1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

菅野美穂、子育てを経験し母親役に挑む心境に変化 「こうなりたい」と思った理想の母親像とは?

クランクイン! / 2024年6月12日 7時0分

菅野美穂

 確かな演技力と存在感で輝きを放ち続ける菅野美穂。6月14日公開の最新作『ディア・ファミリー』では、生来の心臓疾患で余命10年を宣告された娘の未来を変えるために、夫と二人で東奔西走する実在の女性を好演する。実生活でも2人の子育て真っ最中の菅野に、本作のモデルになった女性の印象や、母親役を演じる思いなどを聞いた。

◆モデルとなった家族の思い出をお借りする気持ちで役に向き合う

 本作は、世界で17万人もの命を救ったIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルの誕生秘話を実写化。生まれつき心臓病疾患を持つ娘・佳美に突き付けられた「余命10年」という宣告。どこの医療機関でも治すことが出来ないという現実を突きつけられ絶望の中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が作ってやる」と、人工心臓を作ろうと立ち上がる。菅野は、そんな一家で、夫・宣政と共に人工心臓・カテーテルの研究に励むかたわら、会社や家族を気丈に支える陽子を演じる。

 実際に起こった出来事の映画化。出演オファーを聞いた菅野は、「まだご存命ということもあり、ご家族の思い出をお借りするような気持ちで、大切に演じさせていただきたい」との思いで役と向き合った。「自分も子育て中ということもあり、子どもを育てるだけでも大変なのに、旦那さんのお仕事や、娘の闘病、しかも、お医者様に治らないでしょうと言われる中での闘病で心労もあったと思います。どのように毎日を過ごしてらっしゃったんだろう」と、台本を読み胸がつまる思いがしたという。

 モデルとなった陽子さんとは撮影前にリモートで対面を果たした。「ものすごく穏やかで品の良い方でした。ご自身のお話をするときは明るくおしゃべりしてくださるんですけど、ご家族がお話してるときは、目線を下にして静かにうなずいていらっしゃって」と振り返り、「ご本人の佇まいを損なわないように」と改めて思ったそう。一方、筒井さん一家と一緒に完成した作品を鑑賞した際には、「娘さんが『昔はお父さんが2人いるような家でした』とおっしゃっていました。女性らしさの中に、あの時代の働き盛りの男性にもひけをとらない強さも秘めていらしたんだな」と感じたという。

 脚本は、娘さんたちの感想も取り入れつつ、作り上げていった。「お父さんだけが頑張ったんじゃなくて、お母さんが大変だったっておっしゃっていて。娘さんたちはお母さんが大変なことを、ずっと身近に見てこられたので、お父さんだけじゃないという思いがあるんだなと思いました。それはやっぱり、自分の気持ちは二の次で、子どもたちのこと、会社のことをっていう陽子さんが頑張っておられたからですよね」と語る。

 夫・宣政を演じる大泉洋とは今回が初共演。会見では、「菅野さんの控室から“山賊たちの晩さん”みたいな笑い声が聞こえた」と明かすなど、息のあったやり取りが見られた。「パブリックイメージの大泉さんって、いつも文句を言っているというか、あれはボヤキ芸なんですけど、神経質なところがあるんじゃないかと思ってたんですよね」と告白。「気難しい方だったらどうしようと、ちょっとドキドキしながら現場に行ったんです。でも、終わってみたらすごくお話しやすくて! あ、あれは芸であって人柄ではないのかとホッとしました」と笑う。

 川栄李奈、福本莉子、新井美羽が演じた三姉妹についても、「皆さんあの昭和のヘアスタイルが似合っていてびっくりしました。普段のご本人たちは絶対しない髪型やファッションなんですけど、すっとタイムスリップできてるというか、雰囲気までは知らないはずなのになじんでいて、女優さんとして素晴らしいなと思い感心していました」と、劇中同様、一家を支える母のようなまなざしを見せた。

◆作品で接してきた母親役で印象に残るキャラクターは?


