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“小さくなった”私から『SAEKO: Giantess Dating Sim』をまだ知らない貴方へ贈る、命がけの「非平等」デートシムの圧迫的魅力【TGS2024】

インサイド / 2024年9月29日 13時0分

今この記事を読んでいるあなたは、『SAEKO: Giantess Dating Sim』というゲームをご存じでしょうか。本作について、公式な説明文を引用すると、「不思議な能力を持つ少女・冴子と、親指ほどに縮んでしまった小人たちの生活を描くアドベンチャーゲーム」とのことです。


この一文だけを見ると、箱庭のような世界で暮らす小人と、それを眺める少女が見守る様子や、暖かい交流などが描かれるゲームと思われるかもしれません。しかし、今日まで公開された情報から考えると、さきほどの予想とは異なりそうです。


いえ、実際はそうなのかもしれませんが、まだ製品版が出ていないため、いずれにせよ断言はできません。しかし、惹かれるほどの魅力を感じているのも事実。その全貌を知るには製品版の登場を待つほかありませんが、本作の断片を知る手段はあります。


『SAEKO: Giantess Dating Sim』は「東京ゲームショウ2024」に出展されており、来場者なら誰でも試遊版を遊べます。そこで本作の一部を味わうのも、ひとつの手です。


とはいえ、全員が会場に足を運べるわけではありません。そこで今回は、筆者が試遊版を遊んだ体験を通して、『SAEKO: Giantess Dating Sim』の概要や魅力を実体験のレポート形式でお届けします。「名前は知ってるし、興味はあるから、その内容を知りたい」という人は、ぜひご覧ください。


■独特の視点も納得の演出─巧みな構図が作品の本質を切り取る


タイトル画面には、ピクセルアートで描かれた可愛い女性「冴子」の姿が画面の半分ほどを占めています。その理由のひとつは、カメラの視点がやや低いため、相対的に彼女の姿が大きく映し出されているからです。


カメラの位置は、彼女が向かっている机の位置くらい。そのため、見上げるような角度になっています。実は、この角度や距離感が、『SAEKO: Giantess Dating Sim』にとって非常に重要なのです。


その理由は、ゲームを開始するとすぐに分かります。画面の構図が切り替わり、椅子に座っている冴子と、彼女が向かっている机の様子を真横から映す構図になります。


そして、机の上には小さな人間が。……そう、タイトル画面の視点は、机にいる小人から冴子を見上げたものでした。


プレイヤーの分身となるのは、この小人。名前はリンと言いますが、それ以外は何も覚えておらず、記憶喪失のようです。なぜ小人になったのか、自分は誰なのか。何も分からないリンに、「小さなあなたを見つけて、危ないと思って持って帰ってきた」「一緒に、元に戻る方法を探してあげる」「それまで、私のところで暮らさない?」と、冴子は親身になって接してくれます。


リンは何も分からない状態なので、冴子の申し出を受け入れるほかありません。冴子の手に平に乗り、これから過ごす場所へと案内されました。


■リンが過ごす、もうひとつの世界


いつの間にか眠ってしまったリンは、暗い場所で目を覚まします。すでに冴子の姿も気配もありませんが、そこには凛と同じ小人たちがいました。


最初に声をかけてくれたモコ、以前からリンを知っている様子なのにそれを否定するチオ、ここの生活について教えてくれるタキと、3人の小人に囲まれます。


『SAEKO: Giantess Dating Sim』は、冴子とのコミュニケーションも重要なパートですが、この部屋で過ごすひとときも、もうひとつの大事なパート。今回の試遊版ではお披露目程度ですが、その範囲でも重要な情報がいくつも出てきました。


モコやタキの説明をまとめると、この部屋は引き出しの中で、リンは新たな管理人に指名された模様。その初仕事として、引き出しの中に置かれたコマをタキに渡す作業を頼まれました。


