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コワーキングスペースは、新たなビジネスチャンスか/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2018年8月15日 18時39分


        コワーキングスペースは、新たなビジネスチャンスか/猪口 真

猪口 真 / 株式会社パトス

一時期、シェアオフィスやレンタルオフィスというと、お金のない起業したての若いビジネスマンや新規の事業部や営業所などの設置というような、どちらかというと、とにかく費用を安くしたいというイメージのものだった。

ところが昨今、こうしたオフィスが非常に増えており、イメージもまったくネガティブでなく、むしろ、今風な感覚すらある。呼び名もいつの間にか「コワーキングスペース」と言われており、すっかり様変わりの様相だ。

急増するコワーキングスペース

JLLの発表した資料によれば、東京オフィス市場のコワーキングスペースがここへきて急拡大しているという。特に東京、千代田区、港区などの東京都心5区で増大している。中でも、世界的に拡大している「WeWork」の日本進出が注目されている。

この「WeWork」に投資しているのは、ソフトバンク・キャピタルであり、三井不動産はWorkstyling、NTT開発はLIFORK、またサービスオフィスのRegusは、Spaceを買収した。

これは、国の「働き方改革」の推進による、生産性向上や働き方の多様化への対応という側面が強いが、もちろん、従来型のスタートアップ企業の活用や、大企業のテストマーケティング的なコミュニティ志向の表れでもある。

レンタルオフィス、シェアオフィス、そしてコワーキングスペース

このコワーキングスペース、微妙な違いはあるにしても、似たようなサービスは存在した。

このコワーキングスペースが従来のレンタルオフィス(共用含む)とどのような違いがあるのかを見ていこう。

レンタルオフィスは昔からあるサービスだ。私自身、15年ほど前の起業時には、初期投資を抑えたくて数件のレンタルオフィスを検討した。当時はあまりバリエーションも多くなく、ランニング費用も新たに賃貸オフィスを借りるのとあまり大差ない感じではあった。

ただし、事務所を事業用として借りるとなると、10カ月程度の保証金はかかるし、ある程度のオフィスとしての設備も必要だ。初期投資を少しでも押さえたい起業志望の人にとっては、ありがたいサービスだ。

昨今、レンタルオフィスの中にも、ゴージャスな雰囲気と立地で、ブランド力を訴求できるような物件も出てきた。こうなると、コスト削減なのか、プロモーションとして投資するのか、よくわからなくなってくるが、総合的にみると、レンタルオフィスは、やはり差し当たっての利用という感じが否めない。

このレンタルオフィスを共同で使うイメージが、シェアオフィスだ。多くのシェアオフィスがフリーアドレス形式でデスクを使用するので、専用スペースはない。会議室などは別途用意されているケースもあり、WiFiやコピー機なども完備され仕事の使い勝手は良い。

ただし、共用だけあって、気は遣う。電話を自由にかけるのもはばかれるし、自分のオフィスという感覚はなく、その点、カフェ利用の感覚に近いかもしれない。なので、自分の基地にする感覚は薄い。

また、情報の管理にも気を遣う。書類やPC画面は基本的にオープンだ。当然、自分のデスクというわけでもないので、自分用に荷物を積めるわけでもない。仕事が順調に進みだせば、資料や書類はどうしても増えるし、必要なものだ。シェアオフィスの利用者で、自宅を書庫代わりに使っているという話をよく聞く。

レンタルオフィス以上に、移動時間やクライアントの近くの仮のオフィスという使い方がポピュラーだろう。

そして今、俄然注目を集めているのが、「コワーキングスペース」だ。今年、WeWorkの進出であっという間にトレンドとなった。ほとんど、シェアオフィスと同じなのだが、何が違うかというとコンセプトが違う。

WeWorkのCEO、クリス・ヒル氏は自社のコンセプトを「コワーキングスペースではなく、グローバルネットワークのコミュニティだ」というように、場所ではなく、コミュニティという「場」を提供しているということなのだろう。メンバー間のコミュニティにとどまらないイベントの開催やカフェやバーなども併設しているところもある。

理想的には、単なるオフィスとして使うのか、新たなコミュニティやシナジーを求めて、積極的にチャンスをつかみにいくのかというお題目となる。といった、いかにもアメリカ人的な匂いがプンプンとするコワーキングスペースだが、意外にこうしたところから新しいビジネスのタネは生まれてくるのかもしれない。

今後はおそらく、ベンチャーキャピタルや大手企業の研究施設、イノベーションの基地としての活用が増えていくのだろう。

ここにきて、様々なサービス形態が提供され始めたオフィス市場。1棟借り、1フロア借りといったこれまでの慣習がいきなり変わることはないだろうが、少なくとも、新規事業や新たなビジネスを興そうとする際、「場」という新たな機会、視点が生まれるのかもしれない。

そして、そうした「場」を提供するビジネスも、新たなビジネスチャンスとしてしばらく注目を集めると思う。

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