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ナイトスクープ・ポン酢・たかじん ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2014年1月29日 17時30分

大阪・十三

いずれも大阪人の五感を育てた存在だ。

地元で親しんだ良い意味で「なんでもないもの」こそ、東京暮らしが長いほど偉大さに気づく。思えば大阪へ戻った際、溜まった想いを爆発させている気がする。

『探偵!ナイトスクープ』で最近面白かった依頼を知ることはその一つ。関西が誇る大人気深夜番組。だが東京ではチェックしづらい日曜夕方の放送。「東京で住み出したらナイトスクープ観られへんなるやん」と誰もが一度は悩む重要な存在だ。

そんな大阪人の心のチャンネルは毎年年末にスペシャル番組を放送している。当然関西ローカルだ。「あんな長ったらしいナイトスクープ誰が観んねん。最近桂小枝辞めたし」と地元民は言うが、ふるさとは遠きにありて思ふもの。大阪を離れた大阪人にとって故郷を懐かしむ有難い固め打ちなのだ。

続いてはポン酢。たこ焼きやお好み焼きに圧されてあまり知られていないが、大阪人のポン酢狂いは尋常でない。瓶の上澄みが柑橘系の塊になっている、濃くて高価なポン酢を好むのは、てっちりや水炊きが鍋のスタンダードだと思い育ってきた証。今の季節だとたとえ鍋の具材が優れていてもポン酢がまずいだけで、幻滅する。

甘さ・酸っぱさ・濃さの伴ったポン酢を東京人に飲ませたい。ところが東京じゃ品揃え豊富な店はなかなか出会えない。

実家へ帰り冷蔵庫を開ける。気がつけばポン酢のチェックをしている。ついでにだばだばと染み込ませてやる食材を選ぶ。そしてシャンパンファイトの如く絹ごし豆腐やカニカマなどに惜しげなくぶちまけ、関西方面に帰ってきたことを祝う(我が実家の冷蔵庫の場合『板前 手造りポン酢』がストックを含め数本並んでいる。まるでロンドンのパブか弾倉のようです)。

大阪に帰って大阪を思い出すもの。最後に紹介したいのは、関西随一のエンターテイナー、やしきたかじんだ。東京嫌いで有名なたかじん。東京にネットされるテレビ番組はなく、帰省時しか観ることが出来ない貴重な時間だった。

たかじんの名がついた番組でありながら病気療養に入り本人不在になったのは最近ではない。番組や氏と関わりのある芸能人が代打MCに立っていた姿はここ数年で板に付いていた。昨年末実家のテレビに映っていたたかじんの番組には、関西で有名な女性芸能人が真ん中にいた。「性別・世代が同じ人には重荷なんやろな」との冷静なコメントは私のオカンだが、大阪のどこからでも判官贔屓が聞こえていた。

最近は追悼番組を放送しているらしい。お世話になったという出演者、テレビの前の視聴者、そして生前明け暮れた北新地界隈が涙に暮れていると地元の友人から聞いた。

ナイトスクープ・ポン酢・たかじん。大阪人の五感を育てた貴重な存在が、東京では不足している。

ナイトスクープを知らない東京人に録画した放送を見せてもだいたいはリアクションが薄い。東京にある某鍋店のポン酢が薄く、耐え切れず箸を付ける度にポン酢とかぼす果汁を継ぎ足していたら「調味料馬鹿」と揶揄された。そしてやしきたかじんに対する扱いは雑だった。「やしきたかじん死亡」の速報が流れた直後、何の思い入れもないはずの東京人が「ご冥福をお祈りします」とつぶやいていた。「東京人には言われたないんじゃボケが!」と頭に血が上った。「た↑かじん、死んじゃったんだって?」と大阪人にはタイムリーな話題だと思ったのか助平な東京人が聞いてきた。辟易だ。

「“た↑かじん”ちゃう。“たかじ↑ん”や」と普段ならどうでもいいイントネーションばかり気になり血が上った。血が上る度に顔が浮かんだ。たかじんは大阪人それぞれの心で生き続ける。

鹿タカシ
しかたかし ライター。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を学んだ後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。
現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京人(主に上京してきた人)について研究。

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