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「犠牲と代償」をVRで味わう奇跡! 『ソルサク』の魂を感じる『ソウル・コヴェナント』は、まさに“これを味わいたかった”の連続

インサイド / 2024年6月3日 12時10分

『モンスターハンター』の大ヒットがきっかけで、「ハンティングアクション」や「共闘ゲーム」と呼ばれるゲームが一気に盛り上がり、一大ブームとなりました。


このカテゴリーから様々な作品が飛び出し、多彩なハンティングアクションが広がっていきます。そうしたタイトルの中で、特に異彩を放っていたゲームのひとつが、『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』です。


このジャンルと携帯型ゲーム機の相性はかなり良好で、『モンハン』ブームを後押ししたPSPやその後継機であるPS Vitaでは、各社が競うように共闘ゲームを出していた時期があります。そして『ソウル・サクリファイス』(以下、ソルサク)は、PS Vitaを代表する共闘ゲームのひとつと言っても過言ではないほど、非常に個性的な良作でした。


■ほの暗い「犠牲と代償」の奥に、人間の絶望と希望を感じた『ソウル・サクリファイス』


『ソルサク』は、魔法を駆使して戦う「魔法使い」となり、巨大な魔物と対峙する共闘型のアクションゲーム。一般的なゲームの魔法使いは、仲間に守られながら強力な呪文を唱える後衛職という立場がほとんどですが、本作の場合はその在り方からして大きく異なります。


回避やダッシュを駆使し、敵と肉薄するスピーディな立ち回りの中で、魔法を発動させて魔物を駆逐する。そんな本作の「魔法使い」は、多くのプレイヤーにとって新鮮で、そして刺激的なプレイ感を与えてくれました。


また『ソルサク』は、ゲーム性と密接に絡み合う設定も素晴らしく、ダークファンタジーな世界観がプレイヤーの没入を大いに手助けします。特に、魔法を使い続けると異形化して魔物と化してしまう設定は、「魔法使い」という存在の皮肉さや、その矛盾を抱えながらも魔法を行使して魔物に立ち向かう意志など、人間の業や本性を浮き彫りにする巧みな設定でした。


大事なものを守るために戦う。そんな人間らしい理由で魔法を使うほど、人間でなくなっていく──そんな「犠牲と代償」を体現するこのゲームは、元々は人間であった魔物側の背景も深く作り込まれています。


ダーク系の世界観なので“合う・合わない”がはっきり分かれますが、共闘ゲームながらひとりで遊んで十分楽しめるほど物語性が高く、ツボにハマれば替えが利かない唯一無二の作品として、マルチプレイ派・ソロプレイ派ともに『ソルサク』を高く評価しました。


そうした反響を受け、限りなく続編に近いくらい新要素を盛り込み、バランス調整を施した『SOUL SACRIFICE DELTA(ソウル・サクリファイス デルタ)』(以下、デルタ)が後に登場し、こちらも好評を博しています。


後発の『デルタ』も含め、非常に高いプレイ満足度を提供した『ソルサク』ですが、残念ながら『デルタ』以降の展開はなく、シリーズの新作が登場する未来はありませんでした。


そんな『ソルサク』の展開から、早くも約10年の年月が過ぎた2024年。今もまだ『ソルサク』の新作はないものの、岡村光氏や下川輝宏氏などの『ソルサク』開発陣が作り上げた『SOUL COVENANT(ソウル・コヴェナント)』が、PSVR2/Steam/Meta Quest 3|2に向けてリリースされたのです。





■『ソウル・コヴェナント』が、『ソルサク』で“シビれた気持ち”をもう一度震えさせる


本作は、『ソルサク』開発陣による完全新作のVRアクションゲーム。そのため、『ソルサク』の直接的な続編ではありません。また世界観もファンタジーをベースとした『ソルサク』とは異なり、こちらは荒廃した近未来が舞台です。


世界観もプレイ体験も異なる『ソウル・コヴェナント』ですが、その根底に潜む本質や、容赦なく踏み込んでくる物語からは、そこはかとなく『ソルサク』に通じる鋭角さを感じました。


果たして『ソルサク』開発陣は、どんな完全新作を作り上げたのか。ここからは、筆者が実際にプレイして味わった『ソウル・コヴェナント』の衝撃と刺激をお伝えします。


■最序盤の設定だけでも濃厚すぎる!


本作の世界観は、ポストアポカリプスな近未来。世界は人工知能「アダム」による機械政府に支配されており、統治という名の人類虐殺が行われています。


この「アダム」の目的は、人類を根絶やしにすること……ではなく、「真の世界平和に導くこと」を目的としています。ただし、その目的を「圧倒的な恐怖」で実現しようと行動しており、その意にそぐわぬ人類を虐殺しているのです。虐殺は目的ではなくただの手段に過ぎず、だからこそ容赦がありません。


無論、“恐怖による支配”が生み出す平和に頷けるわけもなく、生き残った人々は敢然と抵抗を示し、人類最後の砦「東京アーク」に集結。そして、機械兵団に対抗すべく、強化人間部隊「アヴァタール」を組織しました。


……と、最序盤の設定だけで、これだけの濃さを放っています。人工知能による機械政府の支配、平和のための虐殺、多くの屍を超えて抵抗する人類、最後の砦を守る強化人間。いずれも『ソルサク』とは全く違う世界ですが、その過酷さ、そして絶望の切り口など、どこか通じるものを勝手に感じとってしまいます。


■“死を見届ける追体験”を繰り返す先にあるものとは……


主人公の立場も、単なる一兵士に留まりません。プレイヤーは、「アヴァター」と呼ばれるクローン体として目覚めますが、この身体は「輪廻プログラム」と呼ばれる特別なプロジェクトの被検体です。


