映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』小野賢章&富田美憂「気持ちが動かないと、声やお芝居には乗ってこない」
クランクイン! / 2024年5月29日 12時0分
Netflix世界独占配信&劇場公開中の映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』。本作は“嫌われたくない”高校生・八ツ瀬柊と“嫌われてもいい”鬼の少女・ツムギが織りなす青春ファンタジー。柊役の小野賢章は、ツムギを演じる富田美憂の芝居について「10年前の僕はこんなに上手にできなかった」と称賛。対して富田は「若さって声の高さだけで表現できることじゃない」と、実年齢から離れた15歳の少年を演じる小野のすごさについて言葉にする。
■友達は無理に作るものじゃない
――最初にシナリオを読んだときの感想を教えてください。
小野:本作は誰しもが抱えるであろう「言いたいことがあるけど言えない、言わずに我慢してしまう本当の気持ち」というのがテーマにあって。その中で、まだ若いふたりが物語を通して成長していく過程がとても丁寧に描かれているという印象を受けました。心があたたまる作品だと感じています。
富田:ファンタジー要素もあって非日常的な場面もありますが、賢章さんがおっしゃっていたように、自分たちが日常で感じる日々の悩みがテーマにあるので、とても共感しやすい作品だと感じました。家庭や学校での悩みを抱えている方々にも、ぜひ見ていただきたいです。
――演じるキャラクターの紹介をお願いします。
富田:ツムギは角が生えている見た目からも分かる通り、鬼の子です。小さい頃にいなくなってしまったお母さんを探すために、人間の世界へとやってきました。明るくて元気で、天真爛漫という言葉がピッタリな女の子です。柊と一緒にいるときは彼女の幼い部分が出てしまうこともありますが、同時に成長もしていくので、その過程を見守っていただきたいですね。
小野:八ツ瀬柊くんは遠慮しがちな少年です。それもあってか、なかなか上手く人との距離感を縮められなくて。決して友達がいない訳ではないと思うのですが、例えば同級生のために何かをしてあげても、あまりありがたく思われないんですよ。その関係が、自分の思っている友達とちょっと違うかもと悩んでいる男の子です。そんな彼がツムギと出会い、自分が必要とされることで、誰かを大切に思うことを知っていきます。序盤からの彼の変化にも注目してください。
――友達って何だろうと改めて考えてしまいます。
小野:僕は本作を通じて、友達って無理に作るものじゃないなって思いました。自然と距離が近づいていき、気が付いたらなっているものなんじゃないかな。
■気持ちが動かないと、声やお芝居には乗ってこない
――お互いが演じるキャラクターの印象についてお聞かせください。
小野:ツムギは人との距離の詰め方が直球。遠慮しがちな柊とは対照的と言えるかもしれません。天真爛漫に引っ張ってくれるところがすごく魅力的な子だと感じています。
富田:確かに、序盤はツムギに翻弄される柊みたいな関係性ですよね。でも、物語が進んで行くうちに、柊に引っ張ってもらう場面もあって。ふたりはツムギのお母さんを探す旅に出るのですが、ツムギから見て柊がどんどん頼もしい存在になっていっているなという印象を受けました。
――お互いのお芝居についてはどのような印象をお持ちですか?
富田:賢章さんは、私が仕事を始める前から色々な作品でお声を聞いていた先輩なんです。当時からずっと変わらずに一線で活躍されていて。本作では、15歳の少年役を演じていらっしゃいますが、若さって声の高さだけで表現できることじゃないと思うんですよね。声優は性別も年齢も超えて役を演じられる役者ではあると思いますが、いざ実年齢より何歳も下のキャラクターを演じるとなったとき、私は悩んじゃうと思うんです。それをやってのける賢章さんはすごいなと思いました。何かふだんから意識されているんですか?
