仮面ライダーフォーゼは、けっこう大人向けでもある。
インフォシーク / 2012年6月26日 14時0分
6月10日と24日に放映された仮面ライダーフォーゼは、難しく、エロかった。
難しかったのはテーマが「洗脳」であるからで、これはあとから書く。それ以前にエロかったこと。まずはこっちを書きたい。こっちの方が筆が進む。
エロの当事者は、江本教授だ。演ずる山崎一さん、どこかで見たと思っていたら、1990年代のCM「今日はNOVAの日ですか?」「イエース! ザッツライト!」の駅前留学、鈴木さんであった。
仮面ライダーの仲間たちの前に現れた江本教授は、高校2年生の友子に気にいられる。友子演ずる志保はミスマガジンでベスト16に入るほどの美貌、年の差おそらく35年以上、その時点でエロい。そして彼女が江本教授を見つめる視線が、大人の階段をのぼる女子高生である。さらにエロい。
そんな友子に江本教授もやぶさかでない。日本科学未来館では友子にばかり話しかけ、悪役から逃げて廊下を走る友子を自分の部屋に引きずり込んじゃったりするのである。まぁ、助けただけという設定だが、ここで私が思いだしたのが、映画「人のセックスを笑うな」の廊下にいた永作博美を引きずり込んでエッチしちゃう松山ケンイチ。う~ん、江本教授、エロいぜ。
部屋に引きずり込んだ友子に自分の昔話を聞かせるあたり、恋に長けた大人のずるさとも捉えられる。さりげなくコーヒーなんかあげちゃうのだ。普通に考えたら、もう確信犯であろう。コーヒーをもらった友子なんて、カップを両手で包みこむように持ち、乙女の顔をして江本教授に「わかります、その気持ち…」とかキラキラしているのである。もうダメだ。エロい。不倫まであと数秒だ。
そんなバカ妄想も止まらない仮面ライダーフォーゼだが、今回のテーマは重たかった。
テーマとなっている「洗脳」をウィキペディアで調べてみると、圧迫や暴力を含んだ形で相手を別人にしてしまうこと。まさに今回の怪人である。彼は「揺るぎない正義の心」という誰もが突っ込みづらいモットーを掲げ、力と圧迫で生徒を支配していく。フォーゼは悩む。「正義」を掲げている相手と闘っていいのだろうか。視聴者から見れば怪人のビジュアルが完全に悪役なので、四の五の言わずに叩いてもオッケーなのだが、このあたりのバランスがストーリーの妙とも言える。
さらに感心したのは、「正義」を掲げていた怪人の行為が、奴隷が増えるごとにヒステリックかつ恐怖方向へと突き進んでいくことである。
これが、あまりにも人間らしい。
どうも人間は残念な動物で、身の丈に合わない力を持つと、途端に根っこの小心者が顔を出すらしい。管理職が、力を持ち過ぎたあたりから、気に障る者の処遇を悪くしたり、やたらに行動を監視したがるのは、よく聞く話だ。後輩たちは時すでに遅し、処罰にビクビクし、考えることをやめ、疑いを持たないようになる。そう、小心者のマネジメントは、「魂を込めろ!」と言いつつ「魂を抜いている」ことが多いのである。
今回の怪人も、次から次へと人間の魂を抜いた。魂を抜かれた者は、集団として生きていくしかない。まるでマンガ版デビルマンの悪魔狩りのような異様さもあり、何も考えずに人を食べる進撃の巨人のような絶望感もあった。
このテーマを仮面ライダーフォーゼは、どう結論づけていくのか。結果的には「恐怖政治の始まりは恋であった」という拍子抜けなオチで「あれ、あれ、あれれ…」であったことも、正直な感想である。どう行動すべきかまで踏み込まなかったのは、それだけ難しい問題であるのだろう。そもそも子供番組である。むしろライダー史に残る挑戦心溢れる回であったように感じる。
夏に迎えるクライマックスまで、あと8~9話しかないという噂。ここに来て仮面ライダーフォーゼは名作続きだ。
ただし、私は大人である。子供たちがこの一年でフォーゼにどれだけ虜になったのか。それはここからクライマックスへの盛りあがりが答を出す。日本のヒーロー代表に期待したい。
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」の運営や、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)の製作をしている。
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