クレーマーを育成する栄養/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2018年12月17日 7時35分
![クレーマーを育成する栄養/増沢 隆太](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_10314_0-small.jpg)
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
1.不完全システムの現場丸投げ
コンビニエンスストアの伸長で、コンビニレジの果たせる機能は爆発的に向上しました。生活インフラとしての位置付けから、公供手続きや医療関係まで、さらなるサービス拡大がうたわれています。しかし、どれだけレジ機能が向上したとしても、それを操作するのは時給千円前後のアルバイトさんです。システムは作って終りではなく、それがしっかり機能するところまでデザインされなければ、それはシステムとして不完全と言わざるを得ません。
私もコンビニで自賠責保険を購入したことがありますが、即座に買えてただちに加入できるという、たいへん便利なものでした。しかし対応してくれた外国人アルバイトさんは当然のことながら「自賠責保険」が何であるかわからず、また毎日ボンボン売れるとも思えないサービスについて、いちいち指導もされていないことだったでしょう。
保険料の支払いと勘違いしたようですが、全く外国人アルバイトさんに非はありません。私は即座に仕組みの分かる人を呼んでいただき、結局手続き自体は全く問題なくスムーズに終えられました。対応してくれた店長さんっぽい人から「お待たせしてすみません」とお詫びされましたが、全く待ってません。そもそもこんなめったに利用者がいなそうな保険商品を店頭で買う以上、絶対トラブるかあるいはものすごい時間がかかるであろうことは当然想像していましたので、私にとって自賠責加入はあっという間で対応してくれたお礼しかありません。
問題なのは日本語がたどたどしい外国人バイトさんではなく、現場でオペレーションしづらいシステムでしょう。客がバーコードを持っていけばすべてレジが自動的に対応できるまでシステムを高めるような、現実的オペレーション完成前にサービスを始めるチェーンに問題があるのではないでしょうか。
2.なぜゴーン氏は40億もらえたか
介護含むサービス業や製造業、建築業での人手不足が著しく、企業は危機的状況ということです。なぜ人が集まらないのでしょう。役務と給与がバランスしていないからではないでしょうか。実際に対人サービスは重労働ですし、それゆえ就業を希望する人が減ることは自然です。そこで企業は給与など待遇を上げて人を集めることになります。
しかし人件費コストが上がれば利益が圧迫されますから商売上は不利です。ゴーン改革で日産は取引先へのコスト削減を徹底したといわれます。コストを下げられたことでゴーン改革は成功し、ばく大な年収を得られるようになった仕組みと構造は同じはずです。ばく大な利益を上げたから、ゴーン氏はばく大な年収を得られました。コストを下げるか売価を上げるかして利益を得られれば、その利益額に応じてとんでもない年収も成り立つことになります。
適正な利益を上げるような商売にするため値上げするのは当然の選択で、それが顧客から受け入れられないのであれば、その商売自体がもはや市場性を失っていると考えるべきでしょう。あるいは日産のパーツメーカーのように、さらなるコスト削減を受け入れる取引先を見付けることももう一つの選択肢です。この場合はサービス提供者である従業員確保ということになります。(対価に見合わない)低賃金で働いてくれる労働者をどこからか魔法のように見つけてこれるなら成り立つことでしょう。
3.サービス限界と顧客志向
お客様は神様という勘違いを育てているのは、それを会社に背負わせる経営者です。サービス業、小売業でありがちな「お店はお客様のためにある」という間違ったコンセプトに、いまだに縛られる組織がどんどん現場を疲弊させ、適正な商売を阻害しています。
サービスには必ず対価があります。対価以上のサービスを提供することはできません。その限界はコストという一線により明確に分かれます。しかし経営者自らがこの一線を破壊し、対価以上のサービス提供を現場に強要することは、クレーマーを付け上がらせ、育ててることとなり、真っ当なスタッフを潰すことです。
顧客志向とは当然のことながらお客のいうことを何でも聞くことではなく、お客の要望に沿えるようなシステムを考え、それが継続的に運営できるようにすることです。スタッフの努力や根性だけで成立するのであれば、それは経営とは呼べないでしょう。
せっかくの市場メカニズムによって、サービス提供者の給与が改善されれば、それはデフレ対策ともなり、またいわゆるブラック労働を駆除する効果もあったにもかかわらず、政府は外国人労働者を導入することで、こうしたコスト上昇を抑えることを決めました。真の顧客志向実現の機会は遠のいたと考えるべきだと思います。
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