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僕らはファミコンでミステリーの醍醐味を知った!『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』から振り返る、シリーズの功績

インサイド / 2024年9月3日 19時30分

8月28日に発売されたニンテンドースイッチ向けタイトル『ファミコン探偵偵楽部 笑み男』(以下『笑み男』)は、実に35年ぶりの『ファミコン探偵偵楽部』シリーズ完全新作です。


今は2024年。スマホもノートPCも珍しいものでなくなったこの時代に、まさか「ファミコン」の名を冠したシリーズの新作が登場するとは! しかしそれ以上に、『ファミコン探偵偵楽部』シリーズは難解になりがちなホラーミステリー作品の面白さを当時の子供たちに伝導したという大功績があります。


今回は過去のシリーズ作品を振り返りつつ、今回発売された『笑み男』についても触れていきたいと思います。


◆ホラーミステリーはとにかく“複雑”


ホラーミステリー、或いはホラーサスペンスと呼ばれる分野は、「怪現象や心霊現象を匂わせる殺人事件の解決」を目指す内容です。


アガサ・クリスティーは、ホラー要素を含んだ数々の作品を執筆しました。日本では横溝正史がホラーミステリーの第一人者として、金田一耕助シリーズを中心とする数多くの作品を発表しています。


筆者個人が特に好きなのは、『悪魔の手毬唄』です。岡山県と兵庫県の県境にある山村を分断している二大勢力の抗争、村で歌い継がれている童謡の歌詞のように殺されていく人々、そしてそれに先立つこと20年以上前に発生した未解決事件……。次々と発生する怪現象は、しかし村の中にいる誰かが人為的に実行しているもの。それを金田一がひとつひとつ解いていきます。


テレビドラマや映画の原作にもなっている横溝正史作品ですが、「登場人物の相関図が複雑」という特徴も。なにしろ、どの家庭にも兄弟が多人数いることが当たり前だった時代であり、しかも「別人と思われていたが実は同一人物」という展開もあったため、本を読み進めるには常に相関図を手元に置く必要がありました。


そこにホラー要素を発揮するための背景も加えられますから、読者が覚えなければならないことはますます多くなってしまいます。


◆ファミコンディスクシステムの名作、『ファミコン探偵偵楽部 消えた後継者』


さて、『ファミコン探偵偵楽部 消えた後継者』が発売されたのは1988年。これはディスクシステム向けの前後編ソフトでした。


様々な問題を抱え、商業的にも成功したとは言い切れないディスクシステムですが、それでも『ゼルダの伝説』や『悪魔城ドラキュラ』、『バレーボール』といったゲーム史に残る傑作を数々排出したのも事実。『消えた後継者』もそうした例に漏れず、現在に至るまで“名作”の評価を不動のものにしています。


『消えた後継者』は、複雑な仕掛けを解いていくことよりもストーリーそのものを楽しめるように設計された作品です。


記憶喪失の青年が、とある村の旧家で繰り広げられる遺産相続争いに端を発する殺人事件を解いていく……というストーリーで、そこにはホラーやオカルトの要素が配合されていました。それが物語に重厚さを与え、ホラーミステリー作品としての「読み応え」が十分に確保された作品となりました。


◆ファミコンで楽しむホラーミステリー


ミステリージャンルのファミコンソフトは、『ファミコン探偵偵楽部』が初めてというわけではありません。


ドラクエシリーズ生みの親・堀井雄二氏は『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』といったソフトの開発を手掛けています。山村美紗原作の『京都龍の寺殺人事件』や、コミカルでありながら本格的ミステリーソフトとしてのクオリティーを確保した『さんまの名探偵』など、『ファミコン探偵偵楽部』以前にも数多くの“探偵もの”が発売されました。


しかし、1988年当時はまだファミコンが、子供の玩具と見なされていた時代です。


ファミコンソフトで横溝正史作品のような世界観を表現できると本気で信じていた大人は決して多くなく、むしろファミコンに熱中する子供に対して親や教師が「読書をしなさい!」と説教していたほど。


この意識の温度差、すなわち「コンピューターごときに繊細な文章表現などできるはずがない!」と考えている上の世代と、実際に自らの手でミステリーソフトをプレイしてきた下の世代との間にある発想のズレが、現代のデジタルデバイド問題にもつながっていると感じているのは筆者だけでしょうか。


複雑かつ難解な文章を紙上で凝らさなければ表現できないと思われていたホラーミステリーの世界観を、ファミコンで見事に再現してみせたのは『消えた後継者』の大きな功績です。そして、そのDNAは『笑み男』にもしっかり受け継がれているようです。


◆夏の終わりの怪事件


最新作『笑み男』にて、空木探偵事務所の助手として活動する主人公が今回対峙するのは、「笑う紙袋」を被った状態の中学生の遺体です。


この遺体には絞殺の跡がありますが、誰がどういった目的でわざわざ紙袋を被せたのかは分かりません。しかし、どうやら18年前に発生した少女連続殺人事件と手口が酷似しているらしく、この犯人が長い時を経て再び犯行に手を染めたのではないか……?


誰が何の目的でこのような殺人事件を起こしたのか。『笑み男』には過去のシリーズ作品と同様、ストーリーに没頭することを重要視した設計になっているため、とにかく画面から目が離せません!


2024年の夏の終わりに発生した怪事件。かつて、ファミコン少年として数々の難事件を解いてきたお父さんは、この機会に『ファミコン探偵偵楽部 笑み男』の謎に挑戦してみてはいかがでしょうか……?


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