新しいことがいいとは限らない。 ~1分でわかる大阪人の言い分~
インフォシーク / 2013年1月23日 17時30分
大阪の町を歩けば、道を曲がるごとに出てくるたこ焼き屋と、吉本芸人が登場しているポスターやマルチビジョンに自然と目が行く。
上京する前の10年前とほとんど景色は変わらない。東京で暮らしている今は大阪が帰省先であり、帰省はある意味タイムスリップするようなものだから、変わらない景色はうれしいなあと思いながら歩いている。
しかしよく見るとおいしかったたこ焼き屋があった場所に新しいたこ焼き屋ができていた。
たこ焼き器、赤い垂れ幕、日焼けした親父。親父の千枚通しを操るテクニック。変わったのは屋号だけなんじゃないかと思うくらい行列の数まで似ていて、定食屋の跡地にキャバクラができる入れ替わりの激しい東京にはない風情を感じた。
どっちがいいかは別として。
「大阪ってこだわり強いよね~」なんて言う東京人がいる。だけどこだわった結果が変わらない大阪の風景をつくっているとは到底思えない。
新しい情報に目を奪われない文化が強いだけで、それをこだわりというのはちょっと違う。
大阪人がよく使う「アホの一つ覚え」とのことわざは、社会的な常識に欠けていることを指す意味だが、「好きなことだけを追求し続けている」といった褒め言葉に解釈する大阪人を見かけることがある。文化的になんとなく仕方ない気がする。
とはいえ、新しいことがいいとは限らない。流行ばかりを追い求めて原形がなにかわからなくなっている東京は、なにがしたいのかわからないことが多い。同業者どうし熾烈な争いを繰り広げ、売れている物事をパクって売れようとしたがり、似たもの同士の集団が生まれ、一括りに“流行”と呼び讃え、やがて流行はいつか時代遅れになって廃れ、また新しい流行が生まれる。
そんな無意味なループ。
ここ数年で建ち並んだ東京のパクリのような商業ビルを除けば、大阪は人情のかけらもない使い捨て文化は似合わない。
「人と人との心が通い合った付き合い方をモットーとしている」と話す地方生まれの東京人は、生まれ育った地元より東京の空が冷え切っているからなんだろうけれど、そんなことを改めて口にする大半はただの流行語であろう。
演奏しないビジュアル系バンド、ゴールデンボンバーが武道館を満員にし紅白に出場する現代。それからというもの、ビジュアル系と呼ばれるの類いに俗ずる多くのバンドが、たとえ楽器が弾けたとしても演奏中にコミカルに卓球のアクションを取るなど、違和感を取り入れたゴールデンボンバー二番煎じばかりなのだと聞いた。
変わった容姿や変わったアクションを起こして「人生一回くらいは目立ちたい」と大博打を打っていいのはパイオニアだけ。そんなことも気付かずに真似する人たちのどこに希望を見いだしたらいいのだろう。そしてこれは、ビジュアル系バンドに限らない。東京の全ては誰かのコピーといっていい。
流行の名がつくものはどれでもが誰かのコピー。例えば前髪をパツンと切った金髪のセルロイド人形みたいな男とすれ違った数分後に似たセルロイド人形男を目にすると、この子たちは何を考えて生きているんだろうと思うし、同じ町を歩いている私は「反セルロイド人形のグループ」として属されるのか?と思うと怖くなる。
そしてパンケーキを食べたいがために長時間並ぶ人全員の顔がどこか似ているように見えてくる。
流行を追わず昔から変わらない景色ばかりなのは、面白味がないといえばそれまで。
だからこそ、どんな街並みであっても「面白く過ごすことを考えるほうが大事だ」という意識が大阪で暮らしていれば自然と身につくのかもしれない。そこにセルロイド人形男はいない。
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。
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