「輪廻プログラム」の目的は、ある死者の記憶を移植し、その追体験を繰り返すことで「メシアの復活」を成し遂げるというもの。これが、人類にとっての切り札となります。その器が自分の身体であり、“誰かの死を見届ける追体験”をプレイヤーは幾度も味わうことになるのです。


しかも追体験にあたっては、「記憶の移植によるコンフリクトを防ぐため、今の人格は残せません」と、かなり非道な事実を突きつけられます。あくまでゲームの設定とはいえ、臨場感が桁違いのVRなので、得体の知れない恐ろしさや不快感もじんわりと覚えます。


「未来の一部となる全ての死に感謝を」と言われて戦場に送り出される時、それは決して“戦死”だけを意味する言葉ではないのだろう……と考えてしまい、やるせない気持ちが湧き上がります。


ですが、そこまでの犠牲を厭わないほど追い込まれているのが、この世界の人類なのです。


■「骨は、拾ってやる」と約束を交わす兵士たちの、願いと真意


「骨は、拾ってやる」


『ソウル・コヴェナント』をプレイすると、この台詞を幾度も耳にします。本作を象徴する言葉といっても過言ではありません。


「戦争モノの映画や漫画など、どこでも見かけるありふれた台詞では?」と感じる人もいることでしょう。確かに筆者も、本作をプレイする以前から、よく見知っています。ですが、その上でなお、本作を象徴する台詞という認識は揺らぎません。


最初の追体験でプレイヤーが味わうのは、戦死した女性隊長の部下としての記憶です。その隊長・ユリアは、ミスした部下(=追体験上の自分)を庇って、首から上を失ったとのこと。強化人間といってもその状態で生きられるわけはなく、一般的な意味で彼女は「死亡」しています。しかし人間的な死は、本作における“絶対の終わり”とイコールではなく、別の形で再び戦場に舞い戻ります


本作でプレイヤーが手にするのは、対機械兵団専用武器「スケイプゴート」。これは、死んだ仲間の“強化脊椎”を元に造られており、死してなお、その身体は誰かに握られる「武器」として、機械兵団との戦いに駆り出されるのです。


死んだ仲間は、しかしその手の中で生きていて、自分と戦っている……その“事実”が背中を力強く押し、“まだ生きている”という傲慢な希望にすがることで折れそうな心を支えます。


あらかじめ遺言を残していたユリアは、プレイヤーに語りかけます。「仲間の死に喪失感を覚えたなら、それを力に変えなさい」「悲しんでいる時間は人類に残されていない。喪失感を復讐心に、絶望を力に──」と。


誰かの死が、残された誰かを強くする。死すらも織り込む残酷な希望が、この世界の人類に残された唯一の対抗手段なのです。


死してなお、人類を守り戦うために、その身体は武器となる。だから兵士たちは皆、「骨は、拾ってやる」と口にするのです。お前の死は、志し半ばで終わるものではないのだと告げるように。





■あの時も味わった「犠牲と代償」を、今VRで体感できる奇跡


『ソウル・コヴェナント』がどれだけ“濃い”のか、その一部だけでも伝わったでしょうか。あまり踏み込み過ぎるとネタバレが増えてしまい、プレイする楽しみを奪ってしまうため、今回はこの辺りで一端留めておきます。濃密な展開はこの先も終盤まで続くので、どうぞお楽しみに。


また、本記事の主旨から外れるため、ゲーム面にはほとんど言及しなかったものの、VRアクションゲームとしてもかなり優れた作品でした。心地よい操作感に裏付けられた、VRならではの「自分が直接戦っている感覚」が実に楽しく、世界観への没入感も相まって、武器を振るう腕にも自然と力が入るほどです。


ゲームシステムも一通り揃っており、素早い移動に正面の攻撃を防ぐ「シールド」、「スケイプゴート」の変形機構、武器を手放せば体力の自動回復、必殺技ともいえる「デモニックバースト」などを駆使し、強大な敵と戦うのはやはり刺激的です。


「アヴァター」や「スケイプゴート」の強化も可能なので、戦うたびに強くなる実感を得られるのも嬉しいポイント。もちろん敵も強くなるので、終盤に向かうほど手こずりますが、強化が打倒の光明となるでしょう。


ちなみに2人目の追体験では、心を殺して生きる「自分」に声をかけ、馴れ馴れしく距離を詰めてくる「エイト」と共に機械兵団と戦いながら……ふたつ目のスケイプゴート「エイト」を手にする物語が描かれます。その入手の経緯は語るまでもなく、ご想像の通りです。仲間はいつまでも、プレイヤーの助けとなります。その手の中で。


人類の絶望と希望を詰め込み、そして業と価値を問いながら、理不尽な世界で足掻く人々を克明に浮かび上がらせる『ソウル・コヴェナント』。世界観や表現、ゲーム性などは異なっていても、そこに刻まれる「犠牲と代償」には、『ソルサク』の魂を感じざるを得ません。


ひとりの『ソルサク』ファンとして、「まさに、これが見たかった!」と幾度呟いたことか。あくまで個人の実感に過ぎませんが──10年前に味わった衝撃と驚きが、ここにありました。


プレイにはVR機器が必須なので、まだ未所持だとかかる費用もバカにできません。そのため手軽にはお勧めできませんが、いつかVR機器を手に入れた時に備え、「骨」ならぬこのレビューを拾い、ぜひ覚えておいてください。潰えた命の数だけ物語がある、『ソウル・コヴェナント』というゲームを




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