あぁ、愚かなり。現代と仮面ライダーウィザード。

インフォシーク / 2013年1月29日 17時30分

まさかのマッチョ変身! もののけ姫のシシ神みたいである。石田秀範監督の第20話は演出もかなり面白い。

先日、電車に乗っていると、男子高校生らしき集団がその場にいない友人についての噂話を始めた。「キモイ」という言葉が連発され、クフフ…クフフ…と笑う姿は全員のアタマを思いっきりハタキたくなる光景であったが、これが現代の若者なのであろう。

さて、1月27日放映(第20話)の仮面ライダーウィザードには、ベルゼバブという怪人が出てきた。

ベルゼバブ…そもそもは聖書に出てくる悪霊君主の名前であるが、やはり思い出すのはベルゼバブになぞらえて書かれた小説「蠅の王」である。私が読んだのは23年も前なので覚えていない部分も多々あるが、戦争により少年たちを乗せて疎開地へ向かった飛行機が、無人島に墜落し、少年たちだけで生きようとする話。決して勇敢な話ではなく、規律に疑問を抱き、獣性が先走り、集団で蛮族化し、子供同士で殺人が行われていく。野豚を殺して臓器を暴き、豚の頭を棒に刺して地面に打ち立てる。

集団が生む、愚かな心理状態である。

話を戻すと、ウィザード第20話には電話やメールでとにかく人とつながっていないと生きていけない中年女性出てきた。電話で誰かと話していると安心し、旦那に依存していると安心し、集団の中で皆と同じことをしていると安心する。

そんな彼女は怪人ベルゼバブの手によって、友人や旦那から無視され、一切相手にされない状況に追い込まれる。彼女の友人たちは、彼女について心の中で呟く。

「ウザイ」
「調子こいてんじゃねぇ」
「消えろ」
「消えろ」

うわっ、これ、私が電車で見た光景そのままではないか!

この類いの集団心理は、確かに現代的蛮族化…言ってしまえば蠅の王化である。

蠅の王と化した人たちは、大きな声を出した者の意見が正しいような錯覚に陥り、強い意見に従い、傷つくことを恐れる。学校、会社、町内…もはや人間関係が存在する全ての場所は蠅の王が存在し、蠅の王化した彼らの存在の危うさこそが、政治や会社や家族をおかしな方向に向かわせているのだろう。

はたしてこうも悪口陰口が横行する時代が人類の歴史にあったのだろうか。他人の噂話でしか自身を確立できない人間ばかりになったことがあったのだろうか。集団の中で同じことをしていないと耐えられない時代があったのだろうか。

実は仮面ライダーフォーゼでも、同じようなテーマを描いた回があった。もはや現代蛮族の問題は、現代の緊急課題なのである。

ベルゼバブを持ってくるとは思いもよらなかったが、今回の仮面ライダーウィザードはかなり面白かった。それにしてもこんな冗談半分の記事を書いている私ですら、本気で悩む。私たちはこのような時代の危うさを、表現することでしか訴えることができないのだろうか。本当に伝わっているのだろうか。今、私に脚本依頼が来たとしたら、やはり現代蛮族化をテーマにするような気がする。

あ、そうそう。ウィザードに出てきた例の彼女が大好きなキャラクターは「豚」であった。可愛い豚グッズがいくつもいくつも出てきた…が、蠅の王から来ているのは間違いない。なかなかの皮肉であった。

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ガッケンター
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」の運営や、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)の製作をしている。

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