無罪を訴えながら獄中死した兄の意思を引き継いだ92歳の妹の思いとは 『いもうとの時間』予告解禁
クランクイン! / 2024年11月26日 8時0分
名張毒ぶどう酒事件を取材したドキュメンタリー映画『いもうとの時間』より、予告編とメインビジュアルが解禁された。
本作は、『人生フルーツ』『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』を生んだ東海テレビドキュメンタリー劇場の第16弾であり、2024年2月に東海テレビローカルで放送された番組をもとに追加取材・再編集した劇場版。名張事件を取材し続けて46年、東海テレビの名張事件ドキュメンタリーとしては8作目となる(映画化は4度目)。
1961年、三重と奈良にまたがる集落・葛尾で凄惨な事件が起こった。村の懇親会で振舞われたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡。世にいう名張毒ぶどう酒事件である。犯人と目されたのは、奥西勝(当時35歳)。客観的証拠はなく、あるのは自白調書のみ。一審判決では無罪を勝ち取ったが、二審では一転して死刑判決が言い渡される。以降、無実を訴え続けるも、奥西は89歳で獄中死した。
被告が亡くなった名張事件で再審請求を引き継いだのは、妹の岡美代子。弁護団を結成し、新証拠を出し続けるが、再審の扉は開かない。ついに10度目の再審請求も幕を閉じ、棄却され続けた月日はなんと半世紀。再審請求は配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹しかできない。美代子は現在94歳。美代子がいなくなれば、事件は闇の彼方に消える。残された時間はそう長くはない。それでも兄の無罪を信じ、長生きを誓う。あまりにも長く辛い「いもうとの時間」は果たしていつまで続くのか。
このたび、予告編が解禁された。1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの事件で、静岡地裁の再審判決は、捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)を認めた。予告編冒頭では、無罪を勝ち取った姉のひで子さんが、「無罪になったよ」と呼びかけるも、表情を変えない袴田巖さん(88)の姿が映し出される。
一方、いまだ再審の扉が開かない名張毒ぶどう酒事件。無罪を訴え獄中死した兄・奥西勝に呼びかけるように、妹・美代子は墓前に座り祈り続ける。有罪の決め手は自白のみ。状況証拠や物的証拠はすべて奥西が犯人と断定するには、決め手に欠くものばかり。しかし事件から63年、再審の扉は開かれぬままだ。唯一の再審請求人、美代子はもう94歳。彼女がいなくなる時、「事件」は闇の彼方に消える。昭和から平成、令和とこの事件を背負い続けてきた妹・美代子の悲痛な叫びが予告編からも聞こえてくる。
ナレーションは、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』で奥西勝を演じた俳優の仲代達矢が務めている。また、ジャーナリストの江川紹子は本作に、「人の命は無限ではない。残された時間は、どれほどだろうか。司法は、まるで“その時”が来るのを待っているかのようだ」とコメントを寄せた。
さらに、メインビジュアルでは、事件から6日後、35歳で逮捕された奥西勝の顔とあわせて、無罪を信じて再審請求の申し立てを行う妹・美代子の力強い表情が採用されている。また奥西の自筆で「自白を強要された」という文面、そして「生きている限りー真実を待つ」というキャッチコピーが添えられている。
映画『いもうとの時間』は、2025年1月4日公開。
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