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人生の転機を上手くドリフトして乗り越える/内藤  由貴子

INSIGHT NOW! / 2018年8月5日 20時59分


        人生の転機を上手くドリフトして乗り越える/内藤  由貴子

内藤  由貴子 /

◆キャリア形成とキャリアドリフト

先日、埼玉県の短大の授業で、学生さんにお話しする機会がありました。

テーマが「キャリア形成」だったのですが、私が会社員を辞めて、フリーランスのセラピストをしていることが、一つのキャリア形成パターンとして見てくださったようです。

その時に担当の先生が、「キャリアデザイン」の言葉と対比して、キャリアドリフトと言う言葉を紹介されました。

キャリアドリフトは、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツがの約20年前の「 計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」によるもので、彼は「キャリアの8割は、予想しない偶発的なことによって決定される」と言います。ドリフト(drift)とは「漂流する」という意味です。
 人生には予想外のことが起こります。それゆえ「キャリアはデザインするものではなく、デザインするのはむしろ危険である。それよりは、現在の状況の中で最善の努力をしていれば、偶然の中でそれが生きてくる」というクランボルツの考え方はとても興味深いと言えます。

 そうしてみると私は、きっとそのドリフトの良いモデルだったのでしょう。

◆キャリアドリフト、自分の場合

私のケースを振り返ると、新卒で百貨店に勤務。営業を経て、海外ブランドのファッション販売を担当。
売上は落とさなかったもののファッション販売は合わなくて体調を崩すほど。
一計を案じて異動をお願いし、配属先はたまたまカルチャースクールでした。
カルチャースクールは、私の定義では「自分探しをする場所」。
趣味だけでなく、そこで資格や技術を身に着けた人が、新たな人生へシフトする場でした。
そのサポートをする役割が、私にとってはやりがいであり、生きがいとなり、すっかりワーカホリックになってしまいました。

そんな中で立て続けに二度、病に倒れ、何とか復帰したのもつかの間、なぜか今度はその部署が閉鎖を会社が決めました。
病気は二度ともがんでしたが、再発の不安もあって、部署閉鎖は生きる意味を奪われたようで、病気以上にショックでした。

正社員だったので、異動すればいいことでしたが、この会社ですることはやり尽くした感があって自ら退職。

しかし、後で考えるとこの閉鎖すら、あらかじめ人生に仕組まれたことのようにさえ思える転機となりました。
私は病気の再発の可能性を抱えてそのまま同じような仕事を続けていたら、今も命があったのか、わかりません。

しかし、退職後、転職の厳しさに自らの甘さを知り、何とか某ベンチャーに潜り込んだものの1年足らずで、経営不振で再度退職。

この時点では、ドリフトしながら、いくつかの会社を受けるうち、ある企業に何度も呼ばれ、決まったかと思うと不採用になる経験をし、どうやら会社員に戻るのは、難しいと直感し、腹をくくりました

では、どうやって食べていくのか。
出た答えは「カラーセラピーを、やってみるか」でした。
カルチャースクールで担当したご縁で、退職時に長く働いたご褒美のような気持でカラーセラピーの講座を受け、すでに資格を取っていました。
やると決めたら独立を視野に入れて、イギリスにも行って講師の資格まで取りました。

セラピーは、最初はバイトで現場体験をさせてもらい、自分がコレでやっていける自信を養いました。
ちょうどカラーセラピーが少しブームになったこともあり、自分がカルチャースクールの講師となり、生徒さんも集まってきました。

そんな中で、臨床心理学とカウンセリングを教わったことで今のフラワーフォトセラピーにつながる師匠とも出会います。
かなり臨床心理学を要する相談が来ているので、もっと学ぶ必要を感じたからです。

食べるための仕事のつもりが、ある時、カルチャー時代の仕事との共通項に気づき、はっとしました。
「自分が関わった人を新たな人生へシフトする場」、この点では前職もセラピーも全く同じだったからです。

こうしてみると、自分のケースをキャリアドリフトの視点で見ると
「現在の状況の中で最善の努力をしていれば、偶然の中でそれが生きてくる」とはよく言ったものだと思います。

