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河合優実らキャスト陣が素晴らしい ラストまで見たい秀作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』

クランクイン! / 2024年7月29日 7時0分

河合優実

 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(以下『かぞかぞ』)は、2023年にNHK-BSにて放送された河合優実主演の家族ドラマ。ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)、映画『少女は卒業しない』『あんのこと』、劇場アニメ『ルックバック』などで支持される河合が、連続ドラマ初主演を務めた作品だ。現在、地上波のNHK総合にて放送されており、全10話のうち、第3話までを放送。ラストまで一緒に走りたい秀作である。

■『勝手にふるえてろ』の大九明子監督が生み出す世界

 『かぞかぞ』の原作は、作家・岸田奈美さんによる同名の人気エッセイ。中学生のときに、父を心筋梗塞で亡くし、高校生のときには母が大動脈解離の後遺症で車いすユーザーに。弟はダウン症で、祖母は日に日にもの忘れが増えていく。過酷に思える日々を、笑いを交えて身近に感じさせ、するりと読ませるパワーに満ちた作品だ。

 映画『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』の大九明子監督の手によるドラマは、原作のエッセンスを抽出しながら、“ほぼ”トゥルーストーリーと銘打ち、脚色を交えて進んでいく。

 オープニング。全身黒いコーディネイトでビシッと決めた、七実(河合優実)、草太(吉田葵)、父・耕助(錦戸亮)、祖母・芳子(美保純)が、母・ひとみ(坂井真紀)の運転する赤のボルボに乗り込み、七実が、「“ほぼ”トゥルーストーリー」と宣言。岸本一家の物語が幕を開けた。

 ドラマの主人公・七実の父も彼女が中学生のときに急死したが、錦戸演じる耕助は、その後もたびたび姿を現す。家族を見つめる父として、また草太だけに見える、ともに在る存在として。フィクションならではの存在としては、福地桃子演じるマルチこと友人の環も、ドラマオリジナルのキャラクター。彼女とのやりとりによって、トゥルーストーリーから産み落とされた七実の性格や感情がこちらに伝わってくる。

 第1話では家族の紹介もそこそこに、母が倒れたが、冒頭の場面はそこから時を経た彼らの姿。家族の黒コーデは耕助の墓参りのためであり、赤のボルボを運転していたのは、車いすの母だった。「家族の死、障がい、不治の病。どれかひとつでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせてくれそうなもの。それ全部、うちの家に起きてますけど」と七実は平熱で口にする。重いテーマを扱っている本作だが、原作がエピソードごとに、軽やかに締めるように、ドラマも毎話、不思議な力で少しだけ気持ちを軽くして次へとつなげていく。

■家族全員が愛おしい ゲスト俳優まで惹きつけられるキャストの素晴らしさ


 第2話では、手術の同意書にサインしたことで、母に死ぬより辛い「生きていくこと」を与えてしまった七実の苦しさとともに、母・ひとみの苦しみを体感した。なによりも子どもたちの幸せを願い、七実と草太を育てることが生き甲斐だったひとみ。なのに自分自身が、子どもの荷物になるだろう現実。自分がもう終わったことがわかる。「もう死にたい」と。母と娘の苦しみが癒えぬ中、車いすで初めて外出した日の映像が、素晴らしく美しく、沁(し)みた。

 娘はいつの間にか庇護(ひご)すべき対象から、たくましい大人に成長しつつあった。ひとみは気づく、終わってはいない、「この(成長していく子どもの)笑顔を見るための人生をいただいたんだ」と。

 第3話では「昔もええ、今もええ。一生懸命食べて、一生懸命生きてれば、それでええ」との祖母・芳子の言葉が響く(この芳子の物語はこれから先、描かれていく)。大九監督が積み上げていく“ほぼ”トゥルーストーリーは、「どこぞの映画監督が世界を泣かす」特別な家族の特別な物語ではなく、1話1話、きちんと見る人の心に触れる。

 ここには書けなかったが、キャスト陣の素晴らしさは言うまでもない。飄々(ひょうひょう)としたベースに、ときにパッと火のつく七実を非常に魅力的に見せる河合を筆頭に、家族全員が好演との言葉以上の愛おしさで惹(ひ)きつける。さらに福地や、七実を囲むキャラクターを演じる配送業者の奥野瑛太、アルバイトの先輩で心の師匠的な岡野陽一、七実の担任の松田大輔などみんなイイ。第3話での旅行代理店社員役の川崎珠莉(崎は正式には「たつさき」)ら、ゲスト出演のキャストも光っている。

 余談だけれど、母がぺこぺこと謝りまくるコンビニ赤べこ事件は、原作にも登場するエピソードだ。本編で優しいコンビニ店長を演じているのは、朝ドラ『虎に翼』で“発芽玄米”こと小橋役ですっかり人気者になった名村辰である。

 今後も七実の周囲にはさまざまなキャラクターが登場。時代設定、2014年から2025年(!)までの世界を、それぞれに魅力的なキャストが演じて、映像作品ならではの世界を作り上げていく。

 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』とは、あらためて非常に長いタイトルだが、咀嚼(そしゃく)してみるに、こう言い切れるのは、スゴイことなんじゃないだろうか。さらに彼らを見続けていくと、愛すれど縛ってしまう結びつきではない家族の形が浮かび上がってくる。ひとりひとりの耕助との関係から見えてくる生き方も感じながら、最後まで彼らの横にいたい。(文:望月ふみ)

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