 菅野はこれまで、今回のように実在の人物、しかも存命中の人物を演じる機会も多かった。架空のキャラクターを演じるケースと比べて、役へのアプローチの仕方は変わってくるのだろうか? そう尋ねると、「イメージを作っていくというよりは、逆に現実にあるどなたかに自分を近づけていくというか…。ちょっと違いますよね」との答えが。「内面もですけど、特にフジコ・ヘミングさんを演じた時は、フジコさんの感性が外側に表れたのが服やヘアスタイルだったりするので、いろいろな資料や動画を見て研究させていただきました。向井千秋さんを演じた時は、向井さんはすごくさっぱりして明るくて、自分にもそういう要素はあるんですけど、やっぱりどこか違っていて…。難しいなと思ったのを覚えてます」と振り返る。

 しかし、「あの方々の歩まれ残されたものを疑似体験できるのは、すごく幸運なこと。フジコさんの役がなかったらピアノをあんなに必死にやることもなかったし、向井千秋さんの役をやらせていただいたから、息子に宇宙飛行士になってもらえたら最高だなと宇宙に興味を持ったり。自分の世界を広げてもらえました」と難しさの中にやりがいを感じている。

 今回演じた陽子さんについては、「うちは子どもが2人なんですけど、(筒井家は)3人で、2人と3人では全然違うと思うんです。そのうえ、子育てをしながら、通院もありつつ、完全に娘を治してくれるお医者様と出会えないかと東奔西走なさっていた。本当に気持ちの意味でも休みなく、常に動いてらっしゃったんじゃないかなと思います」と感服。しかし、「何においても自分以上の方だなと思うのですが、子育てをしているという面においては、共感できる部分が多くありました」とも語る。

 最近は母親役を演じる機会も多いが、20代前半で出演した『君の手がささやいている』や、朝ドラ『べっぴんさん』など、若い頃から母親役に挑戦してきた。実生活でも母となり、演じる際の心境の変化はあるのだろうか?「昔は子どもってかわいいなとか、愛しいなっていう気持ちはなんとなく想像できていましたが、子育てが大変だっていうのはまったく想像できてなかった」と笑う。「同じことを繰り返し、毎日コツコツ積み重ねていかなければいけない。芸能界のお仕事って毎日違うので、毎日同じことを同じ時間にすることが、すごく苦手だったんだって改めて気づきました(笑)。これまでの自分の人生で避けてきたものを補填している時期なのかもしれないですね」と明かす。

 これまで多くの母親を演じ、娘役としても多くの母親と対峙してきた。印象に残っている母親像を挙げるとすると、どの作品になるだろう?「『君の手がささやいている』で木内みどりさんがお母さんを演じてくださったのですが、その時の手話が、ご自身の人柄がすごく出ている手話だったんです。私は手話に気持ちを込めるという感じなのですが、木内さんはしゃべりながら手話をするので、もっとニュアンスのある手話というか、説得力があって、力強さもあって…。木内さんの演じてくださったお母さんは、『つらいこともあるのよ、でもそれでいいのよ』っていう肯定感があり、自分が子育てをしていて、そういうふうになれるだろうか、こういうお母さんになりたいなって思ったのを覚えています」と振り返った。

◆たまの息抜きは「フルーツのお取り寄せ」


 仕事に育児に忙しい毎日を過ごす。そんな中、息抜きに楽しみなことはあるのだろうか? 子育て真っ最中の人に聞くのは無神経かと思いつつ尋ねると、「逆にだからこそ、ちょっとしたそういう時間がすごく大事だなって改めて今思っています。今日の私の息抜きはサクランボのネット予約をしました! フルーツのお取り寄せは子どもが生まれてからするようになりましたね。サクランボってその時期しかないじゃないですか。サクランボと桃はないんですって。時期のもの、旬のものを楽しみたいなと。ブルーベリーも日本のはすごく大きくて実がたくさんあって甘いんですよね。なんでも甘くするの上手だな、日本人は」とにっこり。

 本作で大泉洋演じる宣政は自身を「諦めの悪い男」だと評する。菅野は何に対して「諦めの悪い人」だろうか?「子どもの靴下の片っぽが見つからないというので、夜中の1時まで探したことがありました。母ホルモンがおかしくなってしまっているんでしょうね。見つかったところで腹立たしいんですよ。ここにあったのか!ってどっちにしろ腹が立ってしまって。明日使わないかもしれないんだけど、あれがどこにあるのか今認識しないと気が済まないとか、そういう諦めの悪さが出て来ちゃいました。すごく厄介です」と大笑い。

 そう言いつつ、子育てに前向きに取り組んでいる様子が垣間見える。そんな菅野にとって家族とはどんな存在だろう?「宣政さんが諦めなかったのは家族が関わっているからでしょうし、子どものことって自分のこと以上に問題になっちゃうんですよね。割り切れないというか。自分はこういう人間でありたいっていうことで収まらないのが子育てですかね」。飾り気なく自然体に語るその姿に、菅野美穂の演技に魅かれてしまう理由を見た気がした。(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

 映画『ディア・ファミリー』は、6月14日全国公開。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください