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大阪人が標準語で話してきたら ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2013年4月24日 17時30分

大阪・千日前

数年振りに面接へ行った。

春。始まりの季節は同時に生まれ変わりの時期でもある。

電車に乗れば若々しい上京したての大群が騒ぎ立て、夜道を歩けばろれつの回らない若者達が踊っている。

その場に居合わせると若干面倒臭くも感じる一団ではあるが、遠目で見ると「私はいま何のために働いているんだろう」と改めて想い起こさせてくれる鮮やかな光にも映る。

今の会社で3年半を超えていた。

離職率の高い社内はその理由を書くと野暮になるのでお察しいただきたいが、ここ最近、辞めて行ってしまう人の気持ちが判らなくもない側に立っているせいか、自分のこと、これからのことを考え直す機会を新たに移り住んだ東京人の風景に感じた想いそのままに、新たな機会を求めることにした。

そして某社より一時面接のお話をいただく。求めていた業種と仕事内容、そしてホームページ上とはいえ共感できるビジョンに惹かれ日程調整の後に挑んだ。

自己紹介から自己PR、将来やりたいことなどを聞かれ、あらかじめ用意していた回答と予想外の回答を答えていく。それはもう真面目に。

「現職では愛情を持って仕事をしているが(中略)なので悶々としている」なぞ理由を述べたが、実は愛情があるのか疑問だし悶々としている程度のレベルかどうかも正直わからなかった。

ここ最近では尋常でないほどの真面目な自分がいたことに違いない。

その後いくつかの質問を受けて終了。会場を出、深々と頭を下げた際、あることに気がついた。

私は1時間程を終始標準語で話していたのだ。

大阪人は大阪弁しか話さない。

標準語を話そうとする人はいても誰もがヘタで何弁かわからない。

そんなイメージを持つ東京人は多い。

確かに私は標準語が下手なので普段使うことはない。標準語下手な関西人を何人も見てきたし、堪能な関西人は上京して9年で3人しか出会っていない。しかし大阪人は標準語を嫌っているのではない。単純に喋れないから方言丸出しで東京生活を送っているだけなのだ。

だが大阪弁が嫌いな人にコテコテの大阪弁はアレルギーになるのでは?と偽りの喋り方を用いる機会は稀にある。

「下手だけどできるだけキツい言葉にならないようにしています」そんな姿勢を出したい一心で。

自己PRの場である面接はそんな状況に当てはまったのだろう。帰りのエレベーターで居合わせた綺麗な女性に「何階ですか?」と聞かれ上擦った声で応えたときまで標準語な自分に気がつかなかった。

いつもと違う喋り方やったのか。そんな気づきは同時にきっと不採用なんだろうと悟った。

大阪弁が大阪人のポリシーみたいに思われる東京人は、実は大阪人は会話の際かなり気を遣っていることも知って欲しい。

反対に、過剰に大阪弁を遣う大阪人は自分のことが面白いと思っているのだから昇進願望が強い人は愛想笑いをしておけばいい。

関西から上京し標準語を余儀無くされている人、余儀無くされてはいないけど敏感になっている私みたいな人が仮に下手な標準語であったとしても、大目に見て欲しい。

大阪人(と関西人)が標準語を話してきたとき、あなたは大切に思われていると知ってほしい。

そして数日も経たないうちに不採用の結果が届いた。

次!次!と意気込み、一旦リラックスしようとAMラジオをつけるとラジオショッピングが流れている。数分喋り続けた後にメッキが剥がれコテコテの大阪弁が顔を出した中年男がサプリメントの効能について語っていた。次の面接は意図的に標準語で挑もう。

鹿タカシ
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。

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