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東京先行上映は当たり前? ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2013年5月8日 17時30分

「3Dメガネって、溜まりません?」

前回「東京が舞台の映画」と「大阪が舞台の映画」に感じる描き方の違いを書いたが、今回も引き続き大阪と東京の映画に関して思うことに触れる。

今回は、ミニシアターにおいての疑問だ。

ミニシアターとは大手映画会社の配給による映画ではなく、1館でしか上映しないような独立型の映画館をいう。

映像美に長けたアート系作品、新人監督によるインディーズ作品、製作国がイランやタイなど、普段触れにくい作品などを上映することが多い。

素晴らしい作品に出会ったときは「よくぞこの名作を持ってきてくれた!」と支配人(かどうかはわからないが)のセンスを称賛したくなり、その感動は多くの劇場で流れる作品より感動が大きい。

まあ同じ数ほど「金返せ!」と思う映画に出会うが、自分が好きなジャンルがマニアックな場所で見つかるほど映画の楽しみは増す。

映画不人気やデジタル化の移行による設備不足からミニシアターが全国的に少なくなってきた。

現在は、明らかにアッパー層を意識した男前が登場する規模はミニでも中身はメジャーな劇場もあるせいか、なにがミニシアターの定義なのかも今や怪しい。

そんな風に思うのは、芸術をこじらせていた高校・大学時代の私が刺激を受けていたいくつかの劇場がなくなってしまったからだ。

かつて心斎橋のファッションビルに入っていたパラダイススクエアもなぜか湿気っぽいにおいが漂っていたシネヌーヴォ梅田も、もうない。

『バスキア(1997)』や『a.b.c.の可能性(1997)』をそれらの劇場で観た経験は、作品の魅力だけでなく劇場特有の魅力が相まって多幸感に溢れ、芸術やファッションにしか目を向けていなかった10代の私は「知らんこと、めっちゃある…」とコテンパンにノックアウトされた場所だった。

東京にはまだまだ信用できるミニシアターが多い。昨年ではル・シネマで観た『別離』やユーロスペースで観た『ニュータウンの青春』に出会えたことは大きかった。

そんなミニシアター作品について大阪人ゆえに東京に抱く疑問がある。

それは、東京での公開日と大阪で封切られる日のズレだ。

ミニシアター作品は基本的に東京からスタートし順次地方へと遠征していくため、大阪は公開後数週間を過ぎた頃にやっと上陸することが多い。

東京人にとってはなんの気にもなっていないだろうが大阪人の、特に文化系な大阪人にとっては、観たい映画を待たされる状況が大阪にはあることを知っておいてほしい。

Cut(ロッキング・オン)などのカルチャー誌に目を通しまくっていた10代の頃「○月××日、シネマライズより全国順次ロードショー」との広告を目にし、「何人もの東京人がその新作を体験した後に流れ着いた、鮮度が落ちた新作映画やないか」と苛立った。

私はこのミニシアターの作品に抱いた「待ちぼうけを食らう感じ」が本当にイヤで東京に来た、といっても過言ではない。

今となってシネマライズは「大好きな映画館」ただそれだけなのだが、「面白かった/つまらなかった」と飛び交う情報に耳を塞ぎガマンしろと言われている気がしてならなかった当時は「東京だけずるい」としか思えなかった。

上京して10年。東京生活に慣れてしまったせいか、今や公開日のズレについて考えることはなくなってしまった。

しかし、先日ユーロスペースへ『ぼっちゃん』を観に行った日、通りすがりにそのポスターを眺める関西人女子二人とかつての自分が重なった。

「なにこの映画?聞いたことないわぁ。東京だけでやってるってずる(く)ない?」「ほんまや。調子こいとるわ」と二人ともムカムカされている。

その気持ち、解る。と、思ったがスタスタと映画館の前を通り過ぎて行ったので毒を吐く必要があったのかは解らない。ちなみに大阪での公開日は6月1日らしい。

映画は感情を刺激する。

人情に厚い大阪人がたくさんの作品に触れられる環境を作ることで「面白かった/つまらなかった」が西から東から同時多発的に飛び交う世の中になり、たとえば好事家御用達みたいな顔をする某ポータルサイトの映画レビューも少しは楽しくなるだろう。

鹿タカシ
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。

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