ナレッジワーカーとしての勝負はバリューチェーンをつくることができるかどうか/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2018年6月3日 23時32分
猪口 真 / 株式会社パトス
サラリーマンであろうが、フリーの個人事業主だろうが、会社の経営者だろうが、特に小規模の組織として市場に打って出る場合、バリューチェーンにおいて(仕事を通じて付加価値を生み出す業務プロセスだとする)、どこで勝負するか、あるいはしたいかを決めていくことは非常に重要なことだ。
ナレッジワーカーとして、「自分がその仕事をすることで、どのような付加価値が生まれるのか」を特定しなければならないということだ。
とはいえ、多くの人は、専門的な仕事をしているわけなので、本人的にはある程度の自信を持って仕事をしているだろうし、こんな思いを持っているはずだ。
「私はこの分野の業務管理においては誰にも負けない」
「プレゼンテーションの資料作りは得意だ」
「顧客ニーズに対応する業務系のシステム開発には自信がある」
などなど、いろいろあるだろう。
ただし、残念なことに、これらは大半が、いわゆる「担当」業務であり、言ってみれば、誰かが枠組みとしてバリューチェーンをつくってくれたからこそ存在価値があるということだ。
バリューチェーンとは付加価値を生み出す枠組みのこと
これまでのバリューチェーンの考え方は、大半が業務上のプロセスとして考えられていたケースが多く、その中で何ができるかを考えるに過ぎなかったともいえる。
これは、バリューチェーンをある種のサプライチェーンと考えてしまうために陥ることだが、サプライチェーンは、あくまで「モノ」の流れに着目し、顧客の手元にわたるまでのプロセスを考えるものであり、バリューチェーンの主役は、あくまで「バリュー」であり、どのように付加価値をつけていくかを考えなければならない。
仕事の流れの中の担当としてしか考えることができなければ、たとえその仕事がナレッジワークだとしても、その業務を担う一人のスタッフという意識から出ることはできず、バリューを生み出す一員にはなりえていないだろう。
しかし、バリューチェーンの中の一業務は、「今」の時点で考えれば、確かに素晴らしい存在なのだが、競争も激しいし、労働条件も厳しくなる(コスト競争になっていく)。
本当のプロフェッショナルとして、大きな仕事(成果)を成し遂げようとするなら、バリューチェーンそのものを改革しなければならない。
バリューチェーンそのものを生み出す
少し極論かもしれないが、ナレッジワーカーとして大きな価値を生み出すには、バリューチェーン(プロセス)そのものを生み出すことが必要となる。
世に言われる、プラットフォーム化や人の流れを変えるような大規模な施設開発、精鋭たちを集めたチームによる新たなビジネスモデルづくりなど、これらはすべてバリューチェーンを新たに生み出したものだ。
こうした大きな枠組みをつくるのは、資金も人脈もスキルも、並外れたものが必要となるため、誰でも、というわけにはいかないだろうが、まずは、現在の枠組み(プロセス、チェーン)を改善することはできないか? 統合したり無駄を省くことはできないか? 違う枠組みをつくることはできないか? を考える癖をつけることだ。
また、現在のバリューチェーンのつくり直すことは、既得権益もあり、実際には難しいことの方が多いので、次のようなアプローチを常に考えておくことも大切なことだ。
1つめは、複数のバリューチェーンを合わせることはできないかを考える。
私たちの周囲では、実に多くのバリューチェーンが存在している。多くのプロジェクトが動いていると言ってもいい。それぞれの中でだけ仕事をしていれば、結果はあまり変わらないが、一緒にすることで、スケールの大きな仕事ができるかもしれない。
簡単なことではないが、複数のバリューチェーンを様々な順列、組み合わせを行うことができれば、新しいビジネスが生まれるチャンスは各段に広がる。
次に、バリューチェーンが大きくなると、自分ひとりの力では動かすことが難しくなる。そのときは、トータルなバリューチェーンの中に、自分独自のバリューチェーンをつくることはできないかを考える。
自分の仕事が、単に次の工程への橋渡しでしかない場合、決まったインプットとアウトプットを繰り返すだけになってしまい、大きな結果の改善にはつながりにくい。自分の仕事の前工程の周囲を観察し、自分を通過させることで、新たな枠組みをつくることができないか、あるいは別のアウトプットができないか、小さくてもいいので、常に考える習慣をつけよう。
最後に、自分自身の中でのバリューチェーンを変革することだ。
いくら外の枠組みを変えることができたとしても、その中で以前のアウトプットしか出せないのならば、まったく意味のないことだ。目的は成果を上げることである。ナレッジワーカーとして大きなアウトプット(新しいビジネスモデル、新しいプロジェクト、新しい商品やサービス)を生み出そうと思うならば、自分自身のインプットからアウトプットのプロセスを変革することがもっとも重要なことだ。
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