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【弁護士監修】特別条項付き36協定とは/労働問題の解決に役立つ法律メディア 労働問題弁護士ナビ編集部

INSIGHT NOW! / 2018年6月29日 12時15分

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労働問題の解決に役立つ法律メディア 労働問題弁護士ナビ編集部 / 株式会社アシロ

特別条項付き36協定とは、残業時間の上限を一時的に延長することができる臨時的措置のことです。36協定を結ぶ際に、残業時間を延長する恐れのある事情や延長した場合の上限時間などを記載し、労働基準監督署に届け出ることで繁忙期や納期切迫時に発動させることができます。

長時間労働などで問題視されている特別条項付き36協定ですが、残業時間の延長を発動するためにはさまざまな条件があります。

この記事では、特別条項付き36協定や制度利用の際に配慮すべき点についてご紹介します。

36協定で押さえたい特別条項とは

会社が労働者に時間外労働をさせる場合、36協定を締結しなければなりません。36協定では、最大月45時間までの時間外労働を行うことができます。

一方、業種によっては一時的に労働時間が増えることもあります。その際は36協定の特別条項を発動させることで時間外労働の上限時間を延長することができます。

この項目では36協定と特別条項についてご紹介します。

36協定による残業の上限時間を延長するためのもの

特別条項付き36協定とは、36協定を締結する際に特別条項として『特定の場合には、時間外労働の上限を超える』旨を記載し、締結することです。

36協定によって延長できる時間外労働の上限は、一般の労働契約で月45時間、変形労働時間制などの場合で月42時間とされています。これに特別条項を付帯させた場合、合法的に残業時間の上限を延長することができます。

残業時間の延長はあくまでも臨時的措置

特別条項付き36協定の発動は、繁忙期や納期切迫など特別な事情によって労働時間が伸びてしまう場合に限ります。

また、残業時間の延長を発動する際は1年の半分を越えない範囲(6回まで)に留めることが要件とされています。

なお、みなし残業が60時間と設定されている場合は36協定では許容されない長時間労働が常態化していると考えられます。この場合は特別条項を付帯させたとしても、上限範囲を超えることはできません。

締結する際は労働基準監督署に届け出が必要

特別条項を付帯させる場合は、以下のことを労使で協議し、『特別条項付き36協定届』を管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

◇原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
◇限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
◇一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続
◇限度時間を超える一定の時間
◇限度時間を超えることができる回数
引用元: 厚生労働省|1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し関係

なお、特別条項付き36協定届では1ヶ月単位、1年単位での計画的な残業時間の延長を計画し、書類を作成しなければなりません。そのため、自社で新たに特別条項付き36協定を結ぶ際は、弁護士などの専門家に計画した残業時間の延長が法律に則したものか、確認してもらうことをおすすめします。

特別条項付き36協定が発動できる条件と回数制限

この項目では、特別条項付き36協定によって残業時間の延長ができる条件や回数についてご紹介します。

条件|臨時的と認められるもの

特別条項付き36協定は、特別な事情がない限りは発動することができません。厚生労働省では、特別条項として臨時的と認められる事情をいくつか定義しています。

臨時的と認められるもの

  • 予算、決算時期の会計業務
  • 小売業などでのボーナス商戦に伴う業務の繁忙
  • 納期が切迫した場合
  • リコールなどによる大規模なクレームへの対応
  • 突発的な機械トラブルへの対応

参考: 厚生労働省|時間外労働の限度に関する基準

臨時的と認められないもの

以下の場合は臨時的と認められず、残業時間の延長が違法なものと判断される可能性もあります。

  • (特に事由を限定せず)業務の都合上必要なとき
  • (特に事由を限定せず)業務上やむを得ないとき
  • (特に事由を限定せず)業務が繁忙なとき
  • 使用者が必要と認めるとき
  • 年間を通じて適用されることが明らかなとき

参考: 厚生労働省|時間外労働の限度に関する基準

回数|1年の半分を越えないこと

残業時間の延長は、特別な事情があったとしても1年の半分を超えない範囲内に収めなければなりません。月の残業時間の延長を行う場合は少なくとも6回以内に収めないと長時間労働として労働基準監督署の指導対象となる可能性もあります。

特別条項付き36協定で残業代が変わる?

特別条項付き36協定では、2008年から長時間労働を抑制するために割増賃金の改正が行われました。

特別条項付き協定を結ぶ際には、新たに
① 限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3か月以内の期間、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること
② ①の率を法定割増賃金率(2 割 5 分以上)を超える率とするよう努めること
③ そもそも延長することができる時間数を短くするよう努めること
が必要になりました
引用元: 厚生労働省|時間外労働の限度に関する基準

そのため、月45時間(変形労働時間制の場合は42時間)を越えた場合、残業代の割増率と1.25倍以上に設定する努力義務があります。

残業時間の延長で配慮すべきこと

特別条項付き36協定には具体的な上限時間がないため、労働時間が長くなりやすいものです。

長時間労働は労働者の心身にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があり、会社側の安全配慮義務を問われる可能性があります。

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用元: 労働契約法

この項目では、残業時間の延長を行う際に注意すべきことについてご紹介します。

過労死ライン

残業などの時間外労働が月80時間を超える場合、過労死ラインと呼ばれ、脳や心臓などに重篤な健康被害を及ぼす可能性があるとされています。

長時間労働で月の残業時間が80時間ないし、急激に業務量が増えた場合などは早い段階で無理をせず休むようにしましょう。

パワハラ

長時間労働はパワハラによって起こる場合もあります。会社や上司が特別条項付き36協定の利用方法を誤って理解していることで、残業命令を過剰に行い、結果的に労働者の健康を脅かす可能性もあるのです。

まとめ

働いている業種によっては、残業などの時間外労働が一時的に急増することもあります。特別条項付き36協定は、業種の特性によってどうしても労働時間が上限を超えてしまう場合に扱われるものです。ですから、正しく理解した上で必要なときに制度を利用できるといいですよね。

この記事で、特別条項付き36協定についての疑問が解消されれば幸いです。

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