5月の手紙やメールで使いたい「季節の美しい日本語」
イエモネ / 2022年5月1日 7時0分
5月初旬(2022年は5月5日)に「立夏」に入ると、季節は初夏。日本には、その季節に合った美しいことばがたくさんあります。手紙やメールにその時季ならではのことばを使うと、心が和みやさしい気持ちになれるでしょう。そこで、各月に使いたいことばを3つずつ、和文化研究家の三浦康子がご紹介します。5月は「若葉」「薫風」「走り梅雨」です。
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5月の美しい日本語~若葉(わかば)
この時季は、初々しい木々の緑を表す言葉がたくさんあります。代表的なのが「若葉」で、若々しい様子がとてもよく伝わります。また、色の名前にも若葉色があり、そのやわらかい黄緑色から春のイメージがありますが、「若葉」は夏の季語です。
若葉と同じニュアンスのことばに「新緑(しんりょく)」があります。そして若葉が成長して緑色が濃くなると「深緑(しんりょく)」や「青葉(あおば)」と呼び、緑色の濃淡で彩られている様子を「青葉若葉」と表現します。
それぞれのことばから、木々の葉が黄緑色から緑色、さらに深緑(ふかみどり)や青緑へと色味を変えながら生い茂っていく様子がわかります。5月は木々の緑を表すことばで、初夏の情景を美しく切り取ってみてはいかがでしょうか。
<例文>
初夏の日差しに若葉がきらめく頃となりました。この時季は、若葉色の服に手が伸びてしまいます。青葉若葉をめでながら通勤していると、心癒されます。
5月の美しい日本語~薫風(くんぷう)
![](https://iemone.jp/iemone-cms/wp-content/uploads/2022/04/1613063281-shutterstock_207069052.jpg)
「薫風」とは、木々の間を吹き抜けて新緑の香りを運んでくる風のことをいいます。「風薫る五月」のように、薫風を「風薫る」と表現することもあります。みずみずしい若葉を揺らす風を「若葉風」といいますが、香りを伴う「薫風」には、五感で初夏を感じている様子が表せます。
また、若葉風や薫風は穏やかな風ですが、青葉のころに吹くやや強い風は「青嵐(あおあらし)」と呼ばれます。初夏は時折強い風も吹きますが、青嵐という言葉には、晴れやかで好ましいイメージが伴っています。
<例文>
薫風の候、みなさまお元気でいらっしゃいますか。風薫る季節となりましたが、お変わりありませんか。薫風に心が和み、過ごしやすい時季となりました。
昼休みに、青嵐で揺れる木々を眺めていました。青嵐で帽子が飛ばされてしまいましたが、お散歩は気持ちがいいですね。
5月の美しい日本語~走り梅雨(はしりづゆ)
![](https://iemone.jp/iemone-cms/wp-content/uploads/2022/04/1613063281-shutterstock_1992167747.jpg)
「走り梅雨」とは、本格的な梅雨に入る前のぐずついた天気のことをいいます。「走り」には先駆けという意味があり、梅雨入りには少し早い5月中旬から下旬にかけてみられます。走り梅雨になる原因は、この頃に沖縄地方が梅雨入りし、本州の南岸に前線(暖かい空気と冷たい空気の境目で地表と交わる部分)が停滞することがあるためです。
通常は、走り梅雨の後しばらく晴天が続いてから本格的な梅雨に入りますが、走り梅雨が長引いてそのまま梅雨入りする年もあります。
「走り梅雨」と同義語に「梅雨の走り」「迎え梅雨」「卯の花腐し(うのはなくたし)」があります。卯の花腐しとは、旧暦4月(=卯月。今の5月頃)に降り続く長雨が美しく咲く卯の花を腐らせてしまうのではないかという気遣いから生まれたことばです。
<例文>
走り梅雨でしょうか、ぐずついた天気が続いております。走り梅雨に濡れ、木々の緑がいっそう深まったように感じます。走り梅雨が過ぎれば初夏の日差しが戻ってくるはず。傘をささずにお出かけできるといいですね。
先人がうみだした瑞々しいことばを、上手に使ってみてください。
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