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東京のタクシー運転手 ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2013年10月30日 17時30分

大阪・谷町四丁目

最近はタクシーを捕まえて自分が捕まるオヤジギャグみたいな有名人が続いたせいで、明日は我が身と恐れてか「飲んだらタクシーにも乗るな」と敏感になっている人も多いようだ。

とはいえ私は大阪でも東京でも酒を飲んだ帰りはタクシーを利用している。そして運転手を殴らないようにではなく自分が寝落ちないように、会話を交わし瞼をこじ開けている。

先日、大阪と東京それぞれ乗ったタクシーで「お客さん、お仕事は?」と聞かれた。そこで某ミュージシャンが起こしたタクシー暴行事件を思い出し両方のタクシーで「歌う仕事をしています」と変装した。特に意味はない。強いていえば運転手側はどのような感情を抱いたのかを聞きたくもあった。ちなみに「元サッカー選手です」は体格的に変装できないため控えた。

するとそのリアクションに、東西の運転手の違いが出た。

大阪の運転手の場合。暴行事件を瞬時に思い出し、ネタに持っていく。殴ってくれんなよと言わんばかりに「兄ちゃん頼んまっせ。頭叩かんといてや。わしの髪、見てみ。えらい薄なってもうてるんやから」と薄毛という自虐ネタを交えながら、緊張感を笑いに変えた。

では、東京の運転手はどうだったか。たまたま、割とよく喋る運転手だった。「あ、テレビの人?最近事件起きましたよね。まあ気持ち解んなくないんだけど。いやあ自分も昔ちょっと舞台役者目指したことあって…」と運転手がかつて志したという芸能界での武勇伝を語り出した。

運転手の特徴は十人十色だが、これまで出会ってきた東西の運転手を思い返してみると、そういえば東京の運転手は本人の過去や思想を語りたがる人が多い。

大阪の運転手の会話は基本的に軽い。たとえば最近の阪神タイガース事情、新しいドーナツ屋、何かの雑誌で読んだというやしきたかじん最新の容態。他にも「最近バルっちゅうもんが増えて若い姉ちゃんがようさん乗るようになった」という天満情報、「やっぱりアノ界隈ちょっと怖いからあんまり通らんようにしてるんやわ」という裏情報、「昨日の客なんかそこ(後部座席)で始めてもうて、頼むから汚さんといてぇ~て祈りながら走っとったわ」というタイムリーな下ネタなどを喋って来た。

一方東京はというと、大阪と比べて話しかけてくる運転手が極端に少ない印象はあるものの、前述の元舞台役者のように、某区で雀荘とパチンコ店をやっていたが景気悪化で運転手になった話、「いい歳になって花粉症になって仕事にならず都会のコンクリートに散らばった粉にやられるなんて悲しい」話、「サッカー日本代表の親善試合の裏で政府はその国に対して…」という持論を展開する話などが目立つ。

窓の外の街の話や今日のプロ野球ニュースくらいの緩い話でいいものを、東京の運転手の会話は重かったり深かったりするのだ。ちょっとしんどい。

大阪の運転手の多くは予め話のネタを用意している様子はない。それに比べて東京のタクシー運転手はいわば台本通り。ネタを繰り過ぎている。組み立てられた鉄板ネタは饒舌でも逆にアドリブが弱く、その都度「なんでやねん」と軽く頭をはたいていたら捕まっていただろう。

あと極端に大阪人を嫌う年配の運転手も稀に現れるが、きっと大阪弁の客で嫌なことがあったのだろう。そのときは「大阪人だからって嫌な奴ばっかりじゃないんだな」と思わせたい一心で過剰に謙虚さを見せるせいか疲れる。

とまあそんなことを考えていたら、あっという間に目的地。「酔っぱらっていたので憶えていない」が通用するのは、運転手と交わした会話だけだ。

鹿タカシ
しかたかし ライター。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を学んだ後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。
現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京人(主に上京してきた人)について研究。

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