キャバクラとラーメン屋だらけになった下北沢 ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2014年1月22日 17時30分

東京・下北沢

観光地で見つけた饅頭と近所のスーパーで値落ちした饅頭。温泉街で黒光りしている温泉玉子と100円均一の温泉玉子。どちらがおいしいかは一概に決められないが、どちらも前者には風情がある。土着のソウルがもつ魅力。東京・下北沢には近いものを感じる。

私はそんな下北沢が好きで、住民でもないクセによく食事をする。一人のときはだいたい『ローンスラータイ1950's』でタイ料理の後『いーはとーぼ』でコーヒーか『ドレスルーム』でカクテルを飲む。少人数が集えば『にしんば』や『ととしぐれ』で焼酎を飲む。大人数になれば『新台北』や『十七番地』でドンチャン飲む。

これらの店ではないが「下北沢じゃない場所で食べていたらこの味は。」と思う店もたまにはある。だが、それこそが風情。美味しさだけで満たされる欲求は薄い。感動とか体験が大事だ。観光地の饅頭に旨さを求めはしないし、温泉街の居酒屋は雑さも魅力になる。下北沢はそれと似たような魅力が当てはまる。

賑やかな街並みで貫く独自性、寄らば大樹の陰なんてクソくらえな客。下北沢に漂うこのにおい、どこかで嗅いだことがある。そう。どことなく大阪に近い気がする。街中を歩き店に入り酒を飲むと、アメリカ村や天満駅界隈などで根付いたあの店々を思い出す。高円寺や荻窪も素敵な街だが、どことなく東京っぽさを感じるせいか、なかなか足を踏み入れづらい。しかし下北沢はどことなく門戸が広い。それを東京人は世田谷区特有の地方出身者受け入れ所と言うらしいが、なにが悪い。閉塞感のない場所のほうがいいに決まっているじゃないか。

下北沢はどこかのテーブルから大阪弁が聞こえてくることも少なくない。それに、大阪から友人が遊びに来た際に下北沢で飲むとだいたい雰囲気を好んで帰っていくことから、大阪人は下北沢にフィットしやすいのだと思う。

だが、東京人の、とりわけ30代以上の多くは冷ややかで敬遠気味だ。私が20代だった頃、同年代の東京人に下北沢で飲んでいることを話すと「今度連れてって!」と興味を示された。だが、齢30を越えて先日もなお同年代に同じ気持ちで話すと「まだシモキタで?」と笑われた。大学生が新入生歓迎会で群れる4月頃のイメージが強いせいか普段から若者の街だと思い込んでいる様子。センチでピュアでちょっとヌルッとしている雰囲気が、歳を重ねて受け付けなくなったという。下北沢特有の文化を楽しめないなんて年寄り臭くて情けないぜ。

だが、「まだシモキタで?」と笑った東京人は知らないと思うが、下北沢はここ数年で様変わりしている。駅から伸びる商店街や周辺でごちゃごちゃと隣接していた飲食店や衣料品店やカメラ屋はコテンパン。生き馬の目を抜く勢いでキャバクラ、カラオケ、大手飲食チェーンが並んだ。中年が来ても楽しめる店を作るのは大事だからキャバクラやカラオケは相応しいのだが、下北沢でネオンギンギンの看板やトランスミュージックが似合うかどうかは考えずともわかる。

いくつか新しい飲食店も誕生している。といっても、ラーメン屋が目立つ。街に溶け込んでいるようにも見えるが、オリジナリティがあるならまだしも時流に乗ったラーメン屋が軒を連ねていたりなんかすると、またしても、らしさを失った象徴に映る。各地からラーメン好きを呼んで食べ歩かせたいのだろうか。インスパイア系だ背脂ちゃっちゃだ天空落とし(閉店)だと、ファッション系ラーメン屋を地元民は求めていたのだろうか。30代以上の東京人から「まだシモキタで飲んでるの?」と馬鹿にされる。だが下北沢は数年前の面影が薄まっている。シモキタ大好きな大阪人は踏んだり蹴ったりだ。

この前東京の女性から「あらかじめ決められた恋人たちへ(名前からして下北沢っぽいバンド)のライブ、次どこで演るの?」と聞かれた。会場は下北沢シェルターだった。だとしたらライブが終わった後は素敵な音楽が流れる店へ誘おうなどと鼻息を荒げて考えていたのだが、「シモキタ?シモキタかあ。そっかあ。じゃあいいや」とバッサリ。フられた気分だった。その夜下北沢に吹いた風はどの女よりも優しかった。焼き鶏の匂いがした。

鹿タカシ
しかたかし ライター。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を学んだ後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。
現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京人(主に上京してきた人)について研究。

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