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元宝塚雪組・和希そら 技術面も役作りも、とことん”突き詰める”役者を目指したい

クランクイン! / 2024年7月25日 7時0分

和希そら

 今年2月に惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した和希そら。退団発表時には、ダンス・歌・芝居どれにも秀でた“男役・和希そら”を見納めになることを嘆き悲しむファンが続出した。そんな彼女が、退団後初のミュージカル『9 to 5』で再始動。本作や再スタートへの思いを語ってくれた。

◆退団後初舞台は、ハッピーでポップなミュージカル

 数々の受賞歴を持つ音楽界の “LIVING LEGEND”ドリー・パートンが手掛けたミュージカル『9 to 5』は、2009年にブロードウェイで上演されるや大きな話題を集め、トニー賞、グラミー賞にノミネート、その後2019年にはロンドンのウエストエンドでもヒットを記録した。働く女性の仕事や恋愛の悩みを描いた笑えてすっきりするミュージカル・コメディー。

 明日海りおが主演を務め、和希のほか、平野綾、内海啓貴、飯野めぐみ、別所哲也らが出演する。演出を務めるのは『キューティ・ブロンド』や『四月は君の嘘』などを手掛ける上田一豪。

 ロサンゼルスの大企業に勤めるヴァイオレットはシングルマザー。日々の生活に追われながらも仕事と家庭を両立し、社長・フランクリンの横暴に耐えつつ、社内で確固たる地位を築いていた。ある日、同じようにフランクリンに苦しめられているグラマーな秘書ドラリー、新入社員のジュディと意気投合したことで、社長をとっちめる計画を立てる。それが思わぬ騒動を引き起こすことに――。

――退団後初舞台となる『9 to 5』。出演オファーを聞いた時の印象はいかがでしたか?

和希:ミュージカル・コメディーということもあり、ハッピーでポップな印象があります。今までも女性役は何度かさせていただきましたが、コメディー作品はなかったので、また新たな挑戦として楽しめるなと思いました。

退団後どういうものから始めようかという時に、自分がときめくもの、ワクワクするものに挑戦したいという気持ちがあったので、この作品から始めようと決めました。

――演じられるジュディというキャラクターはどんな女性でしょう。

和希:新入社員と言えど、一度結婚して家庭に入り、離婚して…という経歴の30代の新入社員なんです。そういう経歴をもつ人物が、どういうふうに社会に出て人々と関わっていくんだろう、まずは家庭に入って、30代になってから社会で働くという時にどんなマインドで、どのくらいのオープンさで人々と接していくんだろうと…役作りがとても楽しみです。

ジュディも人々と関わっていくことによって成長していくと思いますし、ヴァイオレット、ドラリーと3人でいる時の関係性も、はじめましての状態からどんどん変わっていくので、そうした変化も見どころかと思います。

明日海さんと平野さんとは、ビジュアル撮影でお会いしたのですが、お二方とも醸し出す雰囲気がとてもお優しくて、一緒にお芝居できることをすごく楽しみにしています。

――演じられるジュディには和希さんと似ている部分はありますか?

和希:あまりないかもしれないですね。最初に会社に行く場面でしどろもどろしているシーンがあったり、緊張しちゃって雑学みたいなことを言い出しちゃうシーンがあったりするんですけど、私には全然そういうのはないので(笑)。あ、雑学は好きです。共通点ありました(笑)。

――あまり緊張せずすぐにすんなり打ち解けられるタイプですか?

和希:いえいえ、人見知りなので、すぐに自分をさらけ出すっていうことはなかなかないんですけど、割とどんな時もフラットな感じで、周りを観察しているタイプです。

◆男役、女役の意識の違いはなし「この人間をどう演じ表現するか」


――今回、男性キャストがいるお稽古場は初体験かと思います。

和希:1つの作品を作り上げるうえでキャスト側に男性がいることは初めてなので、そこはすごく新鮮だと思います。

――赤いストライプのワンピースを着た和希さんのビジュアルが解禁された時は、かなりファンの皆さんがザワつきました(笑)。

和希:知り合いの方からもこのビジュアルが出た時に、「一瞬わからなかった!」と言われて、へーそうなんだって(笑)。

――(笑)。ジュディのビジュアルでこだわった部分はありますか?

和希:作品の中で最初に見えてくるジュディの人物像としては、はっちゃけている人物ではないので、撮影時には、体の前で手を組んだおすまししている写真も結構多く撮りました。でも日本人の感覚よりも、海外の方はもう少しオープンマインドだと思うので、そこは意識しながら撮影しました。

――『WEST SIDE STORY』のアニータ、『アナスタシア』のリリー、それに『ジュエル・ド・パリ!!』ではクレオパトラにも扮した和希さんですし、女性のビジュアルで映るご自分はすんなり受け入れられた感じでしたか?

