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『ファミコン世界大会』は“単なるミニゲーム集”じゃない! ストイックな競技性と「失敗」のない世界が、時間を無限に溶かす【プレイレポ】

インサイド / 2024年7月23日 12時0分

ファミコンブームが巻き起こった当時、ファミコンソフトを使った大会が幾度も行われました。企業が主体で行う大規模な催しや店舗主体もありましたし、友達同士が集まって競い合うのもミニマムな大会といえます。また1990年には、任天堂による公式ゲーム大会「Nintendo World Championships」が北米地域で行われた模様です。


この大会名をタイトルに冠した『Nintendo World Championships ファミコン世界大会』(以下、ファミコン世界大会)が、2024年7月18日に登場。本作は、当時盛り上がったファミコンゲームの一場面を切り取り、特定のお題をいかに早くクリアするかを目指すゲームです。


ニンテンドースイッチで遊べるファミコンソフトはいくつもありますが、本作では通して遊ぶのではなく、いわばミニゲーム形式でタイムアタックに挑むというもの。そのため、『メイド イン ワリオ』シリーズや『ファミコンリミックス』に近い印象を抱いた人もいることでしょう。


ですが、この『ファミコン世界大会』は、前述の作品と似ているようで全く異なります。その違いとは何なのか、そして本作はどんな特徴を備えているのか。実際にプレイした体験を通して、『ファミコン世界大会』の魅力に迫ります。


■シンプルゆえに奥深い『ファミコン世界大会』


『ファミコン世界大会』には、『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』といった、ファミコンを代表する13タイトルを対象に、150以上のステージが用意されています。そして、各ステージごとに設定されたお題をいかに早くクリアするか。それが、本作における唯一にして最大の目的になります。


最初は13タイトルの1ステージ目をそれぞれ自由に選ぶことができ、プレイの結果によって「コイン」を獲得。そのコインを使って更なるステージを解放したり、プロフィールに使えるアイコンの獲得できます。


ステージの長さはお題によって異なりますが、「『スーパーマリオブラザーズ』の1-1でスーパーキノコを取る」や「『ドンキーコング』で最初のハシゴを登る」といったステージはかなり短く、ほんの数秒で目的の達成が可能です。そのため、コンマ以下のわずかな動きもタイムに大きく影響します。


一方で、『スーパーマリオブラザーズ』を1-1から初めて8-4までクリアする「最速クリア競争」となると、土管ワープを駆使してもそれなりの長尺になり、いかに長く集中できるかがタイムアタックのカギになります。


このように、お題もボリュームも様々なステージがたっぷり揃っており、その全てでタイムアタックを目指すという、非常にシンプルな『ファミコン世界大会』ですが、その奥深さは想像を超えるものがありました。





■「ファミコンゲームの一場面」に宿る競技性の高さ


本作をプレイして最初に気づかされるのは、「競技性の高さ」です。ファミコンゲームの1場面をただ切り取っただけでなく、タイムアタックという競技の舞台として、非常に質の高い場面が厳選して選ばれています。


多くのプレイヤーが最初に挑むであろう、『スーパーマリオブラザーズ』の「スーパーキノコ早取り競争」が、競技性の高さを特に感じさせてくれる名ステージと言えます。


お題は「キノコを取るだけ」ですが、ブロックを叩いて出したキノコを右で待つのか、それとも左に誘導させるのか。クリボーは倒すべきか、スルーするのか。キノコは空中でキャッチするのか、それとも上の段まで登って取りにいくのか。


わずか数秒で終わるお題の中に、キノコを取るまでの手順がいくつも枝分かれしており、プレイを通してそのひとつひとつを発見する喜びがあります。そして、最短に近づく道を見つけるトライ&エラーと、光明を見出した瞬間の手応え、その結果辿り着く「最短タイム更新」の気持ちよさが、格別の爽快感を与えてくれるのです。


繰り返しプレイする中で、それぞれのステージははまるで「このお題のために作られたのでは?」と錯覚すると、絶妙なバランスで立ちはだかります。ストレートな解法に挑む場合もあれば、Sランクを達成するには発想とひらめきが必要な状況もあり、反射神経のみが問われるわけではない点にも高い競技性を感じました。


■プレイ意欲を支える、すぐれたリプレイ性


お題となるファミコンゲームの中身だけでなく、それらを内包する『ファミコン世界大会』のシステムも優れており、そのリプレイ性の良さが繰り返しプレイに拍車をかけます。


タイムを更新できなかった場合、再プレイまでの手順が非常に短く、待ち時間はほぼなし。始まるまでのカウントダウンはありますが、そこも余分な時間とは感じません。「次のプレイではどこを修正しようか」と考えたり、スタートのタイミングに合わせて集中力を高めていったりと、むしろ必要な時間だと実感しました。


