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製造業の本社のあり方/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2018年10月3日 12時0分


        製造業の本社のあり方/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社クニエ

先日シャープ株式会社が更なるコスト削減を目的に、あべのハルカスから撤退するという新聞報道がありました。

確かに都心のビル家賃は費用がかかります。都心にオフィスを構える企業の支出を見てみるとオフィス費用はトップ5に入る支出であったりします。

このようにコストがかかっても都心にオフィスを構える企業にはそれなりのメリットがあるのでしょう。特にサービス業にとってみると顧客向けのサービス拠点にもなりますし、企業のブランドイメージの向上にもつながるでしょう。また人材採用に有利という声もあります。社員の通勤の利便性を考えても、一概にコストがかかっているからと言って否定することはできません。

しかしサービス業はともかく製造業はどうでしょうか。製造業の本社は多くの場合プロフィットを稼ぎません。本社には営業部隊と経営層だけが駐在している、というのもよく聞く話ですが、その必要性については何とも言えません。もちろん個別の企業毎に状況は異なるでしょう。昔は監督官庁の近隣が望ましいなんていう事も聞いたことがありますが、もうそんな時代でないことは言うまでもありません。

いずれにしても製造業の本社ってどんな感じなのでしょうか。
ちょっと調べてみました。昨年度の売上上位30社の製造業種の企業の本社所在地です。

売上トップは言うまでもありませんがトヨタ自動車。トヨタ自動車の本社は愛知県豊田市トヨタ町です。2位は同じ自動車の本田技研工業。本田は東京都南青山に本社がありますが自社ビルのようです。以下、日産自動車、日立製作所、ソニー、パナソニック、新日鐵住金、デンソーと続きます。

結果、製造業売上トップ30社の中で東京都心(丸の内、大手町、銀座、日本橋、赤坂)と大阪中心(北区、中央区)に本社を構えている企業は13社です。約半数ですが半分を割る状況でした。

実際に調べてみると、、感覚よりも少ない感じがします。都心に本社を構えている製造業企業は思ったほど多くないのです。特に自動車関係は都心型は少ない。トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、デンソー、ブリヂストン、アイシン精機、SUBARU、マツダ、スズキの9社が売上トップ30に入っていますが、都心本社はブリヂストンだけです。(南青山の自社ビルの本田は除く)

徹底したものです。

冒頭で取上げたシャープもあべのハルカスに入居していたのは一部の営業部門で本社は別に立地しています。このように上位30社だけですが、製造業の都心本社は意外と少ないようです。

製造業にとって本社が都心にあることはどういう意味があるのでしょう。サービス業種同様、人材採用、ブランドイメージアップ、営業面でのメリット、通勤の利便性などが上げられるでしょう。でも色々考えてもあまりピンと来ません。都心本社を持たないというのは納得できます。殆どの製造企業はどこかに開発拠点や生産工場があるのですから、社員は皆が近くに居た方が効率は高まるでしょう。また、最近の働き方改革の流れではないですが、わざわざ痛勤電車に乗って会社に通うことも地方であればない訳ですし。(出勤渋滞はあるようですけど)

私の経験上デメリットをあげるとすれば、地方にいると会社と家の往復の生活になりがちで、世間一般の情報にうとくなります。しかしそれも感度の問題ですし今は様々な方法で情報を取ることができる時代です。

製造業ではないのですが、ZOZOTOWNを運営している株式会社ZOZO(10月1日~社名変更)は本社をあえて幕張においていることが有名です。また幕張地域に住む社員には「幕張手当」という月5万円の手当があり、全社員の約8割に支給されているそうです。当社のCSRブログを読みますと「幕張手当」は住宅手当でもありますが、一番の目的は地元幕張の地域活性とのこと。スタッフが幕張に住み幕張という街でお金を使うことによって、より一層幕張を活性化させたいという想いがあるようです。

このようなユニークな立地戦略を取っている企業もあるのです。企業の立地戦略は働き方改革や生産性、人的資源の採用や活用などと大きな関係があります。

大手製造企業やZOZOのような企業の本社のあり方を見ていると「いつかは都心に本社を」という昭和的な発想がやや時代遅れに感じてしまいますね。

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