リアル・マイケルジャクソン [Vol.68]_2000年inモナコ_マイケルのスイートヘ! ~おっかけOL3人組とマイケルの交流実話~
インフォシーク / 2014年1月9日 17時30分
リハーサルから戻ってくるマイケルを、わたしたちはホテルの裏口で待つことにした。そこはすでに、バンから降りるマイケルを一目みようと大勢のファンが集まっている!興奮でやや殺気立った空気の中、わたしたちがファンの列に加わると、隣にいたヨーロピアンガールがすかさずこう叫んた。
「ちょっと!ファンじゃない人はどいて!」
「そこに立たれたらマイケルが見えないじゃない!」
…はい?ファンじゃない人って、わたしたちのこと?マイケルのTシャツを着た2人組の女の子が、真剣そのものの表情でわたしたちに抗議している。どうやら彼女たちは、サンダルにスカートというリゾート仕様のわたしたちをみて、単なる観光客だと判断したようだった。興味本位のやじ馬にベストポジションを取られてたまるか!といったところか。
一瞬、「いや、わたしたちはファンだし!」と言い返そうかと思ったものの、少し考えてわたしたちはその場を離れることにした。ここはすでに人が溢れすぎて、どちらにしてもマイケルの姿はほとんど見えないに違いない。10代の女の子と大人げなく争ってまでキープする場所ではないのだ。
そんなわけでわたしたちは、そのままホテルの周囲をぐるりとまわり、馴染みのファンと雑談をし、しばらくしてからホテルのロビーへと向かった。マイケルは、もうホテルに到着しているころだろう。
マイケルの宿泊先である「ホテルド・パリ」の警備は厳しく、ロビーにいるのは宿泊しているファンと、一部、ちゃっかり潜り込んだファンのみだ。外の喧騒とはうって変わり、ゆるやかな時間が流れるロビーのソファに座り、一息つく。煌びやかで重厚感のある内装。美しい調度品。洗練された身のこなしのホテルスタッフ。そんな中、スペイン、オランダ、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス…と、お馴染みのファンの姿がみえる。ロビー横のラウンジでは、マイケルを部屋に送り届けたあと、ウェインとスキッパーが休憩しているようだった。
そして、ふいにわたしたちは気がついた。いまここにいるのは、百戦錬磨のヨーロピアンファンだ!彼らがただ黙って座っているわけがない。よくよく見ると、おのおのが「この絵を渡したい」「特別なプレゼントをつくってきた」「ファンクラブのメッセージをマイケルに!」と、ウェインに交渉しているではないか。
絵を渡したい!とアピールしていた女性が、ウェインのOKでマイケルの部屋へと向かう。彼女は天にも昇らんばかりの表情だ!(ひえー、ホントに部屋で会えちゃうの!?)入れ違いにマイケルの部屋から戻ってきたイギリス人ファンの男の子が、真っ直ぐわたしたちの元にやってきて、「君たちはもうマイケルに会った?」と聞いてくる。いや、まだです!ていうか、こういうときに限って運がなかったりするのだ。
わたしたちがマイケルに何度も会えるのは、ウェインのおかげだと思っている人が多い。(たぶん)でも実際は、「トゥモロウ!」と言われたきり、明日は延々やってこない、というパターンのほうがずっと多いのだ。日本人が御しやすいのか、それともわたしたちが空気を読みすぎるのか。今回のわたしたちは、気合を入れた製作物も持っていないし、もちろんファンクラブでもない。あっさり「君たちはまた今度!」と言われるのではないかと、嫌な予感がしていた。なんといっても、ここは「アウェイ」だ!
そんなわたしたちを見て、イギリス人の彼は断言した。「君たちはマイケルに会えるよ!早くウェインとスキッパーのところに行って!」それが当然!といった彼の言葉に後押しされ、わたしたちはラウンジに向かった。もしも断られたら、もしも「また今度」と言われたら、もうマイケルを追いかけるのを止めよう。特別なプレゼントやファンクラブといった大義名分がなければ会えないのなら、これ以上やっても意味がない。わたしたちが求めているものは、決して返ってこないということだから。
決死の覚悟?で臨んだわたしたちに、返ってきた答えは、あっさり「オフコース!」の一言だった。スキッパーがマイケルの部屋で待機するアティーラに連絡を入れ、わたしたちがこのあと向かうことをマイケルに伝えてくれる。
「さあ、行こう!」スキッパーが立ち上がり、慌ててわたしたちはそのあとに従った。
「スキッパー!」「マイケルに渡したいものがあるんだ!」すかさず数人のファンがスキッパーの元に駆け寄る。片手をあげてそれを制しながら、「フゥー」と大きなため息をつくスキッパー。1年ぶりに会う彼は、なんだか疲れてぐっと老け込んだように見えた。初めて会ったころの、溌剌とした笑顔のスキッパーとは別人のようだ。いろんな意味で、この仕事が天職のようなウェインとは違い、きっとスキッパーは、もっと普通で、もっと素朴な人なのだ。「マイケルの側近」という仕事が、どれほど消耗するものなのかということを、わたしたちはスキッパーの様子をみて理解した。
ホテルド・パリの長い廊下を歩きながら、わたしたちは、これから久々にマイケルに会うのだという実感が急にわいてきた。なにも期待せずにやってきたモナコで、まさか、スイートルームでのご対面が待っているとは!
廊下の先にエレベーターホールがあり、そこにドイツ人のビジネス関係者ディーターとともに、ドイツ人のファングループが立っていた。彼らはディーターの計らいでマイケルに会わせてもらうようだ。やがて到着したエレベーターに、わたしたちは、雲の上を歩くような足取りで乗り込んだ!
【バックナンバー】リアル・マイケルジャクソン ~おっかけOL3人組とマイケルの交流実話
コピーライター。87年来日時にマイケルのファンとなり、OL時代、同じくOLの友人とともに世界中を追いかける。96年HISTORY TOURを機に、3人は「D-PARTY」(ファミリーの意)と呼ばれ、世界各地でマイケルに会えるようになる。追悼式から3年を経て当時のエピソードを公開。
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