小野:少年の役を演じるときは、気持ちの面ではやっぱり若くいたいかなって。そのために、自分と世代が離れている年下の子と共演するときはできるだけ「遊ぶときは何をしているの?」って聞くようにしていて。
富田:そういえば、私も聞かれました!
小野:聞いたよね(笑)。最近何が流行っているのかなどを聞いて、アンテナを張って、できるだけ遅れを取らないようにしています。あとは前日にしっかりと蒸気を吸ってノドを整える。それはやっていますね。
――自分よりも若い方々のことを知ることで、芝居に生かされていることがある。
小野:どうなんでしょうね。でもやっぱり気持ちが動かないと、声やお芝居には乗ってこないと思います。元気なキャラクターをやるなら気持ちも元気に。少年の役をやるなら、気持ちも若く。年齢をなるべく感じさせないようにするというのは、気を付けています。ただ本作に関しては、柊はツムギに引っ張ってもらう場面が多々あって。序盤は特に自分で何かを発していくというよりも、ツムギから発してもらったものに対して受けるというお芝居が多かったんです。だから、富田ちゃんに引っ張ってもらい、若くしてもらいました(笑)。
富田:いやいや、そんなことないです!
小野:実際に富田ちゃんとは10歳差ありますから。でも、すごいなと思いました。僕の10年前を思い返してみると、こんなに上手にはお芝居できなかったですから。言葉にものすごく力があります。ただただ尊敬です。
富田:ありがとうございます。私は逆に、賢章さんに色々と助けていただいたなと思っています。「ここ、アドリブでお願いします」というシーンでも、助け舟を出してくださって。とてもありがたかったです。
■勇気を出して思っていることを口にするのは大事だと改めて教えてもらった
――柊は自分の気持ちに蓋をしてしまうタイプです。おふたりは自分の気持ちに正直ですか? それとも蓋をしてしまうタイプですか?
富田:蓋をしてしまいますね。
小野:同じく。
――言いたいことが、なかなか言えない?
小野:どちらかと言うと、「言わなくてもいっか」となってしまう感じですね。
富田:自己完結しちゃうようになりました。
小野:そうそう。「これを言ったところで……」っていう気持ちになりがち。よくないですね。でも、周りの人が何を考えているのかなと考えだすと、自分の意見を言うことを躊躇してしまうというか。自分の意見を言うのは体力も使いますし。特に仕事に関しては一人でやっている訳じゃないので、自分の考えや思いをわがままに言えないことがありますね。
富田:「ここで自分がこれを言わなかったら丸く収まるのかな」みたいな考えが巡っちゃうんですよね。でも本作を見て、あまりそうやって自分の意見に蓋をし過ぎるのもよくないのかなと思いました。
小野:そうだね。
富田:でも私、ちょっとしたわがままを言うときにやっていることがあって。自分がこうしたいなってことを言った後に、「ちょっとわがまま過ぎたか」って言うんです(笑)。
小野:いいね、それ(笑)! 愛嬌があるから、実際に自分もそう言われたら「いいよ、いいよ」ってなっちゃいそう。「わがままだっていうのは分かっているんだけどね」って、今度使ってみようかな。いいことを聞きました(笑)。
――最後に、作品の見どころを含めたメッセージをお願いします。
小野:誰が見ても共感できるような悩みを抱えた柊とツムギが、色々な人に出会い、その人の経験を聞いていくなかで「大人になったらこういうことをやってみたい」と視野が広がっていきます。ふたりが大人への階段を少しずつ昇っていくような、すてきな作品になっていますので、ぜひ友達や家族と一緒に見ていただきたいなと思っています。
富田:勇気を出して思っていることを口にするのは大事だと、改めて教えてもらった気がします。ため込んでなかなか言えないことがある方が「ちょっと口にしてみようかな」と思えるような、背中を押してくれる作品です。ぜひ何度も楽しんでいただけたら、とても嬉しいです!
(取材・文:M.TOKU 写真:吉野庫之介)
映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』は、Netflixにて世界独占配信&劇場公開中。
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