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“遅咲き韓国俳優”ユ・テオ 『パスト ライブス』脚本を読んで泣いた“2つの理由”を明かす

クランクイン! / 2024年4月5日 19時0分

ユ・テオ

 お互いに恋心を抱いていた少年と少女の24年ぶりの再会をエモーショナルに描く恋愛映画『パスト ライブス/再会』が公開中だ。アカデミー賞作品賞にノミネートされるなど高い評価を受けてきた本作は、宇多田ヒカルの楽曲「Passion」のような切なさと爽快感を持ち合わせた、経験を重ねてきた大人だからこそ刺さるラブストーリー。12歳で離れ離れになったノラ(グレタ・リー)とヘソンは、24歳の時にオンラインで再会。しかしすれ違いの末、ノラは別の男性とアメリカで結婚してしまう。36歳になったヘソンはそのことを知りながらも韓国からノラに会いに行き…。そんな“忘れられない恋”と向き合う本作をさらに格上げするのが、ヘソン役のユ・テオだ。15日に43歳の誕生日を迎えるテオは、15年もの下積み時代を経験してきた、いわゆる“遅咲き俳優”。さらに韓国人の父と母を持ち、ドイツのケルンで生まれ育った後、ニューヨークやロンドンで演技を学び、2009年に韓国に拠点を移すというグローバルな経験も持つ。今回テオにインタビューを実施したところ、誰もが心ひかれるであろうヘソンの役作りの裏側が明らかに。さらに本作に役立った自身の人生経験についても明かしてくれた。

■24歳と36歳のヘソン 演技で変えたこと/変えなかったこと

――初めて脚本を読んだ時に思わず涙したと聞きました。

ユ・テオ(以下、テオ):そうなんです。理由は2つあって、まずはセリーヌ・ソン監督が、「運命」の意味で使われる韓国の言葉“縁(イニョン)”という概念を、西洋の観客に分かりやすく脚本に落とし込んでいた技量に感動し、涙しました。

縁(イニョン)というのは特に韓国人が日常的に使う言葉で、新しく出会った人や友達との会話の最後に「ここで出会えたのは“縁(イニョン)”だ」という使い方をしたり、一緒に仕事をしようとしてうまくいかなかったけれど相手の人を気に入った時に「今回の“縁(イニョン)”はうまくいかなかったけれど、また別の“縁(イニョン)”があるよね」という風に言ったりします。その瞬間をお互いに良い思い出として残す意味合いでよく使うのですが、西洋の方には分かりにくい言葉だと思うんです。なのでこれだけ美しく描いたことにとても感動しました。

そして2つ目はヘソンの「もしこれも前世で僕たちの来世では今とは別の縁(イニョン)があるのなら…どうなると思う?」というセリフにグッときて泣いてしまいました。そしてこの作品に出たい気持ちも強くなりました。

――テオさん自身は、あまりヘソンと似ていないと感じていたそうですね。

テオ:僕自身はあまり過去を振り返らなくて、後悔しないタイプなんです。自分が選択した道に常に満足しようとしていますし、人生を楽しもうという生き方をしています。ヘソンはどちらかというと責任感が強くて、思うがままに生きることができていないんじゃないかという風に感じました。

その一方で、外の力が働いてどうしても変えられないことは、受け入れて従わなければならないと理解している点においては、僕とヘソンは似ていると思います。受け入れることによってメランコリックな気持ちになるのは、すごく理解できました。

――劇中では24歳と36歳のヘソンを演じていましたが、変化を出すために心がけたこと、またあえて変えなかったことはありますか?

