一致」しましたが、3回目と弁護士によると4回目は「一部で不一致」という結果が出ています。2024年の4回目は裁判所の依頼で行われたものですが、詳しく結果をみると…

靴下の血痕から5か所を採取したうち、2か所でDNAの一部が被告のものと異なる数値が出たということです。これに対して検察側は「鑑定作業において生じうるズレである」と主張するとみられています。一方、弁護側は(DNA鑑定の結果が)完全一致ではないため、無罪を主張していくことになります。鑑定結果をめぐって意見がわかれているということで、今回、事件現場における一般的なDNA鑑定について専門家に聞きました。

【VTR】

神奈川歯科大学の山田良広教授です。様々な刑事事件のDNA鑑定を担当してきました。

■神奈川歯科大学 歯学部 山田良広 教授

「(証拠品を)外部資料と我々言ってますけど、誰が触ってもおかしくないようなものなんですよ。今のDNA鑑定イコールPCRですので、非常に微量なDNAでも検出してしまいますので、そういうところから検出するDNAっていうのは何人かの人のDNAが混ざった状態で検出されるというのが普通」

そのような結果の場合、鑑定する立場として一般的にどのような見解を出すのでしょうか。

■神奈川歯科大学 歯学部 山田良広 教授

「DNA型が一致しないと言ってしまうと、これは違うんだなという印象をすぐ思ってしまうと思う。そうじゃなくて、一致はしないんだけども、何人かのDNAが混ざってますけど、混ざった中にその被告人のDNAは含まれているとそういう言い方をしますね」

【スタジオ】

■広島テレビ県警担当 久保田栄作 記者

山田教授によると、DNAが採取された証拠品が劣化していた場合、正確に検出できず一致しない場合もあるということです。また、鑑定技術が進歩しているからこそ、鑑定するものによっては完全一致という結果にはなりにくいということです。

■森拓磨キャスター

DNA鑑定が重要になった事件はどのような事件があるのでしょうか。

■広島テレビ県警担当 久保田栄作 記者

こちらに長年未解決だった事件がDNA型鑑定によって解決した事件をあげています。

有罪となった事例でいうと、廿日市市の女子高生殺人事件(2004年に、北口聡美さんが殺害され、事件から14年たった2018年に犯人逮捕。きっかけは別の暴行事件で逮捕された男の指紋とDNA型が一致し、有罪判決(無期懲役)となりました。

一方でこんな事件もあります。

足利女児殺害事件。1990年に当時4歳の女児が殺害され、翌年に近くに住む男性が

逮捕されました。当時の鑑定で現場に残された体液が男性と一致という結果が出て、一度は無期懲役となったものの、DNA鑑定を再度行うこととなり、その結果が男性のものと一致せず、一転、無罪となったという判例もあります。

■森拓磨キャスター

今回の裁判は、25年前の証拠品からとられたDNAの鑑定結果を裁判員がどう判断するのかということが重要ということですね。

■広島テレビ県警担当 久保田栄作 記者

そうですね。実際、きょうの初公判では裁判員に対してDNA鑑定とはどういうものか、という基礎知識のような内容も検察から伝えられていました。また、検察側は事件当日に被告の妻が離婚届を提出していたことも明かし、裁判員の心証に訴える狙いがあるように思われます。

今後は検察側の証人尋問や遺族の意見陳述などが行われ、判決は2月12日に言い渡される予定です。

(2025年1月30日放送)

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