東京で伝わらない言葉 ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2013年11月6日 17時30分

大阪・大阪天満宮

大阪で普段何気なく遣ってきた言葉が東京で伝わらなかったときに感じる切なさは、上京して10年ほどになるが今もたまに訪れる。

大阪で生まれ育ち、大阪弁が抜けていないコテコテの私は、東京にある、大阪人に対して免疫がない職場で働いている。しかも「大阪めっちゃ好きでんねん」気質の面倒臭いコテコテ大阪人上司が居るせいで、大阪にアンチな社員が多い。そのため、周りの空気を読んで大阪感を若干薄めなければならない。

そんな環境でやってしまった。後輩K君に「押しピン取って」と頼んだ日だ。

K「は?」
私「いや、だから押しピン取って。」
K「なんですか?」
私「いま手ェ離されへんから押しピン取って、って言うてるんやないかい!」

なにかがおかしい。
K「押し、ピン?なんですかそれ?」

私は“押しピン”が大阪弁だということを全く知らなかった。“画鋲”は別名もしくはどこかの会社が作った商品名だと思っていた。そのせいか“画鋲”の響きだとブスッと突き刺した実感がしない大阪人は私だけではないはずだ。

状況は巨大な紙を両手で広げた、傍から見れば人間凧。

緊急事態だ。伝わらんのやったら違う言い方に変えなアカン、とは思っても「画鋲」なぞ咄嗟に出てこない。

「ほら、あのアレや。あの、刺すやつ。」一気に日本語を知らないアホに成り下がってしまったのだ。

後輩Kはその後わざわざ私のデスクまで来て「大阪人の言い方なんですね(失笑)」とこぼして行きやがった。

その後“さし”も公用語だと思っていた私は「さし取って」とお願いしたときに周囲を混乱させたことがある。「定規」なんて呼ぶの、真面目腐ったヤツだけだと思っていた。

東京で暮らしている以上、一瞬では伝わらないであろう言葉には、気をつけて生活しているつもりだ。

“ワイシャツ”のことを“カッターシャツ”と呼びたいが呼ばない。
“ものもらい”より“目ばちこ”のほうが病名っぽいが呼ばない。
“煮抜き”“プラッチック”は呼んだことがないので心配いらない。

そんなふうに毎日注意していても、ふとした会話のなかには伝わらない言葉がまだまだ混ざっている。

「道路まっすぐ行ったらモータープール見えてくるからそこ直進して右やで」と電話で自宅を案内していたとき、どこか話が噛み合わなかった。相手の東京人は「へぇ~、いいなぁ」を連呼しさらには「室内?」「区営?」と聞いてくるのだ。

後で知ったが駐車場のことを当たり前のようにモータープールと呼ぶのは大阪人らしい。プールと勘違いしてあやうく水着を持って来るところだったと言う相手に悶々としてしまったしプールの近くに住みたいと思ったが、“パーキング”なんて、なんか恥ずかしくて言えない。

他にも、上京間もなく知り合った女性が大学生だというもんだから「ジブン、何回生?」と聞いた直後、頭上に飛び出たウルトラクイズ級の?マークが忘れられない。

また違う東京人だったがダイニングチェアの背もたれにかけたタオルを指差して「ほかしといて」と伝えた1分後、キッチンから「チーン」の音。“ほかす”とは大阪で“捨てる”ことを意味するのだが、東京ではレンジでチンしたほかほかタオルが出てくるらしい。

かと思えば「ほっといて」とお願いすると、捨てておいてほしいゴミがずーっと置きっぱなしだったりもする。東京で人に捨ててほしいときは「捨てて」と言わければならず、頭の中で「ほる」から「捨てる」に変換しなければならない大阪人の苦悩は東京人にはわかるまい。

こういったトラブルは食にまつわる会話にも出てくる。なかでも、食の2大伝わらない大阪弁は“すうどん”と“フレッシュ”だろう。「脂っこいもんいらんからすうどんがいい」と言うと、酢をぶっかけられそうになったことなど何度もあるし、コーヒーに入れる白い液体のことを“フレッシュ”と呼んでも誰もまろやかにしてくれない。

ちなみに大阪の、とりわけ天神橋筋商店街辺りのディープな茶店なんかで「ミルク有り」と頼むとカフェオレが出てくる可能性があるがオーダーミスではないのでご注意を。

鹿タカシ
しかたかし ライター。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を学んだ後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。
現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京人(主に上京してきた人)について研究。

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