また、プレイ中にミスをしたら、クリアをせずに途中でやり直したい場合もあります。そんなプレイスタイルにも本作は対応しており、ZLとZRを同時に押すだけで仕切り直しが可能。あとは決定ボタンを押すだけで、スムーズに再チャレンジを始められます。


加えて、自機がやられたりクリア不可能な状態になったら、タイムはそのまま進むものの、そこまでのプレイを自動的に巻き戻してくれるお助け機能も備えています。


タイムが嵩むので巻き戻しにならない方がいいのは確かですが、長尺ステージの終盤にワンミスで全てが台無しになるような仕様だと、心が折れるプレイヤーも多いはず。タイムロスはあっても継続してプレイできるため、プレイ意欲を削り過ぎず、そして競技性は保つという、絶妙なバランス感覚にも唸らされました。





■ミニゲーム集と一線を画す、「失敗」のない『ファミコン世界大会』


繰り返しになりますが、『ファミコン世界大会』に収録されているゲームは全て、今から30年以上前のファミコンソフトです。厳選した場面を切り取ったとはいえ、そこに高い競技性を感じることができ、時が経っても色褪せない普遍的な面白さに改めて気づかされます。


そうした発見やクセになる競技性の濃さ、丁寧に配慮されたリプレイ性の高さの相乗効果が、『ファミコン世界大会』を遊び続けてしまう中毒性に繋がっています。


隙間時間でも楽しめる気軽さがある上に、熱中すれば同じステージを1時間ずっと遊んでしまう没頭性もあり、これほど手軽で時間泥棒なゲームはかなり稀有な存在です。


そして、もうひとつ伝えたいのが、『メイド イン ワリオ』シリーズや『ファミコンリミックス』との違いについて。本作も含め、それぞれ異なる個性を持つ作品たちですが、「ミニゲームの集合体」という視点で見ると、近いカテゴリーに思われるかもしれません。


しかし、実際にプレイした実感を通して語るなら、いわゆるミニゲーム集と『ファミコン世界大会』は全く異なると断言できます。その最も大きな違いは、本作に「失敗」はない、という点です。


ミニゲーム集の場合、「お題を達成できるかどうか」が問われます。制限時間や条件のもと、お題を達成すればクリア。逆に、達成できなければ失敗です。クリアすれば先のステージに進めますし、ゲーム内でご褒美をもらえることもあります。


一方『ファミコン世界大会』は、お題のクリア自体はさほど困難ではありません。自機がやられてもプレイ内で巻き戻るので、プレイヤーさえ諦めなければ、いずれクリアまで辿り着けます。


最速を目指すゲームなので、更新できなければ「失敗」と捉える人も多いでしょうし、それ自体は決して間違った考えではありません。しかし、『ファミコン世界大会』がプレイのたびに提示するのは、「今回のタイム」だけ。


少なくとも『ファミコン世界大会』の側から「あなたの今回のプレイは失敗でした」と提示することはありません。最速タイムを更新できなくとも、それがゲームオーバーに繋がったり、先へ進めない壁になることはなく、プレイを「失敗」と判断するゲームシステムは存在しないのです。


最速を目指してもそれが叶わなかった時、プレイヤーは「失敗」と感じるかもしれません。ですが、『ファミコン世界大会』はその時の成果を教えてくれるのみ。本作におけるプレイの成功と失敗は、プレイヤーが自由に判断していいのです。


最速を更新しても、動きに無駄があって不満足だと判断する場合もあります。最速に届かなくとも、新たな攻略を見つけたり、コインが稼げたことで、成功と感じることもあります。「失敗」と「ゲーム進行」を直接結び付けない『ファミコン世界大会』だからこそ、記録を目指すストイックな楽しさと、自分の線引きで自由に楽しめる手軽さの両立が実現したのでしょう。




この『ファミコン世界大会』では、ひとりでじっくり記録に挑む「タイムアタック」モードのほかに、毎週切り替わる5つの競技をテーマに、世界中のプレイヤーと競う「世界ランキング大会」モード(Nintendo Switch Onlineへの加入が必須)、友達や家族とオフラインで楽しむ「パーティ」モードなどもあります。


誰かと競い合えば、必然的に「勝利」と「敗北」が存在します。こうした対戦プレイになると、どのラインを「失敗」と考えるのか、人によって意見が分かれるところでしょう。


ですが、勝負に挑むチャレンジ精神に、「負け」はあっても「失敗」はないと個人的に思います。過去の自分と戦う「タイムアタック」モードと同じで、競い合う相手がライバルでも、友達でも、自分でも、勝ち負けと「失敗」はまったくの別物です。


本腰を入れれば時間があっという間に溶けていく一方、1プレイが非常に短いため、長時間ゲームを遊ぶのが難しくなった大人ゲーマーも十二分に楽しめる『ファミコン世界大会』。この夏、パリだけでなく世界中で競技熱が高まることでしょう。


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