冬の京都で貴重な文化財にふれる旅
IGNITE / 2016年3月9日 10時0分
京都の冬は寒い。雪は降らなくても底冷えする寒さに観光客の足も遠のく。
そんな状態を解消する意味も含めて、毎年開催されているのが「京の冬の旅」である。今回で50回目になるそうだが、普段目にする事が出来ない襖絵や仏像、建物内を拝観出来る貴重なチャンスとなる。
毎年1月から3月に開催されるが、その年によって公開される場所は異なり、もう何十年も公開されていないものなどが拝観できることもあるので是非チェックしてもらいたい。
今年は50回記念ということもあり、初公開のものを含めて非常に貴重な文化財を拝観することが出来た。
南禅寺、東福寺、大徳寺、東寺などが公開されたが、今回紹介するのは京都最大の禅寺である「妙心寺」だ。
妙心寺は広大で多くの塔頭寺院が存在するのだが、今回は12年振りに公開された「天球院」に足を運ぶ。
「天球院」とは、あの織田信長の乳兄弟である池田恒興の三女・天久院が創建した寺院。彼女は姫路城築城者である池田輝政の妹でもあり、関ヶ原合戦前に攻め込んできた石田三成の兵士を自ら倒して脱出するという、剛毅な姫だった。
寺の建造は当時鳥取城主だった(やがて岡山藩主になる)輝政の孫・池田光政によるものとも言われ、また天久院も鳥取城に身を寄せていた為、鳥取藩池田家の家紋「丸に揚羽蝶」を瓦に見る事が出来る。
さて「妙心寺天球院」だが、ここの凄さは何と言っても狩野山楽と山雪父子が手がけた豪華絢爛な障壁画の数々にある。それら152面の障壁画がほぼ完璧な状態で400年経った今日まで伝えられてきたことには驚く。
四季を巡る梅や朝顔といった花々、雉や虎といった動物の数々が黄金の襖に美しく彩られている。江戸時代初期に建造された寺院ではあるが、桃山時代の息吹が色濃く残る華やかな色彩と金が織りなす美しさは圧巻だった。
なお、これらの重要文化財である障壁画はキヤノンと現代の絵師の技術によって順次高精細に複製されて入れ替えられており、山楽父子の手によるものは今後京都国立博物館で保存される。本物をこうして天球院の中で見る事が出来るのは今回が最後だろうと、解説員の方が説明してくれた。
貴重な文化財の本物は、その場の雰囲気に包まれた状態で見ておきたいものである。
(田原昌)
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