懐かしさと新しさが融合した体験に興奮!『FF』大ファンが『FANTASIAN Neo Dimension』をプレイしてみた【先行プレイレポ】
インサイド / 2024年12月4日 20時0分
「新しくも懐かしい」月並みな言葉ですが、『FANTASIAN Neo Dimension(以下、ファンタジアン)』をプレイしたらそう思わざるを得ませんでした。
本作は、Appleのサブスクリプションゲームサービス「Apple Arcade」で提供中のオリジナル版『FANTASIAN』が、ボイスや難易度設定などの追加要素を実装して、コンシューマーとPC向けに発売される決定版です。『ファイナルファンタジー(以下、FF)』の生みの親として知られる坂口博信氏が、スクウェア・エニックスから独立後に設立したミストウォーカーによって開発。坂口氏自身もプロデューサー兼シナリオを手がけ、本作を彩る音楽も『FF』の多くの作品を担当する植松伸夫氏が作曲しています。
そんな『FF』シリーズを作り上げてきたクリエイターの作品が、今回スクウェア・エニックスのパブリッシングによって販売されるという状況に、多くの人々は「坂口さんがスクエニに帰ってきた!」と騒然。もちろん『FF』の大ファンである筆者も胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じました。私は『ファンタジアン』がもともと気になっていましたが、Androidユーザーのためプレイを断念。そのため移植版が発表された際には飛び上がって喜んだという経緯があります。
今回は発売前に先行プレイの機会をいただいたため、私のような気になっていたけど遊べていない人や、今回はじめて知って気になっている方に向けて、ストーリー前半部分を中心に『FANTASIAN Neo Dimension』の魅力に触れていきます。
◆ド直球の王道ファンタジーストーリーが味わえる
まずは『ファンタジアン』のあらすじを簡単にご紹介をしましょう。舞台は「死械球」と呼ばれる人間の命と感情を奪う球体が、世界を恐怖に陥れている世界。主人公の「レオア」は、記憶喪失の状態で周りを機械が覆う謎の世界で目を覚まし、巨大なロボットに追いかけられてしまいます。
手がかりとなるのはいつの間にか所持していた“自らの記憶にある場所へ移動できる”ワープマシン。ですが、記憶を失くしたレオアは発動することができません。いよいよピンチに陥ったとき、あるひとりの少女の顔が脳裏をよぎり、彼女のもと行きたいと願ったことでワープに成功します。
到着したのは「エン」と呼ばれる辺境の街。そこでレオアは、街へワープする直前に思い浮かんだ少女と出会います。「キーナ」と名乗る彼女は過去にレオアとも面識があるそう。しかし、なぜか思い出すことが出来ません。
そんな中、エンの街は突如として「死械球」を世界中にバラまく張本人「邪神ヴァ厶」に襲われます。命からがら逃げ出した二人は、記憶を取り戻すためにレオアの父「バナード」の足跡を辿りながら、「死械球」や「ヴァム」の存在に関するこの世界の謎へと迫っていきます。
本作およびApple Arcade向けのオリジナル版は『ファンタジアン』という新たな物語を紡ぐ完全新作。ですが坂口氏が関わっていることもあってか雰囲気がどことなく初期『FF』の面影を彷彿とさせ、シリーズファンの筆者の肌に非常に合いました。
そんな本作のストーリーにおける魅力は、なんと言ってもJRPGの「王道」が味わえること。運命的に少年と少女が出会い個人的な事情を追いかけていく中で、徐々に世界の危機と自らの道のりが接続されていくスケールの大きさが特徴です。
思わず「これこれ~! こういうのがやりたかった!」と言ってしまうような、ド真ん中にストレートを投げられたかのようなシナリオ。そして王道な物語だけでなく、「レオアはいったい何者なのか」「この世界はいったいどういう場所なのか」といった謎がテンポよく徐々に明らかになっていくスリリングな展開は、止めどきが見つからないほどに熱中できました。
ストーリーの要所には、各キャラクターの回想をビジュアルノベル形式で読める「記憶」が存在し、キャラの背景が語られたり重要な事実が明らかになったりします。植松氏による美しい調べに乗せて丁寧に過去や心情が語られるのは心に響くものがあり、探索やバトルとはまた異なった情緒的なプレイ体験が味わえました。
