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「次の舞台」へ向かう舞台少女たちを描いた幕引きがここに―『少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド』は劇場版の空白を埋めるスピンオフであり、かつ正統な続編だった【プレイレビュー】

インサイド / 2024年8月23日 18時0分

※本記事はアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」および、映画「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のネタバレを含みます。


ブシロードは8月8日、ビジュアルノベル『少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド(以下、遥かなるエルドラド)』をニンテンドースイッチ/PC(Steam)向けに発売しました。


本作は、2018年より放映されたアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト(以下、レヴュースタァライト)」のゲーム化タイトルであり、時系列としては2021年に公開された映画「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト(以下、劇場版レヴュースタァライト)」の後日談を描く作品です。ゲームシナリオをアニメ・劇場版の脚本を手がけた樋口達人氏が手がけているほか、開発は『グリザイア』シリーズなどで知られるフロントウイングが担当しています。


これ以上ないほどの“完璧な終幕”を迎えた「劇場版レヴュースタァライト」のその後が描かれるということで筆者はプレイ前、何をどうやっても蛇足になってしまうのではないかと考えていました。しかし『遥かなるエルドラド』はその杞憂を乗り越え、聖翔音楽学園99期生の舞台少女たちが新たな大海原へ漕ぎだすまでの準備期間を見事を描いています。発売前からプレイヤーが作中の戯曲「遙かなるエルドラド」の配役9名を自由に決められるシステムも話題になっていました。


最初に申し上げておくと本作『遥かなるエルドラド』は、「レヴュースタァライト」の入門には向いていません。「劇場版レヴュースタァライト」と地続きの完全なる続編で、プレイヤーにも一定以上の作品に対する咀嚼・飲み込みを要求しており、「気になっていたアニメがゲーム化したんだ」というノリでプレイしてしまうと、双方にとって巡り合わせの悪い出会いになってしまうかもしれません。


ですがその分「レヴュースタァライト」の放つ輝きに目を焼かれた我々“キリン”が願う、もう一度舞台少女たちの姿をみたいという希望に答えてくれる、美しいカーテンコールとして描かれていました。その完成度の高さは、本記事執筆時点でSteamユーザーレビューが約550件中98%が好評で、「圧倒的に好評」ステータスを獲得していることからも伝わるのではないでしょうか。


本稿ではそんな本作を、筆者のような何年経っても「レヴュースタァライト」のキラめきが脳裏に焼き付いたままのファンに向けて、核心的なネタバレや物語の展開への深い言及を避けつつ紹介していきます。


◆「レヴュースタァライト」とは


まずは、アニメ「レヴュースタァライト」ついて紹介しましょう。主人公は、歌劇の名門「聖翔音楽学園」の99期生で明るく快活な「愛城華恋」。物語はある日幼い頃に「一緒にスタァになる」という約束を交わした幼馴染「神楽ひかり」が、突如学園に転入する場面からはじまります。


明るく華恋を引っ張ってくれていた幼き頃と比べ、冷めてしまったかようなひかりを追いかけて学園の地下に迷い込んだ華恋は、謎のキリンが主催し舞台少女たちが「トップスタァ」の座をかけて、文字通り武器を掲げて戦いあうオーディションを発見するという導入です。


99期生には、演劇界のサラブレッドで将来を有望視されている「天堂真矢」、華恋にデカい感情を向けひかりに嫉妬心を燃やすルームメイト「露崎まひる」、99期生のお母さん的存在で演者と裏方の二刀流をこなす「大場なな」など個性的な仲間が存在。ひかりとの約束を思い出した華恋が、彼女たちとスタァを目指して競い合う様子が描かれました。


◆ゲームで描かれる「遥かなるエルドラド」とは


本作の主題として描かれる戯曲「遥かなるエルドラド」は、ヴェネツィア亡命提督の息子「サルバトーレ」と、イスパニア貴族の嫡男「アレハンドロ」が幼き日に出会い、将来は伝説に謳われるエルドラドを一緒に探そうと指輪を交換して約束するも、成長したサルバトーレの野望により2人は離れ離れに。家族や地位などすべてを失ったアレハンドロは復讐を誓う――という物語。


「劇場版レヴュースタァライト」で登場した作中における歴史ある名作戯曲で、聖翔音楽学園からの卒業と第101回聖翔祭「スタァライト」を控えた99期生たちの別れと旅立ちのモチーフとして引用されつつも、実際に映画内では詳細に描写されなかった劇中劇です。そのため劇場版を鑑賞したファンのなかには、どんなストーリーなのだろうと気になった方も多かったのではと思います。


その舞台が「レヴュースタァライト」のゲーム化に際して、メインとして描かれると発表されたときには「その手があったか~!」と唸ったのが記憶に新しいです。


また本作のゲストキャラクターとして、イギリスから協力して舞台を作り上げる「交流プログラム」で日本へとやってくる舞台少女「ジュディ・ナイトレー」も、決してぽっと出ではなくアニメ版から登場しているキャラクターなのもポイント。8話で描かれた王立演劇学院でのレヴューオーディションで神楽ひかりを打ち破り、トップスタァの座に輝いた人物とはいったい……というファンの疑問も、本作で解消できるようになっています。


ゲームの基本的な流れを説明すると、ビジュアルノベル形式でテキストを読み進めていくことでストーリーが進展していきます。選択肢はゲームを通して一度だけ発生し、その結果によってルートが変化するため、複雑なフラグ管理なども必要がありません。本作は「遥かなるエルドラド」の主役を誰が担当するかで分岐し、「星見純那&愛城華恋」ルート、「花柳香子&天堂真矢」ルート、「西條クロディーヌ&石動双葉」ルートがあり、いずれか1ルートをクリアすると解放される「露崎まひる&大場なな」ルートの全4通りが存在します。