この仕事は、コマをドラッグし、そのまま移動してタキにドロップすれば完了。おそらく、操作方法のチュートリアルを兼ねているのでしょう。もちろん、何の問題もなく初仕事が終わりました。


この部屋にあるモノは冴子の私物なので、直接触っていいのは管理人であるリンのみ。ほかの小人は、リンから渡してもらうことで、触れていい許可を得ることになるようです。


■徐々に怪しくなる雲行き


続いて、部屋にあるピーナッツをモコに与える仕事に移ります。操作は同じなので悩む必要はありません……が、ここで筆者にいたずら心が芽生えました。モコではなく、他の小人にピーナッツを渡したらどうなるのかな、と。


そこで、まずはチオにピーナッツをドロップ。断られるのか、それとも素直に食べるのか……と思いつつ反応を伺うと、「……あなたがそう決めたなら、私は受け入れるわ」と返答。予想よりも重めの言葉です。


さらに「ありがとう、リン。つらい決断だったと思うけど……頑張ったわね」と、チオが続けます。予想外の反応に焦ったのか、リンは「間違っちゃったかも! 考え直します!」と撤回します。


微妙な疑問が浮かびつつ、今度はピーナッツをタキに渡してみました。すると「…あ、ああ、そう! ま、間違えてるよ!」と、こちらも奇妙な反応を示します。さらに「食べ物はモコにあげるんだ! 絶対だよ!」と強く念を押してきました。


疑問はさらに深まるばかりですが、ピーナッツを渡せる相手はもうモコしかいません。彼女に渡したら「ありがとうね、リン」と、こちらはごく普通の反応。ふたりとのギャップに首をひねりつつも、チュートリアルらしき過程が終わりました。





■リンは現実を噛みしめ、冴子は……


それから、モコとちょっとした会話を交わしていると、不意に部屋が大きく揺れ出します。どうやら、冴子が帰ってきたようです。サイズに差があるので、冴子が歩くだけでも小人にとっては地震級の揺れに感じるのでしょう。


そして開かれる引き出しと、対比で巨人のように見える冴子。そして、驚きの一言を口にします。「1人だけ、今日もいただいちゃってもいいかしら?」と。


その言葉は、一見お願いしているようにも聞こえます。ですが、返答を待つこともなく、冴子は右手を引き出しに伸ばし……その巨大な指で、モコを摘まみ上げました。


右手はそのまま彼女の口元に運ばれ、再び開いた手の中には、モコの姿はありません。どこにも見当たりません。少なくとも、見える範囲には。


果たして何が起きたのかは、想像するまでもないでしょう。しかし、プレイヤーの分身である小人の立場で考えると、想像したくもない、という方がより正解に近いはず。しかし、そんなささやかな自己防衛すら、冴子は許してくれません。


「おいしい」「おなかの中で、元気に動いてて……」


もはや、何が起きたのかは明白でした。目をつぶったとしても、残酷な現実が言葉として襲い掛かってきます。


■圧倒的な立場の差を思い知らされて始まる、新たな世界


おそらくリンも、そしてプレイヤーである筆者も呆然としていると、冴子はなぜかリンの仕事ぶりを褒めました。どうやら、小人にピーナッツを食べさせると、冴子がその小人を食べた時、より美味しくなる模様です。


察するに、モコにピーナッツをあげた「仕事」は、冴子に食べさせるための下ごしらえであり、犠牲者を決める行為だったのでしょう。そう考えれば、チオの重みのある発言や、全力で回避したタキの反応も、納得できます。


ちなみに、“冴子の食事”になる道を避けられたタキは、しかし「仕事」の内容を伝えなかった報いとして、冴子の右手の中で“小さく小さく”なりました。指の隙間から漏れる赤い色と、それを拭ったティッシュが、惨劇の事実を鮮明に浮かび上がらせます。


