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紙の手帳が変わらず人気なわけ/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2018年11月19日 18時13分


        紙の手帳が変わらず人気なわけ/猪口 真

猪口 真 / 株式会社パトス

なぜかデジタル化が進まない手帳の世界

相変わらず手帳が売れているという。

手帳といえば、スケジュールやTODOリストなどを管理するためのものというイメージだが、実際にロフトやハンズの手帳売り場に行くと、実にいろいろな手帳が所せましと並んでいる。

普通に考えれば、仕事のスケジュールはチームや上司、部下と共有する必要があるから、Googleなどのクラウドサービスを使わざるを得ないと思えるし、TODOなどのタスクリストも、スマホで十分な気がするが、手帳を買い求める人は依然として多い。

少し古いデータだが、株式会社マーシュの調査データによれば、仕事のスケジュール管理を紙の手帳で行っている人は、男性で68.5%と、多くのビジネスパーソンが、いまだに手帳を活用している。プライベートの予定の管理においては、女性で86.0%の人が紙の手帳で管理しており、女性は特にプライベートの面で手帳を活用しているようだ。

当たり前だが、プライベートの場合、むしろ共有機能は邪魔であり、手帳の良さが生きる場面だといえる。

驚くのは、50代の半数近くが、連絡先を手帳でも管理しているということ。検索や修正、他への転用など、あらゆる面でデジタルの方が便利にもかかわらず、紙利用が多いといのは、すでにアドレス帳の存在意義がさほどないのだろう。私自身、すでに「住所録」はどこにもない。

また、別の調査でも、スケジュール管理が紙で行われている実態がわかる。2016年のDIMSDRIVEの調査によると、スケジュール管理をしている人の割合として、手帳・カレンダーなどのアナログのみを利用している人が46.3%、スマホ・パソコンなどのデジタルのみを利用している人は18.5%だという。まだまだスケジュール管理は手帳を使うという人のほうが多数派だ。もちろん、この間の併用という人も多いだろうが、総じてデジタル化は進んでいないというのが正直なところだろう。

アナログとデジタルは併用か?

私の周りでも、確かにミーティングなどの場面では、共有された各メンバーのスケジュールを確認しつつ、自分の手帳に、フィックスした予定を書き込むというビジネスのスタイルもよく見る。共有スケジュールにはプライベートの予定は入れづらいから、そこは自分の手帳で確認しながら、最終的な予定を決めていくのだろう。

ただし、このスケジュールの二重管理は、ダブルブッキングや予定忘れを起こしやすい。特に上司がスケジュールを部下にオープンにしている場合は、何人かが同時にスケジュールに入れることは少なくない、また、スケジュールに入れたつもりが片方のスケジュールにしか入れておらず、予定を忘れてしまうこともある。時間管理の基本は一元管理だ。

という私も、手帳とクラウドでの共有の二重使いだが、基本的には手帳が優先で、共有すべきことをクラウド管理している。スケジュールは出先で決まることも多く、起動に時間がかかるPCでは機能的ではない。またスマホや携帯端末でもいいのだが、複数日程の確認やその後の予定の進捗確認などの必要性を考えれば、今のところ手帳にかなうツールはない、というのが印象だ。

スマホや携帯端末がマルチウィンドウにならない限り、PCから完全移行できないとある友人が言っていたのを思い出す。スマホは「セミ」マルチウィンドウは実現しているといえるかもしれないが、手帳のマルチウィンドウ感は半端ない。

特に女子は文具好き?

昨年から始まった「文具女子博」の盛り上がりがすさまじい。

これは文具全般なので、手帳だけではなく、もちろんデジタル商品も提供されるが、圧倒的に人気なのはアナログ文具だ。2017年12月15日から3日間開催され「第1回 文具女子博」は、なんと約2万5千人の来場者を記録したという。

「アナログ感」への共感は、手帳づかいの感覚に近いものがあると思える。

2018年も12月15日~17日の3日間、東京流通センターで開催される。総勢70社を超える文具メーカーが参加するらしく、昨年を上回る来場者数を記録するのは間違いないだろう。

もはや手帳はスケジュール管理ツールではない

デジタルのスケジュール管理やタスク管理ツールは、数えきれないほどのクラウドやアプリで提供されているが、手帳やアナログ文具への人気にはまったく太刀打ちできていないと言っても過言ではないだろう。

いろいろな理由があるだろうが、ひとついえるのは、現在のデジタルサービスは基本的に紙の持つ機能の追随だということ。デジタルへの置き換えにしか視点がない限り、追いつくのは難しい。

つまり、手帳をただの平面的な何かを記入するものという視点でいる限り、手帳を超えることはないだろう。

以前システム手帳が生まれ、自分なりにカスタマイズでき、情報管理の方法が変わり、仕事のスタイルに変化が生まれたような、せめてこれぐらいの「変化感」がないと厳しい。様々なスタイルの手帳を選ぶということは、仕事の(生活の)スタイルを選んでいることに他ならない。

デジタルツールが、仕事の仕方や行動を変えるような機能を持つことができれば、大きく変わる可能性はある。

ツールとして形があるということも大きい。機能だけではないということだ。アナログ手帳を愛する人たちの活用方法を見てみればすぐにわかるように、単にスケジュールやタスク管理だけに使っている人はもはや少数だ。自分の好きなことをサポートするツールとして使っているわけで、そうなるとそのツール自体に愛情が向く。

その点、スマホは中のデータで勝負だから、ツールとしての形がない。これは気づきにくいポイントだが、かなり大きな理由ではないかと思える。



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