またネタバレ防止のため詳細な言及は避けますが本作は二部構成となっており、中盤以降はストーリードリブンで一本道に近かった序盤とは異なり、新システムも大量に追加されクエスト形式で各地を飛び回るシナリオへと変更。最後まで飽きることなくプレイできるのも特徴です。
◆体験したことがないスキルの軌道を操作するバトルシステム
本作のバトルはオーソドックスなターン制コマンド式ですが、「エイミング」「ディメンジョン」という2つの特徴的なシステムにより、ほかのタイトルでは味わったことのない直感的で戦略的な戦闘が行えるのが魅力です。
エイミングは、“スキルの軌道を操作して戦う”という作品のキャッチコピーにもあるように、バトルの軸となるシステム。今回の移植版ではコントローラーのスティックを動かして、キャラクターが発動するスキルの軌道を操ることができます。
そしてエイミングシステムのキモは、どれだけスキルで巻き込むことができるかにあります。このシステムを使って細かく軌道を調整した結果、フィールド上の敵を多数巻き込めたときの爽快感は、まさしく本作でしか味わえません。
スキルの軌道には、直線、カーブ、円範囲など多くの種類が存在します。敵の中には「ガード」を使ってこちらがエイミングで狙っていた軌道を遮ってしまうものおり、そんなときは直線やカーブではなく、円範囲で周りごと巻き込むなど、戦略的なスキルの使い分けが必要です。
当然、パーティー内の編成位置によってもスキルの軌道は変化するため、バトルに対してプレイヤーが考えることが多く、忙しくも楽しい体験が味わえます。
またエイミングシステムの説明を聞いたとき、「それなら出現する敵が多いほうが、たくさんスキルに巻き込めてもっと楽しいのではないか」と思ったゲーマーの読者もいるのでは無いでしょうか? それを考慮した要素が「ディメンジョンシステム」として実装されています。
これは一度倒したことのある敵をエンカウント時に別次元に閉じ込めるシステムで、最大30体(ゲーム開始初期)の閉じ込めた敵と、任意のタイミングで戦うことができます。
つまり探索やストーリー攻略に集中したいから一旦敵とは戦いたくないという場合や、セーブポイントの手前で安心して大勢の敵と戦いたいなど、活かし方もスキルと同じくプレイヤー次第な便利機能です。
しかも通常バトルとは異なり「ディメンジョン」を利用した戦闘では、フィールド上に「再行動」「攻撃力アップ」などのバフ効果が付与されたオブジェクトが発生します。エイミングを使い敵を巻き込んで攻撃するだけでなく、それらのディメンジョンで生まれたオブジェクトをいかに獲得してバトルを有利に進められるかも重要になっており、より一層プレイヤー自身の思考が試されることになります。
RPGのバトルはある程度システムを理解してしまうと、雑魚戦が流れ作業になってしまう傾向にありますが、本作はまさしく一戦ごとに「どれだけ効率よく敵を倒すか」と思考を巡らせる必要性があり、飽きることなくむしろどんどんバトルがしたいと思えました。
◆ジオラマで作り上げられた世界は美麗で緻密
バトルと並ぶ『ファンタジアン』最大の特徴の1つは、手作りのジオラマを元に制作されたフィールドを冒険できることです。「ゲームでジオラマとはどういうこと?」と思う方もいるかもしれませんが、本作のマップはすべて現実で制作されたジオラマをゲームに取り込んだものなのです。プレイする前はジオラマの上を移動すると言っても、ゲームである以上従来の作品とあまり変わらないと思っていたのですが、いざ遊んでみるとまったく体験が違いました。
そして、そんなジオラマの美麗さを強調するのが、今回「4K解像度」に対応したことです。オリジナル版はApple Arcadeで配信されているタイトルということもあり、iPhoneやMacでのプレイが中心でしたが、本作は様々なプラットフォームに対応。大画面でジオラマを細部までじっくり観察することもできるようになりました。
記事上ではスクリーンショットでしかお見せできないのが惜しいですが、フィールドを歩いているだけでアニメ風とフォトリアルの中間とも言える、ジオラマ独特の質感や温かみの“実在感”が画面越しに迫ってくるように感じます。