テオ:まず変えなかったことは、ボディーランゲージです。ヘソンはシャイで常に不安を抱えているような人物なので、そこをボディーランゲージで表すようにしました。演技のインスピレーションを受けたのは、12歳のヘソンを演じたイム・スンミンさんです。彼は腕をあまり上げずに体につけたまま演技をしていて、それがヘソンの不安をうまく表現していたので、僕も取り入れて、ヘソンが年を取っても変えないように心がけました。

一方で変化をつけたのは、目や声の演技です。若い頃のほうが、好奇心やナイーブでピュアな部分が表れると思っているので、その感情を目や声のピッチで表現しました。好奇心にあふれていると目は常に見開いて周りを見たり、上を見上げたりして、声もどちらかというと高くなると考えています。逆に36歳のヘソンでは、人生経験を重ねているので、声のピッチを下げて、どちらかというと少し疲れているような雰囲気を出しました。あと知識を得たり、自信もついたと思うので、それに合わせて目の動きを調整することを心がけました。

――個人的にはニューヨークにヘソンが到着したときのタバコを吸うシーンが印象的でした。ノラに見せない顔のような気がして…。

テオ:そうですね。あそこは監督としては、ノラに見せない顔というよりは、ヘソンの緊張感を表していたと感じています。もう1つヘソンがタバコを吸うシーンがあって、それは24歳の時のSkypeに出る前のところです。これは韓国の男性が日常的にタバコを吸っているのを伝えたかった場面でした。なのでニューヨークのタバコのシーンも、到着して何もすることがなくて、緊張からタバコに火を着けたという意図があったのだと思います。あと、単純に見た目がかっこいいですよね(笑)。

――本当にかっこよかったです(笑)。それから36歳のノラの夫アーサー(ジョン・マガロ)とヘソンの関係性についても聞きたいです。恋敵でもなく、韓国での友人同士のようなマッチョな関係でもなく、優しさを贈り合うような独特なつながりがありました。どのように解釈して演じたのでしょうか?

■「自分の経験が本作に反映されている」

テオ:まずヘソンとアーサーには、お互いの状況を理解して共感できる部分があると思っています。それぞれ違う文化の下で育っているので100%は理解できないと思うのですが、同じ女性を好きになる時点で、お互いにリスペクトと理解があるということをベースに演じました。

実はアーサーを演じたジョン・マガロとは、リハーサルでも会ったことがなくて、ノラとアパートで初めてアーサーに出会うシーンの撮影が、僕とジョンの初対面でもありました。僕たちは、この作品に対する思い入れや好みなどが似ていたので、会った瞬間に、言葉に出さなくとも、役者として非常に信頼できると感じました。役者としてもキャラクターとしても、リスペクトを感じることができたので、とても演じやすかったです。

――テオさんは、韓国人の両親を持ち、ドイツで生まれ育った後、アメリカやイギリスで演技を学び、韓国を拠点にするという唯一無二のキャリアの持ち主です。そんな自身の経験は、複雑なアイデンティティーを描く本作において役立ったと感じますか?

テオ:そうですね。いろんな文化を経験して、3つの言語を自由に操れることは、すごく有利に働いていると思います。名前が知られるようになるまでに、15年間仕事をしてきた韓国以外で、日本やロシア、ベトナム、中国などさまざまな国の作品に参加させていただき、現地の文化を経験したことで得られたものも多かったです。この経験がインスピレーションとして本作に反映されているのは強く感じています。

1つ例を上げるとすると、英語には「vulnerability」という言葉があり、直訳すると「繊細さ」や「もろさ」という意味なのですが、日本語や韓国語では、あまりうまく訳すことができず、レイヤーをめくっていくような言葉になるんです。ドイツ語でも訳すのが難しく、「壊れやすい」というような意味合いになります。

このように、僕は文化が異なると言語化しにくくなる体験をよく分かっているので、ある感情を表現する時に、別の言語で言い換えができるというのは、さまざまな国を転々としてきたからこそ有利に働いていると感じます。いろんな色を使い分けることができ、さらに混ぜることもできるカラーパレットのように言語を操れるのは、恵まれた環境にいて他の人では経験できなかったことだと思います。

一方で、転々としてきたことで常にアウトサイダーだと感じており、寂しさを感じる時もありました。そんな感情までもが、この作品にプラスに働いてくれたんじゃないかなと思っています。

(取材・文:阿部桜子)

 映画『パスト ライブス/再会』は公開中。

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