あまちゃんに一喜一憂する東京人の謎 ~1分でわかる大阪人の言い分~
インフォシーク / 2013年9月11日 17時30分
「あまちゃん見てる?」
コミュニケーションのきっかけになるほど話題のNHK朝ドラ『あまちゃん』。以前当コラムで魅力に触れたが、最終回を今月末に控え盛り上がりが加速している。
朝からドラマなんて胸焼けしそうだと敬遠していた私も御多分に洩れずはまった一人。健やかに目を覚ましリアルタイムで視聴する習慣は会社の遅刻回数が大幅に減る日常をもたらした。
友人や同僚などと酒の席であまちゃん論が起きたかと思えば、先日帰省した際にオカンから「来週どうなるんやろな」と普段ドラマどころかテレビの話などし合ったことのない家族間でも盛り上がった。
老若男女、そして普段ドラマを視ない人もあわせて多くの国民をザワつかせているあまちゃん。共通の話題で盛り上がる度に国民的人気の凄さを感じ「視ておいてよかったなあ」とつくづく思うが、解せない人が目につくようにもなった。それは、自分が感動したことをいちいち発表してくる人の鬱陶しさだ。
直接会ったときに「あのシーンはよかった」などと言い合うのは全く悪くない。あまちゃんがお題に上がったら私も熱量高く3時間ぐらい平気で喋る。しかしツイッターなどの発信型メディアで自分の感情を語っちゃう人の自己陶酔感に鳥肌が立ってしまう。そして私が知る限り東京人ばかりだ。
私のいう東京人とは全国各地から上京しマスコミ流行大好きなミーハー感強めの人を指す。ここで取り扱うところのなぜかコメンテーター気取りな人であり、なぜか自分の感情をアピールしたがる。
「今日のあまちゃん泣いた」とアピールされても、あなたの感情なんか知らないしどうでもいいとしか思えない。まるで「先に言ったモン勝ち」なビーチフラッグの取り合いをしているようでこいつらなにがおもろいねん?と疑問しか残らない。
大阪で生まれ、暮らし、現在も多くの大阪人と親交があるが、これまで大阪人がベタなモチーフに対して誰もが抱きそうなことを我先にと奪い合うような、ボキャブラリーの乏しい会話を見たことがない。
好きなものは好き。好きなものでも嫌いな部分があったら「なんか違う」と大阪人は思ったことをすぐ口にする。そして好きか嫌いの二択ではなく良い部分悪い部分それぞれを自分の意見として持つ。さらに自分の意見として人に話すまでにネタ振りやオチを引っ付けてから話すのでオリジナリティ溢れるコメントになっている。「今日のあまちゃん泣けた」だけでは「なんなん?なにかの受け売りか?」と返されるだけだ。
東京人はベタなコメントを恥じらいなく言えてしまう。他の人と違う意見を言うほうが恥ずかしいと、持論があってもブレーキをかけがち。コンパに行けば俳優、映画、音楽、ファッション、パンケーキなど安定感ある人気者のレッテルが貼られた名詞しか聞こえて来ないのは東京人特有だ。大阪人から「そのまんまやんけ」と言われたことのある東京人は注意すべきだろう。
そういえば放送開始から数ヶ月が過ぎた頃、「あまちゃんおもしろい」をわざわざSNS上で連呼したサブカルをこじらせ続ける東京人の知人(30代男)は、ちょうど同時期にその男が大尊敬する映画評論家・町山智浩氏がTBSラジオ『たまむすび』においてあまちゃんを褒めまくっていた頃と重なっていた。
その後、知人はツイッターで絶賛しているらしい。文面がどれだけ町山語録をパクっているかは無視しているので知らないが、ライターを生業にしている人間の行動として恥ずべき行為だと思うのは私だけだろうか。
私自身「今回のあまちゃん、なんもおもんない」と思った回もある。予定調和過ぎる展開やあり得ないエンディングに「マンガやん」と、ボケをボケで重ねまくる件に「新喜劇やん」と大阪のオバハンみたいなツッコミをテレビにしたシーンがある。
このように「泣いた」アピールをしたがる東京人であっても面白くなかったり感動しなかった回はあるはずだ。なのに多数派の意見から外れることに恐れているのか素直な感想をつぶやくことなく、バカにポジティブに「今日もあまちゃん!」とかいう空気みたいなツイートをしている様子。
「今日のあまちゃん泣いた」な東京人はきっと泣くためにあまちゃんを視て、つぶやくためにあまちゃんを視ている。そして泣いちゃう自分をかまってほしいのだろう。どんだけ図太いねん。
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。
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