ジオラマで描かれた世界にたたずむ3Dで表現されたキャラクターという構造が、メタ的に「ファンタジー世界に入り込む」というゲームの没入感を際立たせており、この独自の感覚を味わうために本作をプレイしてほしいと思うほどです。
しかし1点だけフィールドに関して気になった点があります。スマートフォンで画面タッチをして移動していた名残からか、移動時に固定カメラのアングルが頻繁に変化するため、画面が切り替わった際に混乱することがありました。
スマホの小さな画面でダイナミックにフィールドを表現する工夫だとは理解できますが、マップ上における位置関係の把握がしにくかったり、慣れるまで酔いそうになったりすることが多かったです。
画面表現とあわせて強化されたのが「音」です。植松氏によるオリジナルBGMに加えスクウェア・エニックスがパブリッシングした関係で『FF』コラボが実現し、『ファイナルファンタジーXIV』やナンバリング最新作『ファイナルファンタジーXVI』、『ファイナルファンタジーピクセルリマスター』などのバトルBGMに切り替えることが可能になりました。
筆者もさまざまなコラボを試してみましたが、本作のバトルは基本的にサイドビューが多いことから、『ピクセルリマスター』との相性が抜群だと感じます。BGMを切り替えてプレイしていると、ふと「今プレイしているのは『ファンタジアン』だっけ?『FF』だっけ?」と思うこともしばしばありました。
移植にあたってキャラクターボイスも実装されたのも嬉しいポイント。本作ではレオア役の内田雄馬さん、キーナ役の諏訪彩花さんをはじめとした声優陣が担当しており、イベントシーンやバトルの演出に花を添えています。オリジナル版と同じ環境でプレイしてみようと、ためしにボイスをオフにしてプレイすることもありましたが、やはりキャラへの感情移入度が全く異なり、本作に欠かせない要素のひとつになっていると感じました。
◆王道×斬新な作品が遊びやすくなった決定版
『ファンタジアン』は坂口博信氏×植松伸夫氏という、往年のRPGファンであれば見逃せない座組で制作されたタイトルですが、“あの頃の『FF』”というノスタルジーを喚起させるだけではない、新しさに満ちた作品であることを感じました。ジオラマという表現方法で描かれたフィールドは、今までとは異なるファンタジーへの没入感を生み出しており、またエイミングとディメンジョンシステムという直感的で戦略的なバトルはほかに類を見ません。
筆者が思うに、坂口氏が手がけ今なお輝きつづけている『FF』というシリーズは、共通する用語やコマンドなどはありつつも一つとして似たタイトルがないこと、つまり『FF』らしさが一言で言い表せないこと自体が魅力のひとつです。それぞれの開発者たちが、それぞれのリリース時期における最先端のゲームを志し、それを実現してきた開拓精神の体現とも言えるシリーズのありかたこそが、坂口氏がスクウェア・エニックスに残した財産であり発展を支えてきた気概ではないかと思うのです。そしてその精神は、環境こそ変われど坂口氏の新作として『ファンタジアン』にもしっかりと現れており、『FF』に感じている「次はどんな体験が味わえるのだろう」という斬新さに由来したワクワク感を覚えることができました。
今回の移植により、私のようにいままでプレイしようと思っていたけどプレイ環境がなかった『FF』ファンはもちろん、『FF』はプレイしたことがないけどRPGが好きなど多くのプレイヤーに届きやすくなりました。伝説のクリエイターの新作というだけでなく、現代JRPGの名作の1つとして遊んでみてはいかがでしょうか。
『FANTASIAN Neo Dimension』は、PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ向けに2024年12月5日より発売予定。価格は6,500円(税込)です。
詳しくは公式サイトをご確認ください。
© MISTWALKER/SQUARE ENIX
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