ここまで何一つ言えずにいるリンに向かって、「これからよろしくね」と語りかける冴子。そして「私の世界へようこそ」と告げました。


この理不尽で抗いようのない世界こそ、『SAEKO: Giantess Dating Sim』に他なりません。





■尊厳と引き換えに死ぬのか、それとも媚びて死ぬのか……どれも死の予感しかない「デートシム」


残酷な現実を叩きつけられる「昼パート」が終わると、冴子の机の上に招かれる「夜パート」が始まります。初日の「昼パート」はチュートリアル(操作と、厳しい現実の)要素がメインだったため、ゲームとしての展開はここから本格的に始まります。


試遊版で体験した範囲では、「夜パート」で可能な行動は、冴子の会話に反応するのみ。適度なタイミングで相槌を打ったり、質問に対して返答を選ぶのが、プレイヤーに許されたアクションです。


力関係は明白なので、冴子の機嫌を損なうような反応はできません。この「できません」はシステム的にという話ではなく、プレイヤーの心情的に、という意味です。


たかがゲームと言われそうですが、自分の手でモコを捧げてしまった自責の念と、何の躊躇もなくモコを「おいしく」いただいた冴子を見たら、心が折れないわけがない!(弱者の叫び)


最初に触れた構図も、こちらの気持ちを萎縮させる効果を増幅させているのでしょう。会話中はその傾向がより顕著になり、画面から顔が見切れて、首から下の上半身と両手しか見えない状態も長く続きます。


冴子の表情が分からないので、こちらの返答が合っているのか、それとも気分を損ねているのか、明確な判別ができません。そのため、ペンを動かす手が不意に止まったり、机を叩く左指の動きにいちいち反応していまい、「今の返答は失敗したのか……?」と闇雲な不安に襲われることもしばしば。


しかも冴子は、ただのイエスマンな反応は望んでいません。相槌ばかり繰り返せば適当な反応だと思われてしまい、会話の選択を間違えれば「見当違い」と判断されます。


返事をする以外にも「無言でいる」といった反応もできるので、機械のように相槌するのではなく緩急をつけ、冴子の本意には逆らわず、しかしイエスマンにもならない。そんな、綱渡りのような精緻で完璧な振る舞いが、冴子との交流を続ける上で必須となります。


小人を食べる理由を聞くと、「おいしいから」と答える冴子。食べられる側からすれば、怒りも憎しみも生まれますが、感情をそのまま叩きつければ、おいしくいただかれる以前に握りつぶされてしまいます。


死にたくないから、機嫌を損ねないよう、「おいしいから」に「いい」と答えるべきか。死にたくないからこそ、「よくない」と主張すべきか。死にたくないはずなのに、どちらを選んでも死に近づきそうなADV。この葛藤と緊張感にこそ、『SAEKO: Giantess Dating Sim』の醍醐味があるのかもしれません。




本作の試遊台には、「命がけの非対称デートシム」と書かれていますが、まさにその通りといった内容でした。その上で、個人的な感想を敢えて付け加えるならば、平等感が皆無な“非平等”デートシムだったようにも思います。


こちらの生死をたやすく左右する圧倒的な存在を前に、ひとつ答えるたびに死がチラつき、次の会話が来れば「生き残った」と生の喜びに打ち震える。そんな、圧迫と安堵が入り混じる奇妙な魅力に引き込まれ、時間を空忘れるほど『SAEKO: Giantess Dating Sim』に没頭してしまいました。


その表現や切り口、プレイ感なども含め、決して万人向けとは言えそうにありません。しかし、この作品でしか味わえない旨味があるのも、疑いようのない事実です。「そんな理不尽なゲーム、なんで遊ぶの?」と聞かれても、「面白いから」としか答えられない自分がいます。その意味では、冴子に若干の親近感も覚え……いや、食べるのは違うよやっぱり!


そんな思いが拭いきれなかったのか、今回のプレイの結末は、冴子の左手の中で“小さく”なりました。皆様は、同じ轍を踏まれませんように……。ちなみにPCをお持ちの人は、Steamで体験版が配信されているので、ぜひ直接遊んでみてください。

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