なんで東京人は『お前』と呼ばれると怒るのか ~1分でわかる大阪人の言い分~
インフォシーク / 2013年1月30日 17時30分
会話の最中思わずイラッとくる言葉と聞いて、思い出す言葉はキリがない。
会議なんかをしていると「言葉遣いまで気にしてられないッスよ」が通用するとでも思っているのか。はたまた堅い言葉はダサいとでも思っているのか。
会議中はイラッとしないように聞き流す、というのは東京の広告業界に来てから一つの姿勢になってしまった。
例を挙げるとキリがないのだが、「ぶっちゃけ~」を連呼する人からぶっちゃけた話を聞いたことがないし、「逆に言うと~」も同じくまっすぐな答えしかない。「ぶっちゃけたところ、逆にいいと思います」という強者もいた。
その話者がクライアント様だったりすると「はじめからいいんじゃないかって話してたよ」と返すのも憚られる。そんなガマンが馬鹿言葉を生んでいるのだろう。
他にも、急に改まった顔をして「山田(仮名)的に言わせて頂きますとぉ~」や「あんまり言いたくないんですけどね、言っちゃいますよ?」なんて言われた日にゃ、「おい、なに言うとんねん。ええ格好すなや」と大阪弁丸出しで返したくなる。
大阪弁は東京人にとって怖がられやすい。感情を込めた大阪弁で回答をしてしまったらミイラ取りがミイラになり兼ねないから場所や人を選ばなければならない。
「あほか!」「ボケか!」「知らんがな!」は大阪では特に怒っていなくても、というか楽しい会話の最中にも出てくるコミュニケーションである。
しかしながら東京でそのような言葉を発した場合胸ぐらを掴まされ兼ねないのはわかっている。東京で暮らす大阪人は「大阪弁って怖く聞こえるから気をつけなあかん」とトライ&エラーを繰り返して勉強してしていくものなのだ。
私のこれまでの失敗で多いのはきっと『お前』についてだと思う。年齢の近い者同士、仲の良さを表す「お前」と呼び合う関係。また男が女性へ、愛情の深さを表す「お前」と呼ぶ表現。
どちらも全国共通だと思っていたことが東京へ来て否定されることは今でもある。
ものすごく使い古した言葉なだけに、ついつい口に出してしまうことが失敗経験を生んでいく。
男の友人であっても相手が関西生まれだと気兼ねなく言えるのだが、東京の友人から「お前お前ってうるせーよ」と言われたことがあり、楽しそうに笑ってはいたが『お前』だけ抜き取られるとなにか別の意味を感じているのでは?と気になってしまい、簡単に呼べなくなった。
また「お前、いい加減にしろよ」と泥酔した先輩に言われたときは、すごい愛されてるんだと勘違いしお礼したこともある。
数少ないとはいえ女性経験のなかでも「『お前』と呼ぶこと、呼ばれること」について議論になることは多かった。
誰に対しても、もっとも親しみを込めた呼び名として『お前』と呼んでいるのにわかってもらえない。
矢沢の永ちゃんも「アイ・ラブ・ユー,OK」の中で「たった一人のおまえに 俺の愛のすべてを捧げる」って歌っているのにわかってもらえない。
「なんか馬鹿にされてる気分になるからいや」
「私のこと呼んでるのかわからないからやめて」などと否定してきた女性には、つい『お前』と呼んでしまったらそれは地雷を踏んでいるのと一緒なのかといつも注意しなければならず、「私の前で屁をこかないで」と言われいつも体内が空気でパンパンに膨れ上がっている錯覚に捕らわれてしまうくらいの苦しさが生まれる。
その反対に「『お前』って呼ばれるの好きなんです」という女性もいた。
「私、標準語で喋る男嫌いやねん」と宣言する大阪女性はいても『お前』と呼ばれることをどう感じているかなど聞いたことがない。
総じて、面倒臭い。
先日、仲の良い東京人とお酒を飲んでいたときのこと。
もちろん親しみを込めて『お前』と呼んだ友人に「ごめん、なんか変なこと言った?」と聞かれた。
まったく意味がわからず「え?」と聞き返すと友人は「え?、って?」とちょっと怒り気味になる。
さらに私が「え?ごめん?って?」と再び聞き返すと、友人は「は?」と険悪なムードに陥った。
その後、『お前』と言った言われたを超えた禅問答を繰り広げた結果、「『お前』っていうじゃん?あれ怒ってんのかと思ってたよ。人相悪いから」と相手が耳馴染みのない言葉を遣うことで別の角度からダメ出しを喰らうことがあるのかと、また一つ勉強になったよ、お前。
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。
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