いわゆる「天堂真矢と西條クロディーヌ」「星見純那と大場なな」「花柳香子と石動双葉」といった、それぞれのメインパートナー同士の物語ではない(そのお話は「劇場版レヴュースタァライト」で諸々ケリがついているので)のが新鮮です。ただ「星見純那&愛城華恋」であればオーディション初戦で戦った者同士、「露崎まひる&大場なな」であれば強い二面性を持つ2人同士など、それぞれ因縁や共通点を感じさせる関係性であると同時に、アニメでは表立って描かれずとも作品の裏では同じ99期生として交流を深め、切磋琢磨していたのだろうと思わせる違和感のない組み合わせでした。


ただアニメとビジュアルノベルという、媒体の違いで起こる体験の変化も当然存在します。「レヴュースタァライト」の魅力の1つはキャラクターの一挙手一投足で語る物語性と、その心情に寄り添った適切かつ美麗な演出だと筆者は考えていますが、画面上に立ち絵を表示させテキストを読み進めていくビジュアルノベルでは、その演出面の大部分がオミットされています。


そして3,980円(税込)のミドルプライスタイトルということで、立ち絵やスチルのバリエーションが少なめであるとも感じます。ただすべての体験が棄損されているというわけではなく、舞台少女たちの心情を一文字ずつ読み込むように味わう本作は、またアニメとは違った楽しみ方ができたとも言えます。


◆36万2880通りの配役が楽しめる「El Doradoモード」


本作のシステム面における最大の特徴は、4ルートすべてをクリアした後に解放され、プレイヤーが「遙かなるエルドラド」の配役9名を、9の階乗(36万2880)通りの組み合わせのなかから自由に決めて鑑賞できる「El Doradoモード」の存在が挙げられます。声優の方々に対して「いったいどれだけ音声収録をしたのだろう」と震え上がってしまうほど、フルボイスで描かれる舞台をプレイヤー好みに変更できます。


たとえばゲーム本編ではサルバトーレを星見純那、アレハンドロを愛城華恋を演じますが「もしも配役が逆だったら……」というifや、本作では避けられていた「星見純那と大場なな」といった映画でレヴューで戦った者同士を主役に据えることも可能です。プレイヤーの数だけ好みの配役が見つけられるでしょうし、36万2880通りの配役が楽しめます(ちなみに筆者は大場ななさん推しです)


◆『遥かなるエルドラド』は裏方にもスポットライトを当てる


本作ではルートごとにサルバトーレやアレハンドロを異なる舞台少女が演じるのですが、それぞれの作品に対する解釈が異なるため演技の方向性が違ったり、主役の演技からインスピレーションを受けたという形で脚本の細部が異なったりしています。舞台「遥かなるエルドラド」を作り上げていくストーリーの大筋は変わらずとも豊富なテキスト差分が存在するため、常に新鮮味を感じながらプレイできるのもうれしい点です。


ルートをプレイするごとに「遥かなるエルドラド」は、それぞれの2人が抱えているものにピタリと一致し、彼女らこそが演じるにふさわしいと思わせられるのですが、また別のルートをプレイすると“この2人のことを言っているじゃん!”と翻弄されてしまい、すべての登場人物に当てはまるような戯曲としての懐の広さを感じました。


キャラクターのセリフや心情描写も、「劇場版レヴュースタァライト」で描かれた成長や決別の後日談としてふさわしいもので、「なぜ星見純那が渡米することにしたのか?」「なぜ大場ななは王立演劇学院に留学することにしたのか?」という卒業後の進路を選んだ理由が理解できるものになっています。また映画を通過した後のタイトルだからこそ、ひかりがいなくなっても“1人”で「次の舞台」を模索する華恋の姿は眩しく見えるでしょう。


そして本作のシナリオの特徴として挙げられるのが、今までのアニメでは裏方として華恋たちA組こと「俳優育成科」を支えていた、B組「舞台創造科」にフォーカスされていることでしょう。


なかでも脚本担当の「雨宮詩音」と演出担当の「眞井霧子」に大きくスポットライトが当たっており、テレビシリーズ最終話で華恋とひかりによって展開が変えられてしまった、第100回聖翔祭の戯曲「スタァライト」に対してどう思っていたのかなど、舞台の裏側を知ることができ、本作をプレイしてからアニメや映画を見返すとまた別の角度で楽しめるかもしれません。


アニメ本筋の空白を埋めるような本作において、舞台の裏側を作り上げているB組を中心に描くのはテーマと物語構成が合致しており、強い納得感を覚えました。


本作は「劇場版レヴュースタァライト」と同じく、観客が望んだからこそ実現した幕間というイメージが強いですが、きっちりとそれぞれの舞台少女たちが「次の舞台」へ向かうまでの期間を描き切ることで、「レヴュースタァライト」というコンテンツに対して理想的な幕引きを作ってくれたと感じます。


もしかしたら今後もゲームやアニメで展開は続くのかもしれませんが、筆者としては本作のグランドエンディングムービーを見終えて、「劇場版レヴュースタァライト」を鑑賞したときのような「もう、これで終わっても良い」という深い感動にふたたび包まれています。ぜひ最後までプレイしてほしいと祈っています。




『少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド』は、ニンテンドースイッチ/Steam向けに発売中。価格は、通常版が3,980円(税込)です。各エディションについて、詳しくは公式サイトをご確認ください。


©Project Revue Starlight


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