仮面ライダー鎧武は、青春なのである!
インフォシーク / 2014年4月22日 17時30分
我が家の近所には小さな川が流れている。その向こう岸を少し歩いたところに、共学の高校がある。生徒は駅から、川沿いを歩き、または自転車に乗り、高校に通っている。
すると、高校生カップルなんかも歩いている。これがやけに眩しい。小さな川と草木と青空と制服カップル。ま、眩しすぎる! 奴らは学校帰りなんか、わざと遠回りなんかして歩いているのだ! いいな、いいな。そこにはもう、私には帰ってこない青春があるのだ。悔しい。悔しくて、カップルに何か投げたくなる。そのへんの犬のウンコとか。
私は奴らの歩く姿を見るたびに、
「あのカップルは、どっちが好きになって、どう告白して、どんなカップルになったのかなぁ…」
なんてゲスなことまで想像する。いやいや、ホント、ゲスである! 大きなお世話なのである!
しかし、おっさん(私)は男子校出身なので、やっぱりそのあたりの世界に憧れるのだ。廊下に呼んじゃったり、屋上に呼んじゃったりするのかしら、突然手紙を渡したのかしら、お節介女が間を取り持ったのだろうか。ちくしょう。
若者の恋愛には、酒を飲んで記憶をなくして、いつの間にか…というような下心的夜の男女的くっつき方なんてのはおそらく無いわけで、彼らの告白やキッカケというのは、なんだか美しくて、どこか輝いているのだ。そして、二度と戻ってこないであろう一大イベントなのである。
そういう視点で、こんなくっつき方もひとつの理想だろうなぁ…なんてシーンが、突然だが、仮面ライダー鎧武第26話(4月20日放映)にあった。
鎧武は、友人を殺してしまった。と、いきなり重たい状況なのだ。友人が、ある事情で人間でなく怪人になってしまったのだ。鎧武は怪人を、友人と知らず、やっつけてしまった。
鎧武はそのことを、仲間であるヒロインに告白する。
「オレが…オレの手で…」
鎧武は、ヒロインから罵られると思ったはずである。二度と会えなくなるかもしれない、と思ったかもしれない。しかし、ヒロインはこう言ったのだ。
「…つらかったんだね」
えっ…、と振り向く鎧武。ロマンチックな音楽、イン!
ヒロイン、ゆっくりと鎧武に歩み寄る…。
「そんな大変なこと、ひとりで背負ってたんだ…」
ヒロイン…鎧武を…抱きしめる!
「もう、背負わせたりしないから…ひとりで…ひとりで苦しまなくていいから」
いいなぁ! いいな、いいな、いいな! なのである。
もう40歳を越えた私には、こんなシーンはおとずれない! 例えば、酒飲んで終電逃してフラフラのときに、美女が現れて、
「つらかったんだね…ひとりで…ひとりで苦しまなくていいから」
無いのである。例えば、もうすぐクライアント先に行かなきゃいけないのに、腹の具合が悪くてトイレから出られない! そこへ美女が現れて、
「…ひとりで…ひとりで苦しまなくていいから」
…無いのである!
昔の仮面ライダーは怪奇的であったように思うが、昨今の仮面ライダーは青春物語である。特に仮面ライダー鎧武は、自分のやりたいことって何だろう、なんて問いたり、迷ったり、喜んだり、三角関係や意外な恋愛関係になりそうな男女関係がある。そんなストーリーの根底には、大人や社会ならではの裏切りがあり、正義を問う姿がある。ドラマとして、なかなか巧妙だ。
と、仮面ライダー鎧武の描く青春に思いを巡らせながら、なんとなく主演の佐野岳くんを調べて驚いた。な、なんと、私の高校の後輩であったのだ! 彼と私は同じ青春の場所に立っていたのだ! 大きな縁を感じた! とはいえ、彼が高校生のときはもう男子校から共学になっていたはずなので、彼は私と違って川原で歩くような青春を過ごしたのかもしれない。ちくしょう。
まぁ、しかし、仮面ライダー鎧武はそんな青春はちきれる彼らが演じているから、より面白い。これからも応援したいと思う。がんばれ、仮面ライダー鎧武、がんばれ、後輩の佐野岳くん! いつか会えたら、うれしいものだ。
いや、ホント、青春っていいよな。悔しくて、ウンコ投げたくなる。
※来週で、ざっと2年間続いた超人気連載「仮面ライダー徒然草」(書き手:ガッケンター)は、とうとう最終回です
1973年1月生まれ。芸術家。ライター。MC。芸術活動のかたわら、仲間と協力してゆるゆる映画応援サイト「ガッケンターサイト」、フリーペーパー「ガッケンターニュース」、映画監督や俳優もゲスト出演する「ガッケンターTV」(インターネット)を展開。
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