1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. ゲーム

マリオは現代の「九郎判官義経」だ!幼児から高齢者まで楽しめる「日本型双六」の最大発展形『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』を語る

インサイド / 2024年10月26日 13時0分

10月17日に発売された『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』。据置機向けマリオパーティシリーズの13作目に当たる今作は、「スゴロクの島」が舞台です。


それまでのシリーズの基本構成を踏襲しながら、全112種のミニゲームが実装され、最大20人でのオンラインモードも用意されています。ターンごとの様々なギミックも相成り、非常にボリュームのある作品に仕上がっています。


そしてこの『スーパーマリオパーティ ジャンボリー』、実は日本人が長年築き上げた双六文化の集大成と言える部分が見受けられます。今回の記事では日本における絵双六の歴史や基本コンセプトを振り返りつつ、それがどのように『スーパーマリオパーティ ジャンボリー』に反映されているのかを探っていきたいと思います。


◆シリーズ最多のミニゲームとオンライン多人数プレイ


21世紀は「インターネットの世紀」です。


『マリオパーティ』シリーズも時代の流れに乗り、ネット接続により世界中のプレイヤーと腕を競い合うことが可能になりました。『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』に実装された112種類のミニゲームは、シリーズ最多。この種類の豊富さには、プレイの最中に圧倒されてしまうほどです。


「オンライン」と「ミニゲーム」。この2要素は、日本の一文化である双六に新しい進化の余地を与えたことは間違いないでしょう。


かつて、双六は「家族で遊ぶゲーム」の定番でした。年末が近づくと、少年向け雑誌が双六を付録として設けていた時代があり、どの家庭でも何かしらの双六がありました。


1911年生まれの教育学者、唐沢富太郎氏は、自身の幼少期には既に双六が正月ゲームの定番になっていたことを明かしています。その証言をさらに深く研究した『子どもたちの文化史 玩具にみる日本の近代』(臨川書店)という本には、



絵双六はお正月に欠かせない遊び道具であった。難しいルールはなく、サイコロの目によって進み方が決まるので運だめしの要素もあり、経験や知識が豊富な年長者が有利とは限らない。家族や友人、客を交え、幼い子どもから大人までが、年のはじめのめでたさを感じながら一緒に遊べる楽しさが、双六遊びの魅力だったのだろう。


(『子どもたちの文化史 玩具にみる日本の近代』臨川書店 この項の筆者は日本家政大学家政学部児童学科准教授の是澤優子氏)



と、説明されています。おおっ、これはまさに『スーパーマリオパーティ』シリーズに通じる要素! 日本の双六の基本コンセプトは「幼児から高齢者まで誰もが楽しめるゲーム」であることに意識を向ける必要があります。


◆双六発展の歴史


日本の双六(公家や上級武士の間で流行した盤双六ではなく、庶民に普及した絵双六)は、「その時代のスターを登場させる」という大きな特徴があります。


海外の双六は、仏教の輪廻転生や聖書の内容を分かりやすく伝えるという側面があり、子供が楽しめるような内容とは言い難いものも存在します。清朝時代の中国には「宦官が皇帝の側近になるまでの人生を追体験する」という内容の双六もありました。しかし同時期の日本(江戸時代)では、歌舞伎役者や物語の登場人物を木版印刷した双六が生産されました。つまり、日本の双六はより風俗寄りの方向性だったのです。


時代が江戸から明治に移ると、国外から最先端の印刷技術がもたらされます。これは多種多様の書籍・印刷物の発行を可能にしたという劇的効果を生み出しました。明治期に「少年向け雑誌に付録として双六を加える」という発想が確立し、それは短期間で日本人のライフスタイルに定着しました。


そして、話は上述の唐沢富太郎の幼少期に戻ります。彼の子供時代とは、即ち大正時代。ということは、『鬼滅の刃』の竈門炭治郎は正月になると少年雑誌の付録の双六で遊んでいた可能性が極めて高いということでもあります。お館様を含めた鬼殺隊の柱全員で双六遊び、ということもあったのではないでしょうか。


◆海外の双六は残酷だ!


そうした経緯の発展を遂げた日本の双六は、「残酷さ」というものが一切ありません。


ここで言う「残酷さ」とは、自分以外の他のプレイヤーを徹底して追い落とすという意味です。


アメリカ生まれの『モノポリー』は、1929年からの大恐慌の煽りを受けて失業していたチャールズ・ダロウという人物が考案(というより、特許取得済みの周回型双六を自分なりに改良)したボードゲーム。アメリカの資本主義経済を思いっきり再現したゲームのため、その内容は非常に残酷です。それぞれのマスが土地になっていて、プレイヤーはそれを買うことができます。そこに不動産を建設して、マスに止まった他プレイヤーから賃料を吸い上げ、最終的には破産に追い込むというルールです。


土地だけでなく、鉄道会社や電機会社、何と水道会社も買うことができます。だからこそ「モノポリー(独占)」という名前が付けられているのです。


ちなみに、『モノポリー』本来の資本主義要素をスーパーマリオの世界観に置き換えた『モノポリー ゲーマー スーパーマリオ』という商品が発売されたことがあります。このゲームは本家『モノポリー』の目玉要素「破産」を敢えて省き、子供たちにも遊びやすいようにしていることが特徴です。


◆シリーズ恒例の「大逆転要素」は健在!


『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』にも、他プレイヤーのコインやスターを奪い取るルールが存在します。


しかし、そこには相手をケチョンケチョンに叩きまくる残酷性は見受けられません。なぜなら、この双六には大逆転要素がいくつも実装されていて、中盤までの圧倒的リードを保つことが難しい設計になっているから。特に今作でも健在の「クッパ革命」は、それまでの暫定順位を見事ごちゃ混ぜにしてくれます。


資本主義バリバリの『モノポリー』にはない発想です。まさに「クッパ的優しさ」!?


また、現代ではマリオ自体が江戸時代の歌舞伎役者のようになっています。安宅の関を越える九郎判官義経と武蔵坊弁慶が幾度も錦絵になっているように、マリオブラザーズとその仲間たちは「絶対不動のスター」として世界中のファンを熱狂させています。


『マリオパーティ』シリーズを日本の双六文化の視点から観察した場合、実はこれほど江戸以来の基本形を忠実に保っている双六は他にないのではないでしょうか。


【参考資料】


『子どもたちの文化史 玩具にみる日本の近代』是澤博昭・日高真吾編 臨川書店


『絵すごろく 生い立ちと魅力』山本正勝 芸艸堂


『すごろく 1』増川宏一 法政大学出版局


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください