CVCと事業継承問題/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2018年11月27日 17時44分
![CVCと事業継承問題/野町 直弘](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_10289_0-small.jpg)
野町 直弘 / 株式会社クニエ
前回CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)のブームについてふれました。 彼らは次世代のユニコーン企業を探し出して投資をしようとしています。ユニコーン企業とは、「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業を指すものです。ユニコーン企業とはベンチャーキャピタルを始めとする投資家からユニコーンのようにまれで、巨額の利益をもたらす可能性のある企業というのがいう名前の由来になっています。
果たしてユニコーン企業への投資だけでよいでしょうか。
話は変わりますが、先日日経新聞でも取り上げられましたが、昨年7月に中小企業庁から「中小企業の事業承継に関する 集中実施期間について」という施策が出されました。これは中小企業の後継者問題に対する施策ですが、内容を見ますとかなりシリアスな内容になっています。
レポートによりますと1995年から2015年の20年間に中小企業の経営者年齢の山(ピーク)は47歳から66歳へ19歳も異動しているとのこと。これは団塊経営者そのものの世代のようです。また2015年~2020年までに約30.6万人の中小企業経営者が新たに70歳に達すると言われています。
2015年時点で60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定しており、特に個人事業者においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答しているとのことです。
中小企業庁はこれに対し補助金や優遇税制制度の立上げや中小企業のM&Aマーケットの整備をしようとしていますが、決めてとなるソリューションには思えません。
経済予測の中でも人口や年齢構成などのコーホートの予測はフローの積み重ねであり比較的予測はあたりやすいものです。新規開業、廃業はあるものの年齢の山が20年間で19歳ずれているということは団塊経営者が20年間続けて(今も)社長をやり続けているという証拠です。しかしこれらの社長が70歳を超えても事業を続けるかと言うと、半数は廃業する見込みとなっているのです。
こうやって考えると根幹的な問題であることが理解できるでしょう。業種別の詳細の状況は不明ですが、おそらく製造業が主要な対象であると思われます。
多くの大手企業は今サプライヤの供給力不足に悩んでいます。如何に買い手を向いてもらうか。これが最大の悩みです。団塊経営者世代の中小企業が廃業を続けていけば大手企業を支える調達基盤はなくなってしまいます。
ここからは期待を込めての予言です。大企業CVCの出番でしょう。日本の製造業の技術を支えているのは中小企業です。彼らの技術は正に団塊世代が下支えしていました。企業が存続したからと言って技術が全て継承されるとは言いませんが、廃業してしまえば、間違いなく技術
は継承されません。最近は板金加工や溶接などの製造業の基礎となりうる技術の担い手がなくなってきていると聞きます。
このような技術を何らかの形で継承する企業の存在価値は高いのです。
CVCは新しい技術・産業だけに目を向けるのではなく、自社のサプライチェーン強化のためにも投資してほしいのです。しかしそのためには究極のハンズオンが必要です。経営や技術開発を主体的にサポートしていかなければ上手くはいきません。
一部では実際にサプライチェーン強化、存続のために企業買収をしている企業も出てきています。しかし全ての登場人物が資金だけ出しているだけでは上手くいきません。資金を出すだけでなくハンズオンのサポートを行ない技術継承を進めることで、自社のサプライチェーンの強固化を図る必要があります。
このようなサプライヤへの投資活動を積極化することはユニコーン企業へ投資することと同じように意義が高く、自社のBCP(事業継承)へ大きく寄与する資金の使い方と言えるでしょう。
改めて期待を込めて予言いたします。
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