ビジネスで天下をとれないのでプロ卓球へ。「Tリーグ」チェアマンの武者修行/LEADERS online
INSIGHT NOW! / 2018年11月20日 11時0分
LEADERS online / 南青山リーダーズ株式会社
卓球少年、将来はラケット一本で食う自信
チェアマンの松下浩二さんは、オリンピックに4大会連続出場記録をもつ、世界的な卓球選手だった。
海外でプロプレーヤーとして活躍した経験や知見が日本でのプロ卓球リーグ設立に活かされている。松下少年の卓球人生は、9歳から始まる。
「兄貴が中学の卓球部で、部活以外に夜も近所の卓球場で練習をしていました。父が兄の送迎をしていたのですが、ついでに卓球で遊んでいるうち、大好きになりました。スポーツは野球や水泳、剣道もやっていましたが、団体競技には向いていないんですよね。
卓球は自分の力で勝てるし、勝敗が白黒はっきりしていて性に合っていました。小学校5年生から卓球一本、将来は日本チャンピオンになって、大学生で世界チャンピオンになる、卓球で生活していくという目標をたてていました」
アマチュアとしてはトップクラスの選手となり、実業団に入った。負けん気が強い性格で、会社員としても働きだすと、会社員としても上り詰めたいと思うようになったが、卓球三昧の学生時代を送ったこともあり、ビジネスでは天下をとれないと悟った。
「自分が世界で勝てるのは、卓球しかない、日本で誰よりも早く、一番にプロ宣言をすることが、男としての価値だと思ったんです。プロになるにあたっては『お前バカだなあ』と、ほとんどの人に止められましたが、先駆者利益にかけようと思い、プロ選手になりました」
プロ選手として世界のリーグで武者修行、生の知見を積み上げる
プロ宣言後、日本で活動した後、単身ドイツのブンデスリーガに挑戦する。
「ドイツのブンデスリーガでは、優勝すれば1部リーグに上がれるというので、35勝3敗という成績をあげ、デュッセルドルフのチームから声がかかりました。そして、2シーズン目でヨーロッパのチャンピオンリーグで優勝。
個人戦ですから、勝てないとチームには残れない仕組みで、その後3シーズンドイツに残り4シーズン目からフランスのリーグ、中国のプロリーグでも2シーズン、のべ9シーズン海外で活動したことになります。中国では、オリンピックのチャンピオン選手が同じチームにいる、という貴重な経験をしましたし、世界のリーグをこの目で見て回ったって感じですね」
日本に帰国後、大阪で3年間活動した後、選手生活を終えた。
「海外での経験を通して、帰国したら日本にリーグを作ろうと思っていました。1997年にドイツに行ったときから考え初め、2009年に帰国した時には、プロリーグ構想がありました。本当に実現するのは、簡単にはいかなかったですが…」
日本には40年卓球界を支えてきた実業団があり、Tリーグを設立するといっても、統合できるわけではない。
「実業団の歴史や役割は理解できますが、メダルまで届く選手を育てるには、実業団とTリーグの両輪が必要です。働きながら卓球をする人は実業団で、ラケット一本に賭けようというならプロでという選択肢があることが、選手にとってはいいことだと信じています」
世の中の役に立つリーグの社会的な一面
Tリーグは、2010年の3月にプロジェクトチームが立ち上がり、現在に至る。
立ち上げるにあたり、一番の苦労は、新リーグの認知度の低さ、意義の伝わりにくさだった。
「プロリーグの機能は、ただ勝敗とか、お金を稼ぐためだけのものではありません。プロが盛り上がることで、チームがある地域も盛り上がり、卓球人口が増え、個人が健康になったり、コミュニティを育てたりするなど、社会貢献的な意味が大きいと思っていますが、構想はなかなか伝わらないですね。開幕すれば分かっていただけると思います」
プロスポーツのそういった側面は、50年以上の歴史があるドイツの卓球リーグが参考になっている。ドイツでは地域ごとにチームがあり、リーグは18部まである。70万人の登録会員が、大きな卓球人口のピラミッドの中に参加し、子どもからお年寄りまでリーグを楽しむという仕組みがある。
18部ともなると、町の卓球場のおじさんが「リーガー」だったりする、完全なる地域密着型のスポーツであり、その膨大なファンの頂点にトップ選手が君臨する。
「Tリーグのクラブでは、ブンデスリーガのような地域密着型と、プロ野球など一社のスポンサーが面倒を見るというものとが混在しています。他のプロと違うのは、年齢制限がないこと、高校を出ていなくてもプロになれる仕組みにしています。6歳以下の子どもからリーグが運営する卓球教室に参加できるので、埼玉のチームでは3歳の育成選手もいるんです」
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【転載元】
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