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『メトロイド』や『ファミ探』の生みの親「坂本賀勇」とは何者なのか― 自称"ニッチ担当”クリエイター 坂本作品を振り返る

インサイド / 2024年8月16日 17時0分

先日、突如として『ファミコン探偵倶楽部』シリーズ最新作となる『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』が発表されました。『ファミコン探偵倶楽部』といえば任天堂のベテランゲームデザイナーである坂本賀勇氏が、シナリオ制作未経験でシナリオを書いたというエピソードでも有名です。


坂本賀勇氏は自身を「ニッチ路線の傾向が強いゲームデザイナー」と評しており、確かに任天堂のタイトルのなかではマイナー寄りのタイトルを手掛けていることが多い印象。けれど、氏の手掛ける作品は実際にプレイしたユーザーからの評価は高く、コアなファンが多いクリエイターでもあると思います。


任天堂ファンならば、坂本賀勇のクリエイティブを知らないのはもったいない!ということで今回は、『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』の発表を機に、坂本賀勇氏の手掛けてきた代表作を見ていこうと思います。


◆『メトロイド』シリーズ


『メトロイド』(1986)

坂本賀勇氏の作品の中でも、もっとも有名なのは『メトロイド』シリーズでしょう。といっても初代『メトロイド』に関しては、坂本氏はプロジェクトの企画段階からつきっきりで関わった人物というわけではなく、開発の後半になって合流した形。合流していた時点での『メトロイド』はほとんど未完成であり、期限に間に合わせるため、開発第一部が総力を挙げて作り上げた作品でした。


もともと坂本氏は「ゲーム&ウオッチ」作品のデザイナーなどを担当した後、ドット絵なども任されるようになりテレビゲームにも関わるようになった形。現在ではディレクターやプロデューサーとして作品に携わることの多い印象の坂本氏ですが、『メトロイド』ではデザイナーとしてクレジットされており、敵キャラクターのデザインなどを担当していました。


『スーパーメトロイド』(1994)

その次回作である『メトロイド II RETURN OF SAMUS』には坂本氏は参加していませんが、本作ラストの「サムスの目の前で生まれたメトロイドの赤ん坊が彼女を親だと思ってついてくる」という演出にインスパイアされて生まれたのが、『スーパーメトロイド』だと語っています。


『スーパーメトロイド』には、坂本氏はディレクターとして開発に深く携わっています。アクションゲームにドラマ性を持たせ、映画的演出を取り入れることを意識した作品であり、上述した『メトロイド2』の設定を元にした感動的なストーリーテリングは必見です。


『メトロイド フュージョン』(2003)

『スーパーメトロイド』は「言葉」を使わないストーリーテリングで評価された作品でしたが、続編となる『メトロイド フュージョン』ではついに言葉を使ったストーリーテリングに踏み切りました。本作のシナリオは坂本氏によるものであり、言葉を使ったからこその熱いセリフ、展開が楽しめるものになっています。サムスの感情の発露がぐっと強まったのも特徴です。


その「サムスの感情」がより強く描かれる作品となっているのが、Wiiで発売された『メトロイド Other M』。本作のシナリオも坂本氏が担当していますが、コーエーテクモゲームスのTeam NINJAによる精細なキャラクターモデルや、D-Rocketsによるゲーム内ムービーの映像表現によって、これまで以上にサムス・アランという人物を豊かに描いています。


そして、最新作『メトロイド ドレッド』でもプロデューサーとして参加していますが、本作の企画は15年以上前から坂本氏の中にあったものであり、『メトロイド サムスリターンズ』を共同開発したMercurySteamとのタッグによってようやく実現したものだと語られています。本作でも、『メトロイド フュージョン』の続きとして熱いストーリーが展開されます。


上述のような関わりかたのため、坂本氏自身は「『メトロイド』の生みの親」と呼ばれるのには抵抗があるとのこと。ですが、シリーズのアクションゲームとしての可能性や、世界観・ストーリーを広げていった人物であり、「サムスの育ての親」という自覚はあると過去のGDCの講演にて語っています。


