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「3DS」「PS Vita」の後継機は厳しいのか? 携帯ゲーム機はもう復活しないのか、任天堂決算資料を元に一考

インサイド / 2024年11月10日 10時0分

「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」など、携帯して遊ぶゲーム機がたびたび大ヒットを呼び、持ち歩いて楽しむ文化が根付きました。その流れは今、スマホやニンテンドースイッチに受け継がれており、今も継承されています。


しかし、スマホは総合的なデバイスで、ゲーム専用機器ではありません。またスイッチは、良くも悪くも従来の携帯ゲーム機と比べるとサイズが大きく、常に携帯できるほどの手軽さとなると一歩後れを取ります。


そのため、ニンテンドー3DSやPlayStation Vitaなどの後を継ぐ次世代機の登場に期待するゲームファンも一定数いますが、今のところその兆しはありません。


この先、携帯専用のゲーム機が新たに登場する余地はあるのか。先日公開された任天堂の「2025年3月期 第2四半期決算説明会/ 経営方針説明会(オンライン)プレゼンテーション資料」を元に、長く携帯ゲーム機を展開してきた同社の姿勢から、今現在の状況を一考してみます。


■懐かしき携帯ゲーム機の黄金時代


決算資料を紐解く前に、これまで携帯ゲーム機が歩んだ大まかな歴史を簡単に振り返ってみましょう。「ゲーム&ウォッチ」はファミコン以前にブームを呼んだゲーム機で、この頃は本体とゲームが一体化していました。「ゲームポケコン」などの例外もありますが、ゲームカートリッジを入れ替える」というスタイルが定着したのは、もう少し後のことです。


カートリッジを差し替えて様々なゲームが遊べる「ゲームボーイ」が登場すると、『ポケモン』などの人気作の後押しを受け、多くのユーザーが飛びつきました。ゲームボーイファミリー全体で1億1,869万台もの販売実績を誇り、この数字だけでも支持の厚さが窺えます。


また、ゲームボーイのライバルとして「ゲームギア」や「PCエンジンGT」、「ワンダースワン」に「ネオジオポケット」なども参戦し、競争と切磋琢磨で携帯ゲーム機市場が大いに盛り上がっていきます。


2000年代中盤に入ると、「ニンテンドーDS」と「PlayStation Portable」が二大巨頭として市場を席捲します。前者は『ポケモン』、後者は『モンハン』といった代表作を持ち、それぞれ社会現象になるほどの影響力と話題性がありました。


2010年代には、後継機となる「ニンテンドー3DS」と「PlayStation Vita」が登場。据置機では、「Wii U」や「PlayStation 4」が台頭していた頃です。このように、ゲームボーイ時代から2010年代まで、据置機と携帯ゲーム機が分かれている状況が長く続きました。


■『ポケモン』『モンハン』などで盛り上がるも、3DS・PS Vitaの後継機は現れず


『ポケモン』のトレードや対戦、『モンハン』の協力プレイなど、携帯ゲーム機を持ち寄って遊ぶプレイスタイルを多くのユーザーが受け入れ、公園やプレイを許可する商業施設などに集まる光景も珍しいものではありませんでした。


特にDSや3DSは「すれちがい通信」という遊びもあったため、取り出さなくともカバンやバッグに忍ばせ、通勤や通学時に持ち歩く人が相当数いました。


しかし、ゲームはもちろん、通話やメールの送受信、インターネットのブラウジング、SNSを介してのコミュニケーションなど、多機能と手頃なサイズを両立させた「スマートフォン」の普及と反比例し、携帯ゲーム機の影が薄くなっていきます。


そのため2010年代後半に入っても3DSやPS Vitaの後継機は登場せず、「携帯してゲームを遊ぶ」というスタイルは、ほぼスマホが引き継ぐ形となりました。また、スマホの普及に合わせ、「携帯ゲーム機は今の時代と合わない」「スマホには勝てないから、後継機は出ないだろう」と囁かれることも増えていきます。


実際、スイッチの詳細が発表された当時も、「外出中のゲームはスマホで十分。スイッチが入り込む余地はない」「携帯性は不要」などの指摘が飛び交い、据置機・携帯機の両面を併せ持つスイッチを“多機能”ではなく“中途半端”と論じる声がありました。




UPDATE(2024年11月11日):本文中の誤字を修正しました。



■スイッチ発売以降、8年も高水準が続いた任天堂


“携帯性不要論”もある中、2017年3月に発売されたスイッチは、今現在8年目に突入しています。先日披露されたプレゼンテーション資料に、スイッチの実績が窺える中期的な業績推移が示されました。


資料によれば、「スイッチ発売以降の業績は、ハードウェアの普及とともに成長し、その後も、急激に減速することなく、健全な水準を維持している」とのこと。また、スイッチ発売時点の2017年と、発売から時間が経過した2018年のグラフを見てみると、売上高は2倍に、営業利益は数倍どころではない伸びを見せています。


資料内の説明にあった通り、2019年も目覚ましい成長を続け、2021年に最高潮に達しますが、2022年~2024年も横ばいに近く、大きな落ち込みはありません。むしろ2024年は、2023年を上回る再成長を見せるなど、スイッチの活躍が業績の成長と安定に寄与していることが分かります。


■「スイッチ」成功の秘訣のひとつは「プラットフォームの統合」


8年にも及ぶ高水準の維持について、任天堂は「当社のゲーム専用機ビジネスをとりまく構造の変化が影響していると考えています」と述べています。その変化には大きく分けて4つの理由があると提示していますが、一番最初に取り上げたのが「据置機・携帯機で分かれていたプラットフォームの統合」でした。