和希:特に何も意識していないです。現役中から、この人間をどう演じるか、ショーの一場面でもこの場面でどういうふうに表現するかという姿勢だったので、そこにはあまり壁はないかもしれないです。心持ちとしては、どの役でも同じように挑戦していくという感覚でした。

――男役出身のOGさんは、退団後スカートをはくのに抵抗が…という話も聞きます。

和希:何も考えてないですね。元々ファッションが好きで、ファッションの幅が広がった嬉しさもありますし、着たい服があるから着る、それがスカートだったっていうだけで、スカートっていうものが先には来ないです。

――かっこよすぎます。

◆ターニングポイントになった『WEST SIDE STORY』


――昨年退団を発表された時は、突然のことにネットでは阿鼻叫喚の声があふれました。

和希:自分でも想像してなかったくらい、沢山のご連絡をいただいたり、思いを寄せてくださる方がいて、驚きました。

――よく鐘が鳴ると聞きますが、和希さんの場合は…。

和希:生きていくうえでやりたいことが本当にたくさんあって。挑戦したいことや場所、見てみたい世界の広さなども様々で。決断しましたね。

――退団後の5ヵ月間はどのような日々でしたか?

和希:日々を楽しみながら生きていました。やりたいことをいろいろやってて、レッスンももちろんそうですし、いままで挑戦してなかったことをしたり。

宝塚時代って、毎日が公演かお稽古かという日々だったのですが、それが私は好きでした。仕事で忙しくすることがすごく好きで、その代わりにお休みの時は何もしない(笑)。お休みにプライベートの予定を詰め込んで忙しくするのはあまり好きではないんですよね。

オンとオフはしっかり分かれているタイプです。

――14年在団された宝塚時代、ターニングポイントになった作品を挙げるとするとどの作品でしょう?

和希:『WEST SIDE STORY』ですかね。実際に舞台に立ってお客様からの反響をダイレクトにいただいた感覚があって。自分を評価してもらえたというのをすごく実感できた作品だったんですよね。それによって自信もつきましたし、男役だけじゃなく女役も経験して幅も広がりましたし、お芝居の楽しさも知って、表現する楽しさもより知れた作品でした。

――円盤化されなかったのが、本当に残念で仕方がないです。

和希:著作権が本当に厳しい作品だったので、限られた方にしかご覧いただけなかったのは残念でしたが、それだけ貴重な経験をしているんだなという実感もありましたね。

◆役者として大事にしたい“突き詰める”“心”


――“役者・和希そら”としてブレずに大事にしたいことはなんでしょうか?

和希:“突き詰める”ということでしょうか。あとは“心”です。歌ダンス芝居、全て、ちゃんと心から湧き出ているものを表現したいですし、そのためには、技術面でも役作りでも、とことん突き詰めていきたいなと。そういう役者を目指していきたいです。

――躍動感あふれるダンス、心に響く歌声、色気のある繊細なお芝居、三拍子そろわれた和希さんですが、一番好きなものを選ぶとすると?

和希:わぁ。これが本当に難しくて、全部好きなんですよ。昔は断トツでダンスでした。宝塚に入りたかったのも、最初はこの舞台で踊りたいという気持ちだけだったんですよね。全然興味がなくて、歌も芝居も(笑)。でも、そこからどんどん全部好きになって。今はどれも大好きなので、選べないんです。だからこそ全部できるようになりたいし、全部もっと上手くなりたい。どれを見せても魅力的だと思ってもらえるように、鍛錬したいですね。感性を磨いていきたいです。

――これからいろんな作品で和希さんを拝見するのが楽しみです。

和希:偏らずにいろいろ挑戦できたらいいなと思っています。それによって自分でも知らなかった道や選択肢も増えるでしょうし、挑戦しないとわからなかった自分の中の魅力みたいなものにも気づけるかもしれない。そういうことも楽しみながら、いっぱい挑戦していきたいなと思っています。

――最後に『9 to 5』への抱負をお願いします。

和希:ファンの方も楽しみにしてくださっていると思いますし、また新たな自分を見せられたらいいなと思っています。

(取材・文:松橋タカフミ 写真:高野広美)

 ミュージカル『9 to 5』は、東京・日本青年館ホールにて10月6~21日、大阪・オリックス劇場にて10月25~28日、福岡・キャナルシティ劇場にて11月1~3日、静岡・静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホールにて11月7~8日上演。

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