今後も『メトロイド』シリーズでバリバリクリエイティブを発揮してほしいところですが、とりあえず直近で坂本氏のクリエイティブが見られるのは『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』になりそうです。


◆『ファミコン探偵倶楽部』シリーズ


『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(1988)

上述したとおり、『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のシナリオは坂本賀勇氏が担当しています。それまでシナリオを書いた経験のなかったという坂本氏ですが、企画段階での「記憶喪失の少年が、実は・・・」という設定を見て、何かお話が考えられそうだと考え、上司に「僕がシナリオを書いてみてもいいですか?」と頼んだとのこと。この作品では、坂本氏は「原作」としてクレジットされており、当時は手書きのシナリオをスタッフに共有して作ったと語られています。


当時の坂本氏は、『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』と平行して『中山美穂のトキメキハイスクール』の開発も手掛けています。任天堂とスクウェアの協業といえば『スーパーマリオRPG』が有名ですが、『中山美穂のトキメキハイスクール』もニ社の共同開発による作品であり、坂本氏は本作にも企画段階から携わっていました。


『ファミコン探偵倶楽部PARTII うしろに立つ少女』(1989)、画像はスーパーファミコン版(1998)

その後、『消えた後継者』でやり残したことがあるとして、続編となる『ファミコン探偵倶楽部PARTII うしろに立つ少女』が開発されました。前作は、もともと坂本氏が唯一読んでいた推理小説が横溝正史氏のものだったということもあり、そのテイストを引き継いでいますが、『うしろに立つ少女』ではもう少し華のある学園モノのホラーがやりたいと考えたと語られています。


そのほかに、坂本氏は『カエルの為に鐘は鳴る』や『トレード&バトル カードヒーロー』のシナリオも手掛けています。


◆『トモダチコレクション』


『トモダチコレクション』(2009)

『トモダチコレクション』といえば、その原案にはゲームボーイ『とっとこハム太郎 ともだち大作戦でちゅ』があることが有名です。坂本氏も開発に携わる『とっとこハム太郎 ともだち大作戦でちゅ』は、ハム太郎といっしょに占いができるゲームで、友だち同士の相性を測ったり、適職診断をしたり、その日の運勢を占ったりできるタイトルになっています。


『とっとこハム太郎 ともだち大作戦でちゅ』をニンテンドーDS向けに、“大人の女性”をターゲットにしたタイトルとしてアレンジしたいと考えた坂本氏は、ディレクターの高橋氏を迎え『大人のオンナの占い手帳』と呼ばれる作品の開発をはじめます。


『トモダチコレクション』(2009)

『大人のオンナの占い手帳』の開発の中で、ディレクターのアイデアで似顔絵のシステムを入れたいとして生まれたのがのちに任天堂を代表するアバターシステムとなる「Mii」でした。このシステムは岩田聡氏と宮本茂氏に気に入られ、さきにこのシステムを「似顔絵チャンネル」として完成させるために、一度『大人のオンナの占い手帳』の開発は中断。開発が再開される頃にはすでにDSは大人の女性にも受け入れられているハードになっていたため、ターゲットを絞らない作品として『トモダチコレクション』が完成しました。


『トモダチコレクション』を開発していた、坂本氏率いる企画開発部の第一プロダクションチームは、当時他にも『メイドインワリオ』シリーズや『リズム天国』シリーズなどを開発しており、どちらのシリーズも多くの作品に坂本氏がプロデューサーとして関わっています。




坂本賀勇氏は『メトロイド』といったシリアスタッチの作品から、『トモダチコレクション』、『メイドインワリオ』といったコミカルタッチの作品まで、非常にレンジの広い作品を手掛けることが特徴です。任天堂のクリエイターの中でも特に優れたシナリオが書けることも特徴であり、このあたりのクリエイティブは2021年の『メトロイド ドレッド』や『ファミコン探偵倶楽部』リメイクを皮切りに、近年触れられる機会に恵まれています。


Nintendo Directや公式の動画に坂本氏が露出する機会も増えてきており、直近の『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』でも動画でメッセージを寄せていました。まだまだ現役でクリエイティブを発揮し続ける任天堂のベテランクリエイター、坂本賀勇氏には今後も注目です。


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