◆ 本来の流れを妨げるもの

しかし、この流れを妨げるものがあります。
それが今、私が専門としているフラワーフォトセラピーで扱う「ストレス感情」です。

たとえば、私はなぜ、ワーカホリックになったのでしょう?
当時の私は、仕事を認められた感覚、今のSNSに例えれば「いいね!」をたくさんもらったような心地良さに
自分の存在意味を見出し過ぎたと今では言えます。結果としてかなり身体にも無理をさせました。
実績を積めば、少しは自信もつきましたが、根本的な自己肯定感は決して高くはなりませんでした。

また、仕事で自己実現しているような幸せの中で倒れました。それも懲りずに2度も。
フラワーフォトセラピーでお伝えすることに「幸せ禁止令」と呼んでいるストレス感情があります。
幸せを禁止しているのに、それを破って人生の幸せを得た時、命令違反の自己矛盾から、幸せと反対に振り子が振れた可能性があります。

短大の講義でも、フラワーフォトセラピーを応用したワークによって、そんな感情に気づいて解消する大切さをお伝えしました。

◆ 人生の葛藤、迷いを生むもの

自分のこころが求めることに素直になれない葛藤について相談を受けることも多いです。
多くは、自分を責めること、自己肯定感の低さや恐れ、人の目を気にする傾向、
周囲から「~ねばならない、~べきだ ムリ、できっこない」と可能性に縛りがかかり、心の柔軟性を欠いた場合などです。
「お金」や「家族」など、葛藤の理由はいろいろと言うけれど、実は自分にあきらめさせるように語る人が多いのです。

さらに、自分がしたいことをしようとした時「そんなことをして食べていけるのか」「いつまで夢を追っているのか」
「もっと安定した生活を考えろ」
そんな雑音が外圧のように聞こえることがあります。

私が会社員を辞めた1997年、大手のY證券が倒産するという大きな事件がありました。
もう10年近く前ですが、NHKでY證券にいた人のその後を追ったドキュメンタリー番組があり、そこに出てきた人が仕事場近くのイタリアンのシェフだったので驚いたことがあります。
退職後、確か同じような仕事に就いたけれど体調を崩し、自分が何かを変えないとこの状況は変わらないと思い、自分の心に聴いた答えが、イタリアンの店を出すことだったそう。

奥様がお店を手伝っていらっしゃいましたが、番組では「会社員の妻でいたかったけれど…」とおっしゃっていました。
もしかしたら上に書いたような外圧もあったかもしれません。家族にとってもきっと節目だったことでしょう。倒産に加え体調を崩したことが、本当の転機だったのかもしれません。

◆ 人生で迷った時、助けになること

迷った時、あるいは自分がどうしていいのかわからなくなった時、
「自分はどうしたいのか?」
自分に聞いてみるのは、きっと助けになるはずです。
出産退職やリストラなど、何か起こった時だけではありません。

そこで気づいた答えがどんなものであれ、それに従うかどうかは、自分の意志と逆行する要素がどれだけあるかで変わります。
人生の節目は、そんなことに気づいた時にも起こります。

たぶん、そんな自分の心の声に気づいてしまう人は、
「人生、ただ安定した生活ができればいい」とは思っていない可能性が高いです。

ところで「流れ」とは、何でしょうか 老子が 道(タオ)という言葉で伝えていることかもしれません。
道とは宇宙生成の流れのようなもの。もし、本来の流れを妨げるようなものが無ければ「無為自然」に人生が流れていきます。策を弄するようなことを為さなくても、自ずと然る、なるようになるはずですから。

まじめな人ほど、先に「人生の目的を見出さなければ…」とか、「私の人生の使命は何?」と思って探す人もいるのですが
たいていの場合、自分から探しに行っても見つからない方が多いようです。
人生は、漂流するような感覚でいると、案外、本来行くべきところに近づけるのかもしれません。

※ 当初、キャリアドリフトについて、コトバンクより引用しましたが、そちらの記載内容ではなく、改めて本文に挙げたスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツによって「 計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」として考案・提唱された理論をご紹介しました。当初の内容を書き直させていただきましたが、ご了承ください。


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