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パワハラも挨拶だった?昭和スポーツ帝国の終焉/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2018年8月6日 7時22分

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増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

1.昭和スポ根マンガは全部パワハラ
本職・駄文書き、副業・人事コンサルタントである私は、いや逆だ、本職が組織管理や組織コミュニケーションの改善を図る一方、こうした駄文書きもしている私です。(自分を卑下するのは良いが、媒体まで貶すことになる切腹)講師としていろいろな公共団体や会社などで講演をして回っていますが、特にここ最近は「ハラスメント研修」のご依頼が多数きています。

そのハラスメント研修で自らの行動を顧みてもらう自己チェックなどで、こんな例題があったらどうでしょう
・父親が口答えした息子にちゃぶ台をひっくり返す
・小学生の子供を金属製スプリングで縛り付けるギプスを強要する
・右利きの子供を無理矢理左利きに改造する

すべて完全アウト。ハラスメントを越えて、児童虐待でこれまた別の社会問題になっている事象となります。しかし昭和の子供だった方ならお気付きでしょう。大ベストセラー、大ヒットマンガとなった「巨人の星」より抜粋でございます。大人気漫画の世界では、昭和の時代、こうしたハラスメントや児童虐待などが普通??に描かれていたのでした。

ちなみに巨人の星でもあしたのジョーでも「水飲んじゃダメ」「ウサギ飛び」などのトレーニングは普通にやられていました。だって私ですらやらされたもの。故・梶原一騎先生が築いた「スポ根マンガ」と呼ばれるジャンルは、漫画雑誌やテレビ漫画として超絶なヒットをし、莫大な売り上げ、ビッグビジネスとなりました。つまり、社会がこうした今ならハラスメント・犯罪行為になることを、挨拶かのように一般的なこととして受け入れていたともいえます。(今はダメですよ、ゼッタイ)

2.押し寄せる法律改正
平成29年の改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法成立は、単にマタハラ・セクハラを禁ずるだけでなく、企業や団体組織に、その防止措置(周知・啓発、相談窓口整備等)を講ずることを義務付けました。もはや「当事者間の問題」ではなく、対策を講じない団体そのものが責任を問われるようになったのです。

事実婚、LGBTなどあらたな価値観多様化・ダイバーシティという考え方もどんどん普及しています。「そんなのは自分に関係ない」では済まなくなったのは、法律環境までがこうした変化を後押ししいているからです。

そしてこうした動きの強力な推進力はいうまでもなくインターネットであり、SNSという武器を手にした一般人です。かつて情報発信はマスコミ以外不可能でした。新聞・テレビの全盛期である昭和の時代は、一般人はマスコミが教えてくれる情報以外、ほぼ直接入手はできません。結果として世論含め一方通行の情報の流れが標準でした。

今問題として糾弾されている団体トップの皆様は、山根会長(78歳。諸説あります)、至学館栄前監督(57歳)、日大内田前監督(62歳)と、そろそろ最新のサイバー環境などには疎くなるお年頃。私含め、もうそんな最新装備とか覚えられないからと素直に思える年齢です。

しかし最新機種の携帯をゲットするため並ぶ気はなくとも、法律を「知らなかった」では済みません。特に組織のリーダー、トップともなれば、重大な責任が伴うことにも、少し無自覚すぎると思います。かつて昭和の時代の大臣や取締役は名誉職でした。「担当分野は素人です」と堂々と大臣就任インタビューで答えてしまう政治家や、株主代表訴訟のリスクもなかった頃の役員は、単なる名誉だけで済んだのでした。しかし今はもう無理です。ここに気付かない「昔の人」で偉い人は、歩くリスクの塊といえます。

3.(スポーツ)帝国主義の終り
今年話題に挙がったトップの皆さんですが、パワハラ始めずさんで不明朗な会計、暴力といった「今はすべてダメ」になった、一方昭和時代は見逃されていた価値観だけの世界で育った人たちだといえます。あのコワモテの山根会長ですら、インタビューで直接話す姿は年齢もあり、ちょっとレスがちぐはぐなお爺ちゃんと感じました。

恐らくお三方ともに、もっと酷いパワハラや理不尽な指導と称するシゴキなど受けて育ったのではと想像します。やっと自分が天下を取り、これまでの負債を全部回収したところ、時代が変わってしまいそれが許されなかったということではないでしょうか。

既に亡くなった「昭和の名監督・指導者」と呼ばれる方の中にも、もしかすると今の基準で照らし合わせれば完全アウトな指導をしていた可能性は低くないと思います。そもそもこういった人たちは全く悪意すらなく今でいうパワハラを、空気や挨拶のようにしていたのだろうと思います。

今、奴隷貿易を認める国はありません。しかし南北戦争終結まで奴隷取引はありました。奴隷は正当な商品でしたから、今の先進国すべてでこうした取引は歴史上あったのです。その後帝国主義政策が推進され、奴隷という形式は消えていったものの、二重支配による植民地経営など、形を変えた非人道的支配手法は今でも完全にこの世から消えてはいません。

少なくとも奴隷制度はダメと認識は定着しました。他国を侵略して勝手に植民地にし、二重支配構造で原住民を搾取することは帝国を維持拡大するための原動力でした。価値観の変化で帝国は存立できなくなったのです。

意識改革が遅れているスポーツ界は、こうした社会環境の変化について来れているのでしょうか?ボクシング、レスリング、アメフトと、これだけ異常な行為が無批判に維持されていたということは、きっと他のスポーツでも多かれ少なかれ、まだまだ根深く問題があるのでは?という疑問は消すことができません。

独裁者を放置することこそ、その組織の危機管理上最大のリスクであることを認識しなければならないでしょう。

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