「さがせ100万円、みつけろ10万円」企業体質を変えるJR九州会長の言葉/LEADERS online
INSIGHT NOW! / 2018年11月13日 11時0分
LEADERS online / 南青山リーダーズ株式会社
逆境でこそ楽天的に
1987年、国鉄が実質的な経営破綻により解体し、7つの会社に分割された。
そのうち、東日本・東海・西日本の"本州JR"3社は利益も潤沢に出せるような優秀な会社でスタートを切る一方、北海道・四国・九州の"三島JR"は大赤字でスタート。
九州の場合、鉄道の売上が当時1000億ほどで、およそ300億の赤字という体質でスタートした。
予想通り、本州3社は10年以内に上場を果たしたが、「JR九州は上場できっこない」と、当時の運輸省の担当者は思っていた。
当のJR九州の社員も「大変な会社に入ってしまった」と思う有様だった。
タケ:
頭抱えたんですか?前を向いたんですか?
唐池:
頭を抱えたし、強烈な危機感を覚えました。
これは当時の社長はもちろん、全社員が「このままでは潰れる」という危機感を覚えたのだが、九州の人は楽天的なのか、「なんとかしよう」と前向きになった。危機感がバネになったのだ。
革命の狼煙は、こうして上がった。鉄道業の改革や、鉄道以外の業種にもチャレンジした。
船乗りを目指す人もいれば、百貨店に研修に行く人もいて、徐々に鉄道以外の事業が成長していった。
株式上場したいという夢と、九州に新幹線を走らせたいという夢、どちらも無理だと思っていたが、九州新幹線は2011年に開業。
これで上場もいけるぞと夢が広がった。その後、2016年に上場を果たし、昨年度は最終黒字500億を計上するまでに至った。
「ようやくここまで来たな」と唐池会長も胸をなでおろす。
外食事業を黒字化。現場に大切なこととは?
国鉄民営化によってスタートしたJR九州で、唐池会長はさまざまな改革を断行した。
1993年には年間8億円の赤字を計上していた外食事業に着任して、見事2年で黒字化を達成。のちに、飲食店の東京進出まで果たすことになる。
唐池会長が外食産業に着任した当初、まともに事業として儲ける体質になっていなかった。
社員には「8億円」という赤字が重くのしかかり、元気がなかった。だから社員を元気にしようと「黒字にする」と夢を語った。
さらに、最初の店長会議で「我々外食軍団は戦うんだ!」と敢えて言ったことで、刺激された店長数名が一人また一人と戦う軍団として奮い立っていく。
その勢いは蔓延して、組織は前向きになっていった。
どのようにして現場は息を吹き返したのか?その一つに「コスト削減は楽しみながら」という唐池会長が掲げる言葉がある。
プロジェクト名は「さがみつ」「さがせ100万円、みつけろ10万円」だそうだ。
"億単位で赤字だ、1000万円コストを削減せよ"と言われてもピンとこない。でも10万円なら手が届く。
現場の駅でも「こうして10万円削減できました」という声がどんどん出てくる。物は考え様ということなのだろうか。
「新入社員には掃除を」これも唐池会長の教えである。
入社式で必ず「挨拶をきちっとしましょう、そして掃除をしましょう」と言う。一見、子ども扱いのようにも見えるが、掃除は仕事で最も大事なこと。
今、何をしなければいけないかが見えてくるのだそうだ。もちろん、唐池会長の机も整理整頓されているとのこと。
そして、「とにかく大きな挨拶しろ」とも訴える。挨拶をしたり、キビキビしたりすることでお店に「気」が集まってくる。
「気」が満ちたお店は繁盛する、「気」が満ちた会社は上手くいく、と信じている。挨拶の徹底にはそうした意味があるのだ。
豪華寝台列車「ななつ星」とは?
唐池さんが手がけた豪華寝台列車「ななつ星in九州」は総工費30億円をかけ、2013年にデビュー。
チケットの平均倍率は10倍と今でも人気を誇る。唐池さんは2年後に九州新幹線の開業を控えた2009年6月に社長に就任し、この豪華寝台列車構想を打ち出した。
なぜこのタイミングだったのか?それには、前述の夢が関係していた。
唐池会長は就任1週間で、部長を集めて「九州に豪華寝台列車を走らせたい」と宣言した。
なぜかというと、先ほど述べた2つの大きな夢のうち、「九州新幹線」は2年後の2011年に叶うことになっていた。
「夢が実現するということは、夢が無くなるということなんです」唐池会長は言う。
当時、鉄道以外のホテル業や流通業、小売業は順調に拡大を続け、次なる夢がどんどんと生まれていた。
しかし、鉄道事業は九州新幹線の次の夢がなかったのだ。「鉄道事業に次の夢を持たせたい。ならば、世界一の列車を作ろう。豪華寝台列車だ」と。
タケ:
ヒントになったものはあるのですか?
唐池:
マレーシアからバンコクまで走る"イースタン・オリエンタル・エクスプレス"です。
実際にそこに乗りに行って分かったのは、「何もしないで何も考えずに車窓を眺めるのが最高だ」ということ。
そのためには、車両をしっかりデザインして、車窓を眺める時間を極力長くした。テレビを置かず、接客サービスは対面とデジタルを一切排除した。
「ななつ星」のテーマは「新たな人生にめぐり逢う、旅」ここにも唐池会長の強い思い入れがある。
乗客は60代の夫婦が多い。今までの人生を振り返りながら、これからの人生を考える絶好の時間になる。
それと同時に、夫婦2人で3泊4日一緒にいることで、配偶者のことを考える機会になる。自分の人生、配偶者の人生にめぐり逢う。
さらに、客室乗務員や地元の人と触れ合う。
「だから、『新たな人生にめぐり逢う、旅』なんです」唐池会長は力強く語った。
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【転載元】
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