据置機と携帯機ではプレイスタイルや体験に違いがあり、かつての任天堂はそれぞれに向けたゲームタイトルを展開してきました。しかし携帯モードも備えたスイッチなら、その両立が可能になります。


そしてプラットフォームが統合したことで、「携帯機、据置機をそれぞれ代表するシリーズが一堂に会した」「開発体制も統合でき、切れ目なく新作が出せるようになった」といった影響があったとも資料内で提示しており、これがスイッチの人気を後押しするひとつの要因になったと思われます。


一例を振り返ると、以前の『ポケモン』シリーズは携帯機を中心に展開していました。また、『ゼルダの伝説』シリーズで頭身の高い3D系作品は据置機が主戦場でした。この両シリーズがスイッチで合流を果たし、『ポケットモンスター ソード・シールド』2,644万本、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』3,229万本と、それぞれ大ヒットを記録します。


プラットフォームの統合により、どちらのシリーズもスイッチ1台で遊べるという環境は、ユーザーにとって大きなメリットです。購入者が相次ぎ、普及が広がるのも納得の結果といえます。


■“携帯性不要論”を一蹴し、時代を先取りした「スイッチ」


また、据置機はこれまで「1家に1台」という考え方が標準的でした。しかし、スイッチが携帯性を備えたことで、「1家に1台」から「ひとり1台」というスタイルに移り変わり、“据置機なのに携帯機のような販売トレンド”を実現させました。


据置機と携帯機を両立させたスイッチは、「プラットフォームの統合で人気シリーズを集中」「据置機で“ひとり1台”のスタイルを定着させ、普及を促進」と、良好な効果を生み出します。


かつて「携帯性は不要」とも論じられていたスイッチですが、その特徴と提案は多くのユーザーに受け入れられ、任天堂の読みと時代のニーズが合致していたことを証明しました。





■スイッチの成功で、「携帯できるゲーム機器」が再加熱


スイッチの成功は、「スマホ以上のリッチなゲーム体験を、携帯性のあるゲーム機に求める」というニーズがまだ存在していたことを証明したともいえます。では、3DSやPSVitaを受け継ぐような、専用の携帯ゲーム機が今後登場する見込みはあるのでしょうか。


実のところ、スイッチの人気ぶりが影響を及ぼしたのか、携帯性を備えた機器が徐々に展開しています。代表的な例でいえば、携帯型のゲーミングPC「Steam Deck」が大きな話題となり、新モデル「Steam Deck OLED」も登場しました。


また家庭用向けでは、PS5のゲームを遊べる「PlayStation Portal リモートプレーヤー」が登場しています。ただしこちらは、Wi-Fiを経由してPS5にあるゲームにアクセスするという形なので、独立したゲーム機ではなく拡張機器の一種です。とはいえ、SIEが「コントローラーとモニターが一体化した携帯型機器」を展開したという事実は、見るべきポイントのひとつでしょう。


こうした機器の登場を鑑みると、ゲーム業界が「携帯性のある機器」に再注目している面があるのは間違いなさそうです。とはいえ、3DSやPS Vitaの後継機のような存在が「確実に出てくる」とまでは、まだ言えそうにありません。


■新たな「携帯専用ゲーム機」は登場するのか?


スイッチやSteam Deck、PlayStation Portal リモートプレーヤーはいずれも、「据え置きで楽しむ規模のゲームにアクセスできる機器」です。その性能に見合った価格なので、一般的な携帯ゲーム機よりも高くつきます。また、比較するまでもなく、物理的なサイズの差も明らかです。


時代に合わせて性能の向上が見込めるとはいえ、今改めて新たな携帯ゲーム機が出たところで、リッチなプレイ体験はスイッチやSteam Deckに敵わず、手頃なゲームならばスマホで十分、と判断されてしまう可能性があります。


任天堂自身も、「統合」によりスイッチが成功した背景があるため、「新型の携帯ゲーム機を出す=統合を解消し、再度分割する」というのは、かなりの勇気が求められる選択でしょう。


加えて現時点の任天堂は、スイッチの後継機種に注力すべき時期に入っています。よほどの事情や綿密な計画がない限り、スイッチ後継機種の発表と発売、そして一定の普及に達するまで、極力集中して動くことでしょう。そこに、3DSの後継機が入り込む隙があるかどうか、悩ましいところです。


■好転した流れと立ちはだかる課題


しかし、3DSとPS Vitaの展開以降に訪れた「携帯ゲーム機の空白期間」の頃と比べれば、「携帯性のある機器」が再注目された現状は決して悪い流れではありません。


任天堂はユニークな体験にこだわっており、スイッチ後継機と新型携帯機を連動させるような“新たな遊び”を生み出してくれる可能性もあります。また、スイッチが開拓した「スマホよりリッチなゲーム体験を携帯したいニーズ」を、SIEが新たに狙う展開もないとは言い切れません。


スマホにサブスクと、可処分時間の奪い合いは年々厳しくなるばかり。また、携帯ゲームにリッチな体験を求めると、スペックは当然高くなり、価格も相応のものになるでしょう。


ゲーム以外のライバルとの競争、価格設定と購入意欲の両立など、課題は様々ありますが、スイッチのヒットで変化の兆しを迎えたのも事実。今後、新たな携帯ゲーム機が登場することを、ひとりのゲーマーとして切に願うばかりです。




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