嘔吐・失神者続出の『テリファー3』監督に聞く アート・ザ・クラウンが“サンタ”に憧れた理由
クランクイン! / 2024年11月24日 17時30分
失神者続出の超過激ホラー映画『テリファー 聖夜の悪夢』が“いい肉の日”である11月29日に全国公開される。製作費わずか10万ドルの超低予算ホラー映画としてひっそりと公開された『テリファー』(2016)から始まった同シリーズは、公開されるたびに人気を博し、3作目となる本作においては『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』をおさえて、全米興行収入ランキング初登場1位を獲得するという快挙を達成。殺人鬼アート・ザ・クラウンは今やジョーカーに勝るピエロとなったと言っても過言ではないくらい大躍進している。本作の舞台は、前作『テリファー 終わらない惨劇』から5年後のクリスマス。ハロウィーンの大虐殺を生き延びたシエナとジョナサンは、再びアート・ザ・クラウンの悪夢に巻き込まれる。今回クランクイン!は、特殊メイクアーティストでもあるダミアン・レオーネ監督にインタビュー。アート・ザ・クラウンはなぜサンタに憧れたのかやシリーズの結末について聞いた。
■神聖なクリスマスに冒涜を
――“ナイトメアー・ビフォア・クリスマス”な作品でした。なぜアートはサンタに憧れを抱いたのでしょう。
ダミアン・レオーネ(以下、レオーネ):サンタがアートと真逆の存在だったからです。サンタは喜びを与えてくれますが、アートは悲しみしか与えません。アートは喜びに満ちた瞬間を卑劣な形でおとしめることができ、そういうチャンスがあれば絶対に見逃さないキャラクターです。それから、アートはもともと袋を持ち歩いていたので、サンタやホリデーが似合うとも思いました。クリスマスという神聖な祝日にたくさんの冒涜をもたらすことができるのは、このキャラクターにピッタリでした。
――おもちゃから凶器まで今回もたくさんの物を持ち歩いていましたが、アートの袋は無限に物が入るようになっているんですか?
レオーネ:いい質問ですね。魔法のバッグというわけではないんです(笑)。地に足の着いたリアルな袋を作ろうというイメージなのですが、脚本家としてチートな部分でもあります。袋を持っていれば必要な時にすぐに凶器を取り出せるので、用意するシーンを描く必要がありません。あの袋にはそういった利便性があるんです。
――なるほど! 個人的にはバーのシーンが印象的で、今回は新たな殺しの手段として液体窒素が出てきました。完全に凍らせて粉々にするのではなく、トロっと血があふれる部分を残すのが『テリファー』らしいなと。こだわりは?
レオーネ:『テリファー』シリーズは血が流れてゴアなことでおなじみなので、殺しのシーンで血が流れないことは考えられませんでした。ただ、あのシーンは今までで一番ファンタジックな殺人を描いていたので、トリッキーなシーンでもありました。クリスマスを題材にしたホラー映画なのですが、ほかにクリスマスを基にした殺しがないんです。なので雪だるまのフロスティのようなイメージで、凍らせるという意味で液体窒素を用いました。ファンタジーな要素として、凍らせすぎずに彼の皮膚の部分がまず剥がれてゴアが見えるという表現を使っています。
――アートは殺した後に頭部を、『テリファー』ではジャック・オ・ランタンとして、『テリファー 終わらない惨劇』ではハロウィーンバケツとして、本作ではクリスマスの飾りとして使いますが、その驚くアイデアはどうやって生まれてくるのでしょうか。「人の頭をどうにかしたい」と思うのか、もしくはジャック・オ・ランタンなどを見て「人の頭にしてみたい」と考えるのでしょうか?
レオーネ:僕は特殊メイクアーティストでもあるので、なるべく顔を傷つける表現をしたいと思う自分がいるんだと思います。特殊メイクの分野でも、作るのも再現するのも難しいのが人の顔です。特に『テリファー』と『テリファー 終わらない惨劇』では自分でメイクも担当していたので、アーティストとしてどれくらいリアルに顔を作れるかというチャレンジをする側面もありました。人の顔というのは、その人の人間性をそのまま表しているので、それを傷つけるということは人間性をおとしめる行為でもあると考えます。そこにダークなユーモアを注入できたら最高ですね。『テリファー 終わらない惨劇』に登場した、生首でできたハロウィーンバケツで子どもたちにお菓子を配るシーンは本当にワクワクしました。
――毎回ものすごい血の量なので「掃除が大変そう」なんて考えてしまうのですが、なるべくワンテイクで済ますようにするのでしょうか? それともこだわってテイクを重ねましたか?
レオーネ:そうなんです。掃除が楽だから、毎回殺人シーンがシャワー室で起きてくれたらいいのにと思います(笑)。特殊効果のシーンはなるべくワンテイクで撮りたいんですけど、なかなかうまくいかなくて結局繰り返し撮影しなければいけませんでした。僕もいろんなシーンを撮りたい人間なので、撮影が終わる頃には『シャイニング』のエレベーターが開いた時みたいな状態です(笑)。見えないところにゴミ袋があったり、カメラのレンズに血が飛ばないようにしていたり、いろいろ工夫はしています。特殊効果のシーンはテントのような場所で撮影することも多いです。でも今回はシャワー室の殺人シーンがあって、すぐに洗い流せたから最高だったなぁ。
――(笑)。『テリファー』シリーズは、アートとシエナのバックグラウンドが描かれ、より深みのあるシリーズになりましたよね。『テリファー4』も制作が発表されていますが、もうすでに結末の構想はあるのでしょうか?
レオーネ:はい、もうすでに本作を書いている段階で結末のアイデアが降りてきました。これからはフィナーレに至るまで、皆さんにどれだけの情報を提供できるかということが大切になります。一応次が最終章になると思いますが、クライマックスに到達するまでに、まだまだ伝えたいストーリーやバックグラウンドがたくさんあります。なので結構長尺になる予定で、あまりにも長すぎたら2本にしようと考えています。アートたちがどこに行き着くのか、皆さんに早く見ていただきたいです。
(取材・文:阿部桜子)
映画『テリファー 聖夜の悪夢』は、11月29日より全国公開。
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