東京映画と大阪映画の色はどうして違うのか。 ~1分でわかる大阪人の言い分~
インフォシーク / 2013年5月1日 17時30分
東京は映画館が多い。そのせいか、映画館で映画をやたらと観るようになった。
東京にはなんと1083ものスクリーンがあるのだそうな。
大阪は東京の約半分の560スクリーン。十分な数だと思うが、どこを歩いても映画館にあたる東京とは比べものにならない。
普段は渋谷の映画館をよく利用する。
「14:00からのアレと16:30からのコレ、19:00からのソレ」といったハシゴかけまくりな映画漬けの日々が続いているのはエリア内に劇場が点在している東京へ来てから知った楽しみの一つだ。
そうして年間100作品以上は劇場で、50作品は家で映画を観る生活を過ごしていると東京を舞台にした作品、大阪を舞台にした作品にも出会うことがある。
それらを観ていると東京には東京っぽさ、大阪には大阪っぽさがあることに気がつき、大きな違いに悶々としてしまう。
その違いは比較をするとわかりやすい。
東京を舞台にした作品の例として『ロスト・イン・トランスレーション』がある。倦怠期のハリウッド・スター、ボブ(ビル・マーレイ)が東京のシックなホテルのラウンジでスカーレット・ヨハンソン演じる若い人妻と出会う。
ボブはヒップなニーチャンネーチャン達とSHIBUYAで夜遊びに興じ、監督ソフィア・コッポラが「これが平成のライジングサンや!」と言わんばかりのオシャレストリップバーに連れて行かれたり、なぜかシブヤ系の男女の空間にはっぴぃえんど『風をあつめて』が流れるカラオケ館へ移動したり、スクランブル交差点前の大型ビジョンにおののいたりなんかする。
監督は日本を知らな過ぎるようだがオシャレな匂いは終始プンプンと充満していた。
他には今年の初めに上映していた『東京家族』。
瀬戸内海の小島に暮らす父母が東京で暮らす3人の子どもに会いに行くストーリーは、東京で生活する人たちの時にドライで時にセンスの高さを伺わせるシンプルな身のこなし、日本各地から人が集まる東京特有の、一人で生きていくことの寂しさが滲む現代描写に感動した。
では、大阪を舞台にした映画といえば、『ロスト・イン~』のように洋画で比較するならば『ブラック・レイン』を思い出す人は多いだろう。
阪急百貨店前コンコースでのバイクをぶっ飛ばすシーンはシビれるが、別に大阪じゃなくても成り立つハナシだし、「暗黒街」みたいなイメージが大阪にハマったとしたら生まれた身としてなんか複雑。
撮影の許可が東京で下りなかったのが大阪を選んだ理由、という説もなんか複雑だ。
では大阪を舞台にしていて、かつ大阪で生きている人を描いた作品といえば『かぞくのひけつ』。
えっ、なにソレ?と知らない人も多いと思うのであらすじをざっと書くと
「大阪・十三(じゅうそう)の商店街で不動産屋を営む家族。
浮気癖が絶えない父を持つ息子は、父の悪行が理由で性病になったと思い込んでいる。
童貞なのに性病疑惑に悩む息子と家族、友人、父の浮気相手との交流を描いたコメディ」
ってなんで“大阪家族”はお笑いカラーに溢れているんだろう。
父親役で比べると東京家族が橋爪功なのに対しこちらでは上方落語界のスター、桂雀々。
東京モノは日本や世界を驚かせ、大阪モノは大阪人を喜ばせたいくらい意欲が違うように見えてくる。
東京は情報密集地として捉えられる一方で、大阪は一つの個性的なエリアに過ぎないということなのだろうか。
監督自身が大阪人だからなのか、風景やキャラクター描写はどれも大阪のリアリティがある。
だけど大阪のリアリティを知らない東京人がこの作品を観たらどう思うのだろうと、「観たことがある」という東京人の友人に「どうやった?」と聞いてみた。
すると「大阪ってやっぱり“コテコテ”か“ヤンチャ”な映画しかないのね」と言う。
「そんなことない!他にもあるわ!」と言い返したかったが頭に浮かんだのは『岸和田少年愚連隊』シリーズや『ミナミの帝王』シリーズといったどれもがコテコテのキャラで展開されていくものばかり。しかも、ヤンチャ。
「オススメできる大阪舞台モノがパッと浮かばんわぁ」と嘆いていると友人が一言。
「『パッチギ!』よかったじゃん。」
それ京都や!
ゴジラに踏んづけられるでも豊臣家におんぶするのでもない、大阪を舞台にした名作をご存じの方は教えていただきたい。
なかったら誰か撮ってくれ!
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。
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