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人類みな、仮面ライダーウィザード化の計画。

インフォシーク / 2013年3月19日 17時30分

仮面ライダーの資格を得ると、この人のもとで修行になる。白い魔法使い(本名、まだ不明)。

中学のとき、下着泥棒をしている同級生がいた。

コ、コイツ、なんてカッコ悪いのだ?! しかも、なぜ今、オレにカミングアウトしたのだ?! …と話を聞きながら愕然としていたら、一緒にやろう、と誘われてしまった。即座に断ると、どう取り繕っていいのかわからなくなったのであろう彼は、では、友情の証に、オマエの好きな女の子の下着を盗んできてやろう! と提言してきた。殴りそうだった。

中学生にして下着泥棒になった彼の思考回路は、一体どんなものだったのだろう。今思うと、興味深いところである。

人は悪さをするとき、自分を正当化している。常々それには3種類あるように思っている。

(1)強く思いこんでいき、世間のルールを乗り越えて一切疑わずに到達する「思いこみ達成型」パターン
(2)「まぁ、いいや…」と言い訳しつつ一線を越えていく「弱い気持ち型」パターン
(3)ひたすら快楽を求める「愉快犯型」パターン

この中で、対峙したら最もやっかいなのは、(1)「思いこみ達成型」である。なにせ悪いと思っていないのだ。微塵も。実に対峙したとき、普通の人は相手の強さに自分が間違っているような気になる軽いマインドコントロール下におちてしまったり、めんどうくさかったり相手にする体力が続かなかったりして、いつのまにかにあきらめてしまうことが多い。

わかりやすいところで言えば小さな会社などでも、自分の行動を微塵も疑わず理不尽なマネジメントをする上司に対して、会社中がいつの間にか、「もう、いいや」とあきらめてしまっていることがあるだろう。そうしていつのまにか、大事な心を失うのである。

3月17日に放映された仮面ライダーウィザード第27話に、この「もう、いいや」を考えざるを得ない場面があった。

少し説明が必要だろう。登場した怪人は、まだ人間だった頃、心優しい双子の姉であった。しかし悪玉たちに捉えられ絶望に追いやられ、「もう、いいや」と何かに負けたことで怪人になってしまったのである。怪人になると、記憶はあるが愛は無い。怪人は自分の親を殺し、さらに実の双子の妹を追い込んで怪人にしようと企む。仮面ライダーウィザードは妹を守りきれず、地べたに這いつくばった。そう、仮面ライダーの目の前で、妹は怪人になっていったのである。

妹の背中から怪人の突起物が生えてきた。まさしく怪人だ。もう終わりだ。その瞬間。彼女を覆っていた怪人化が一気に消えたのである。なんと、彼女の類いまれなる強い心が、自分で怪人化を封じ込めたのだ。

つまり、彼女は最後まで、「もう、いいや」と思わなかったのである。

驚く怪人に放った彼女のセリフが素晴らしい。

「姉のふりをしただけのアンタなんかに、私の人生を終わりにさせない」

これなのだ。これなのである。「正しいふりをしただけの」「善人のふりをしただけの」「幸せのふりをしただけの」「私の気持ちがわかったふりをしただけの」…偽者には負けない。

偽者なんかに、私の人生を終わりにさせない。

「もう、いいや」は、最後は自分との闘いである。世の中、一体どれくらいの人が、怪人にならない心を持っているのだろうか。下着泥棒化くらいなら断れるが、私は今までの人生で、何度も何度も「もう、いいや」と思って生きてきた。確実に怪人になってしまう。

ドラマの中で妹は、その精神力から仮面ライダーになる資格を得た。これから彼女は、仮面ライダーになるために修業を始めるのである。

思えば仮面ライダー1号だって、ショッカーに改造人間にされながら、藤岡弘があきらめなかったことで、正義の味方として成り立った面があったように思う。

大人になればなるほど、目の前にしょっちゅう現れる、「もう、いいや」の瞬間。

簡単ではない。しかし。できるなら。ここぞというときは。

やっぱりみんな、仮面ライダーになろうぜ。

【バックナンバー】仮面ライダー徒然草はこちら

ガッケンター
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」の運営や、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)の製作をしている。

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